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第111話 頭にアルミホイル、巻いておこうかな。

 柊木悠真という名の悪魔の策略により、学年の違う百田七緒を除いた全ての攻略対象が、同じ部活……。読書研究部に所属することになってしまった。


 今日はその、悲劇の第一歩……もとい、活動初日である。


「いやあ、残りの部員が三年の幽霊部員だけだなんて、どうなることかと思ったが、蘭のおかげで廃部の危機は免れたなあ!」


 放課後。読書研究部の活動場所となっている空き教室で、三年の国語を担当している時枝先生が、快活な笑顔で言い放った。


 乙女ゲームにおいて、稀にいる主人公の面倒を見るために一時的に預かってくれるおじさんポジションの人だけあって、その顔立ちは悪くなく、まだ三十代だという若さを感じさせる肌艶をしている。


 乙女ゲームの親戚ポジ、中身は女性おじさんか顔がいいおじさん多くない? 私の偏見?


「叔父さんにはお世話になっているし、私も勧誘頑張っちゃった!」


 時枝先生をぼんやりと見つめている横で、朝香蘭が可愛らしくガッツポーズを取った。私に可愛らしく見えるのだから、叔父にとってはもっとだろう。


 案の定、時枝先生は「可愛い姪っ子め!」と朝香蘭の髪をぐしゃぐしゃとかき回していた。


「……それで、今日は顔合わせとのことでしたが……。ボクたちしか、いませんね?」


 ハートフルなはずの光景を前に、白けた顔をしていた攻略対象たちを代表するように、柊木悠真が声を上げた。


「さっきも言った通り、三年はほぼ幽霊部員だ。今までも大して活動に参加してはいなかったが、今年は三年だからな。多分、受験もあってこれまで以上に来ないだろうなあ」

「そうなんだ……。折角先輩たちとも仲良くなれると思っていたのに、何だか少し寂しいね」

「まあ、ここに関してはどれだけ俺が言っても、最終的には本人の意思だからなあ……。一応、文集をを作るってタイミングでは、ちゃんと作品を出してくるから、活動を全くしていないってわけでもないしな」


 それにしたって、活動初日の顔合わせから来ないとなると、いないも同然だろう。部活に所属している意味はあるのだろうか。


 なんて……。なんて都合の良い設定なんだ!


 先輩モブを余計に作る必要もなく、自然と話の中心が攻略対象たちになるように決めた設定だが、側から見るとあまりにも都合が良すぎてはちゃめちゃに作為的なものを感じる。


 次回何か話を作る場合は、なんかもうちょっと自然な感じに排除しよう。


 そんなことを内心決意していると、桐原陽太が大袈裟に息を吐いて、肩を大きく下げた。


「なんだ、オレ、みんな以外に仲良い人いないから、ちょっと身構えちゃった」

「ええ、でも陽太、もうクラスに友達できたんでしょう? 陽太なら、誰とでも仲良くできるよ」

「それを言うなら悠真の方でしょう? 悠真、優しいもん」


 もんとか言うな。なんかそのちょっと甘えた喋りする人が好きなのかな? とか思われたらどうするんだ。


 いや、誰も思わないだろうけど、なんか気まずいだろ、私が。


「つーか、その顔合わせ? とかいうの、他の連中が来ねェならもう終わりだろ。茶でも出せよ、時枝」

「おいおい、蓮実……。他の先生たちから聞いてはいたが、お前本当に態度でかいねえ。俺一応先生ね、先生」

「んなこと知るかよ。殴りゃァ血が出るのはどいつでも一緒だろ」

「Oh……物騒……やだ先生怖い……」

「玲児、お前は本当に口が減らんな。もう少し上手くやれと再三言っているだろう。いくら頼りなく見えるといっても、時枝は一応教員なのだから、歓心を買っておく方が後々便利だろう」

「ちょいちょい、あの、先生ここにいるからね? バッチリその姑息な考え聞こえてるからね、水瀬」


 きゃいきゃいしている柊木悠真と桐原陽太の横で、蓮実玲児と水瀬彗斗は時枝先生と戯れていた。


 元々の設定からして、蓮実玲児は時枝先生に無理やり部活に所属させられているはずなので、相性が良いのだが、水瀬彗斗の方も割と良さそうである。


 というか、癖の強い攻略対象たちを放り込むために、時枝先生を教師らしくない教師、という設定をしたのが効いているように思える。


「何だか、賑やかでいいね」

「……朝香、さん」

「私、あんまり仲の良い男の子とかいなかったから、不思議な感じがするんだけど……。悪くないよね、こういうのも」


 そう言って朝香蘭ははにかんだ。窓から差し込んだ光が、滑らかな頬に映って、微かに赤らんでいるように見える。


 それはまさしく一枚絵のような、どこか神秘性すら感じさせる姿だった。


 か……可愛い〜! すごく可愛いんだけどあの、それ対私のはにかみで合ってる?


 私は戸惑いながら、「ソウダネ」と頷いた。


「ねえ、千代ちゃん。先生お茶淹れてくれるって。千代ちゃん何飲む?」

「……選べるの?」

「今は緑茶かほうじ茶くらいしかないらしいけど、茶葉持ち込んだら今度から選び放題らしいよ」


 柊木悠真から与えられた情報に、私は目を見開く。


 まじか。紅茶の茶葉と牛乳持ち込んだらミルクティー飲めるかな。


「牛乳持ち込んだら小さい冷蔵庫に入れといてくれるって。よかったね」


 今私口に出してた? ……出してないよな。


 私の思考を読むの、やめて。

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