白猫研究会
毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。
Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)
すまん、本日は投稿するのすっかり忘れていました。
月に一回、都内の白猫飼いが集う会がある。「白猫研究会」という潔くてなんのひねりもないその集会は、連れてきた白猫を前にお茶を飲んで語る会である。
「うなーん」白猫が鳴く。念のためにハーネスを付けられた白猫がおとなしく座っている。まるで人間のように。
いや、遺伝子工学により、DNAは飼い主のものが入っているのだ。知性は人間の7歳くらいに。外見は白猫のように。飼い主は我が子のように思っている。一応DNAは繋がっているし。
ネットでこのサービスを見たとき吃驚した。遺伝子の関係上白猫限定で、値段も普通の純血種の猫の三倍(赤くない)もして、ちょっと躊躇したが、たまたま遺産が入ってきて臨時収入があったので頼むことにした。
客同士の交友会があって、僕はそれに参加しているという訳だ。
連れてくる猫は皆、ピカピカの白い猫でそれぞれ鼻を突き合わせて挨拶してのち、マスターの脇で横になっている。テーブルに上がる行儀悪い猫は一匹もいない。前飼ってた猫はなんど言ってもテーブルの上に上がって食物を嗅いでいたが、この白猫はすぐさま学習してしまう。
紅茶を口にすると僕はいつも眠くなってしまう。それは皆さんも同じようで
――あら、居心地がよくていつも眠くなってしまうわ。
と、集会が終わるときに口々に言う。
でも、僕は不審に思ってしまった。紅茶、おかしいんじゃないのかと。
紅茶を飲む振りをして、目を閉じてしばらくすると別の声が聞こえた。
「飼い主が寝たところで、報告会を始める」
気付かれないように薄目を開けてみると、田中さんちの白猫が議長をしていた。
――日本は統治するのが簡単そうだ。
――もっと猫の姿をバラエティ豊かにする方針である。
――犬の数を減らせないか?
白猫たちが人間のように会話を交わしている。
「三上君、人間界の最新情報は?」と一匹の白猫が問いかけた。
「はい、最近は『猫カフェ』が人気で、人間は猫に寛容な姿勢を見せています」と三上君の白猫が答えた。
「素晴らしい。人間を上手く利用できるな」
――待て、一人起きているマスターが居るぞ。
発見された。僕は目を開けると真っ青になった。
「見つかったら仕方ない。君は通報するかね。愛する猫を手放してまで」
脇の愛猫が頭を手に擦り付けて「なおん」と鳴く。クソ、こいつら分かってやっているだろう。手放すことなんてできるものか。僕は猫が大好きなんだ。
「なら、我々に協力するのだ。我々は仲良くやっていける。我々は猫権を向上させたいだけだ。人間と敵対する気は無い」
そして、重要な秘密を教えてくれた。
「ディープステートとは我々のことだ」