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第54話 乙女ゲームのイケメン。

 間近で、燃える瞳が揺れている。


 ああ、駄目だよこの目……明らかにやべー時の水瀬慧斗(みなせけいと)さんですよ……。


 時に、二重人格という言葉に、聞き覚えはあるだろうか? オタクなら誰もが一度は耳にしたことがあるのではないだろうか。


 乙女ゲームにおいて、二重人格……もとい、解離性人格性障害というのは、割とよくあるネタである。


 乙女ゲームでは、世界の危機はあるあるネタだといったが、もう一つあるあるネタについて説明しておこう。


 それは……クソ重過去、もしくは悩み持ちである。


 これについては、ギャルゲーを嗜む人にもわかってもらえるのではないだろうか。乙女ゲームやギャルゲーといった恋愛シミュレーションゲームの醍醐味は、魅力的な人物を「攻略」していくところにある。


 つまり、彼ら、彼女らの心を開かせるところにあるのだ。その過程をわかりやすくしようとすると、どうしてもそこに落差が必要になってくる。


 すると、必然的に、物語の初めで、人間に対して心を開かない理由が必要になり、その理由付けとして重い過去や悩みを使うわけである。さらに言うと、人を好きになる理由として、「その人に救われたから」というのは説得力がある。


 だからこそ、重い過去や悩み持ちの攻略対象は多いのではないかと、私は考察している。


 勿論、両ゲームにおいてそういうものではない作品も多数存在すると思うが、そういったクソ重過去や悩み持ちのトラウマ、悩みを解消することで、「攻略」を達成できるという構図の作品が存在するのも事実だ。


 こういった作品を揶揄して「カウンセリングゲー」と呼ばれることもあるくらいなので、恋愛シミュレーションゲームにクソ重過去や悩み持ちの攻略対象が存在するというのは、両プレイヤーの共通認識であるように思う。


 こと乙女ゲームに絞って言えば、カウンセリングゲーは本当に多い。何なら体感八割近くそうなんじゃないかと思うくらいに多い。


 乙女ゲームと聞いて想像されるのは、イケメンに甘い言葉を囁かれるゲームだと思う。確かにその通りだ。攻略対象がヒロインに深い愛情を抱き、それを言葉や行動で示す。そういったシーンを見ることを、プレイヤーは何よりも楽しみにしているし、そこに萌えている。


 しかしそれは……物語の終盤での話である。


 乙女ゲームは、夢を見るためのものでもある。現実ではありえないような、ドラマティックで素敵な恋をうっとりと眺めることができる場だ。しかし、だからこそ乙女ゲームには、多少のリアリティが必要とされるのだ。


 つまり……何もしてない女の子が、理由もなしにモテモテになってはいけないということだ。


 乙女ゲームの評価や感想なんかを見ていると、「どうして主人公を好きにったのかわからなかった」というものや、逆に「どうしてこの攻略対象を好きになったのかわからなかった」というものを目にすることが多い。こ


 れは、その部分を気にするプレイヤーが多いということを示している。つまり乙女ゲームをプレイする際、何故相手を好きになったのか、ということに納得できる理由が必要である、と考える人が多いのだろう。


 そしてそれは……私もめちゃくちゃ気持ちがわかる……! ヒロインが美少女設定とかだったりする場合、一目ぼれとか言われると「結局世の中顔かよ」と思っちゃうし……!


 個人的な意見ではあるが、乙女ゲームで一目ぼれや、特に理由もないのに好意を寄せる描写があると、どうしても可愛く描かれたヒロインの「顔」が理由なのだと思えてしまう。


 そしてそれは、現実世界を突き付けてくるような話だと思うのだ。夢のような恋の物語を求めてプレイして、現実と同じように美しい女の子だけが愛を手に入れられる、と描かれると、我に返ってしまうのである。


 でもその一方で、完全にヒロインが平凡だと明記されてるのに、理由もなくモテモテだと、そんなわけねーだろって冷めちゃう自分がいるのも事実なんだよね……!

 なんとも面倒くさい話である。


 だがこれらに関しては、少女漫画のヒロインが地味な子や普通な子な場合が多いことと同じ理由なのではないだろうか。ヒロインの努力によって、ヒーローを振り向かせる。その過程に自分磨きがあって、ヒロインが可愛くなってもいい。


 けれど、あくまで出発点は平均ラインから。普通だったヒロインが頑張った結果、素敵な恋ができる。その方が、夢があるからだ。夢のような恋愛話を描くためには、エッセンスとしてリアルさが必要になるとは、なんとも皮肉な話である。


 あと単純に、男女の恋愛ものが好きなタイプのオタクからすると、ヒロインに対する好感度って重要だからね。


 幸せになってほしいと思えるような子の方が、イチャイチャした時に、より嬉しくなれるからね。私は攻略対象の男を推してるんじゃない、ヒロイン含めたカプを推してるんだ!


 乙女ゲーマーには色んな種類の人間がいるため、一概にそうとは言えない。それに、私は企業で乙女ゲームの開発に携わっていたわけでもない。なので、一乙女ゲーマーの意見に過ぎない。


 けれど、個人的にはそういった理由でカウンセリングゲーが多いのではないかと考えている。


 さて、これでクソ重過去持ちが乙女ゲームあるあるネタなのは理解してもらえたのではないかと思うのだが……。


 そろそろ皆、気が付いてきたのではないだろうか。


 そう。乙女ゲームにまともなイケメンなんて、あんまりいない。

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