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第109話 世界の修正力と戦う乙女ゲーム、あるよね。

 朝香蘭と柊木悠真の親密度をあげたい。


 放課後の教室。がやがやと騒がしくなり始めた教室の中で、私は考え込んでいた。


 高校に入学を果たして、早一週間。新入生たちは、本格的に所属する部活動を決定しようとしているところだ。


 体育館では、バスケ部やバレー部が仮入部した新入生を前に、手取り足取り指導する姿があり。文化部の方では、既に本入部しているかのように、先輩たちと同じ姿勢で部活動に臨んでいる者も多い。


 そんな中私は……どうにか柊木悠真と朝香蘭の所属する部活動を同じものに出来ないかと画策していた。


「……朝香、さん。部活動……決めた?」


 ここ数日必死に話しかけ続けていたおかげで、最近は朝香蘭は私と共に行動することが増えていた。今日も、授業の終わりに顔を合わせることができたので、思い切って尋ねてみた。


 朝香蘭は、きょとんとした後に、ニッコリと笑って言った。


「うーん、橘さんは、どう思う?」


 ……こいつ、何か尋ねると、必ずと言っていいほど尋ね返してくるんだけど、何でなの? そういうキャラ付けをした覚えはないんだけれど。


 そんなことを考えながら、私は考えているふりをする。


「うーん……もしかして、文芸部?」


 最初から用意していた答えを返すと、朝香蘭はぴくりと眉を跳ねさせて、小さく微笑んだ。


「……残念! でも、どうしてそう思ったの?」

「なんと、なく」


 この世には、きちんとした理由がない事もある。それを朝香蘭にも理解して貰わなければならない。


 まあ、実際は理由があるのだけれど。いつだって理由を尋ねて答えが返ってくるわけではないのだ。


「そっかあ。でも実は、当たらずも遠からずかも」


 朝香蘭は、いたずらっぽく笑いながら、人差し指を立てて見せた。


「読書研究部に入ろうと思っていて」


 ……は?


 と一瞬声が出そうになったが、なんとか飲み込んだ。


 読書研究部に、入る? いま、そう言ったのか?


 読書研究部は、もともと『ロストタイム』において主人公や攻略対称たちが、強制的に所属させられる部活動だ。


 主人公は、家庭の事情により中途半端な時期に転校することになり、叔父の家から高校に通うことになる。その際、高校教師である叔父が、顧問をしている部活動に所属することになるのだが……それこそが、読書研究部なのだ。


 ……って、あれ? 時系列おかしくね?


 というかもしかして、これ途中で主人公転校しちゃったりする?


 疑問が渦巻く中、私はなんとか口を開いた。


「それ……何?」

「読書研究部が、どんな活動をするかってこと?」


 あらゆる疑問が凝縮してしまい、何を問うているのか的を射ない質問になってしまったけれど、会話の流れにより意図を組んでくれたようだ。


「確かに、珍しい部活だよね。ええっとね。実は、時枝先生って私の叔父さんさんだけど……。その叔父さんが、読書研究部の顧問らしいの!」

「……そう」

「それでね、内容もかなりゆるいらしくって、お茶を飲みながら本を読んだり、その内容を紹介しあったりっていう……。学校でゆっくりお茶しながら本を読む場がもらえるなんて、結構良くない?」

「最高、だね」

「でしょう?」


 ニコニコとしている朝香蘭を前にしながら、私の頭は必死に考えをまとめようとしていた。


 今、朝香蘭が言った読書研究部の内容は、確かに私が定めた部活動の内容だ。ゆるーい部活動に設定する事で、自由に動かせる時間を確保することを目的としていたのだ。


 しかも、彼女は「叔父が学校で教師をしている」と言った。


 それは本来、彼女が転校した先にいるという設定のはずで……。


 ()()()()()()()()()()()()


 私は大きく息を吐き、乾燥した唇を舐めた。


 オッケー。一旦落ち着こう。


 一体なぜ()()が発生しているのかは、わからない。私は確かにこの世界の()()()だが、現在進行形の()ではないのだ。


 だから、実際に何が起こっているのか、真相を知ることは叶わない。けれど、考察することはできる。


 ……思いつくことが、あるとするのならば。


 世界の修正力ってやつではないだろうか?


 私がこの世界に生まれたことによって、攻略対称たちの人生に変化が生まれてしまった。その結果、選ぶ進学先が異なり、この世界の主人公である朝香蘭と、攻略対称たちが出会わないことになろうとしていた。


 だからこそ、世界が、彼らが出会う世界に調整した……。その結果、彼女の叔父の勤務地はここになり、当然読書研究部や主人公の通う高校もこちらに……。


 あ、なんかそれっぽい! っていうか私がそう思うなら、そうなんじゃない? だって私、神だし。


 一人で納得していると、朝香蘭がじっとこちらを見つめていた。


 まずい! また一人の世界に入り込んでいた!


「……ごめん、ぼーっと、してた……」

「あはは、そうかなって思ってた」

「ごめん……」

「ううん、いいの。ほら、前に言った親戚のお姉ちゃん、いたでしょう? あのお姉ちゃんも、気がついたら一人の世界に入ってるタイプの人だったから、なんだか懐かしい」


 なんだかそのお姉ちゃんも、ちょっと変な人っぽいんだけれど。そんな人と似ていると思われているのならば、私も変人判定を受けてしまいそうだ。


 朝香蘭に距離を置かれては、まだ困るのだ。気をつけなければ。

 

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