エルムの疑問
「んっ、無事蘇生した」
「ううっ………蘇生って言ってる時点で、あんまり無事ではない気もするけど………っていうか、リオもどうしたの、その格好!!」
ミナトは戦闘でボロボロに傷ついた自分よりも、更に多くの血をまとったリオの格好を見て、驚きの声をあげる。
「最新ファッション。お手軽血まみれコーデ」
「お手軽な要素ある!?………でも、良かった、皆のおかげで何とか生きてるよ」
ミナトは差し出されたリオの手を取り、ポーションまみれになった身体を起こす。
「ああっ、もう二人とも汚い身体で動き回らないで!!ホント人間って不潔な生き物なんだからっ!!ちょっとジッとしてなさい………浄化」
エルムが魔法を唱えると、竜の血と自らの血、ポーションから謎の薬品まで、ありとあらゆる不浄なる存在が浄化され、輝きとともに全ての穢れが取り除かれる。
「浄化………話には聞いたことがあったけど、こんな凄い魔法だったんだね」
「まっ、冒険者やってるような魔法詠唱者の間じゃ、そんなに人気はねえ魔法だからな。火力に回復に補助にって順で魔法習得してりゃ、後回しになるのも無理はねえが、こんだけ便利なのを知ったら、もうちっとは使い手も増えるかもな」
「まったく、常に清潔な状態を維持することが、長期間の冒険においてどれだけ有用か理解できないなんて、人間らしい浅はかさよね。私の凄さが少しは分かったかしら。帝国魔法学院はじまって以来の天才にして、神聖なる神代のエルフの血を引くエルム様を甘く見ないことね」
「うん、ありがとう、エルム」
ミナトが満面の笑みを浮かべ礼を言うと、エルムはプイっと顔を背けた。
「だけど、本当に助かったよ。エルムがいなかったら、ここまで辿り着けなかったわけだしね」
「そうね、今回の討伐の功績としては、私が7,貴方達が3ってところかしら。私一人でも十分倒せたけど、一応礼を言っておくわ。あ、ありがとう……………な、なによ、その物欲しそうな眼差しは!!なに、口だけの礼じゃ足りない、お前の口はもっと他の使い方があるだろって言ってるの!?結局私のことを肉欲こみでしか見れないのね、信じて損したわこのど変態ッ!!!!」
「いや、1ミリもそんなこと思ってないからね!?」
「んっ、ムッツリすけべなエルフの略でエルム、覚えた」
「誰がムッツリすけべよ!!………ところで、貴方達はこれから冒険者ギルドって所に報告にいくんでしょ?臭くて野蛮で汚らわしい社会の肥溜めみたいな場所だって聞くから行きたくはないけど、貴方達の顔を立てて私もついていってあげてもいいわよ。一番活躍した私がいないんじゃ、報告のしようもないでしょうしね」
「安心して、ギルドには行かないよ。ボク達はギルドの討伐依頼を受けて来たわけじゃないから」
「…………えっ?待って、なら貴方達どうしてゴブリンの巣に侵入したのよ。ひょっとして、抑えられない殺戮衝動をゴブリンを殺すことで発散してたの!?ひぃっ、近づかないで、この殺人鬼ッ!!」
エルムは目を瞑り、ミナトに向けへっぴり腰で杖を突きだす。
「んっ、やっぱり無理なタイプのエルフ」
「まあまあ、二人とも落ち着いて。ボク達は自分達の国民を守るために来たんだよ。ギルドの依頼ではなく、国を守る者としてね」
「国を守るって………貴方そんなみすぼらしい恰好してるけど、ジェベル王国の騎士なの?もしかして、貧乏貴族の三男坊とか!?聞いたことがあるわ、家督を継げない貴族の子弟が、モンスター討伐で武勲をたてて断絶した貴族位を継ぐことがあるって。ふふん、図星でしょ。貴方が貴族の末子で、お付きの乳母子と、家に仕えてる騎士見習いってとこね」
エルムは腕を組み、自信満々な面持ちで予想を立てる。
「妄想むっつり変態娘の癖に、意外と良い線いってんじゃねえか」
「誰が妄想ムッツリ変態エロ娘よっ!!」
「勝手に付け足すあたりエロい自覚はあんだな」
「んっ、思春期特有のなんでもエロに結び付ける精神」
「年中発情してる人間に言われたくないわよ!!」
「………えっと、話しを戻していいかな。さっきは時間が無くて名前しか言えなかったけど、改めて自己紹介するね。ボクはシンギフ王国、国王ミナト。よろしくね」
「……………ふぇっ!?国王!!??」
エルムは今日一番の大声を出すと、差し出された手を握り返すこともなく、ポカンと口を開けミナトを見つめた。
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基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。
いきなり国王を自称する人間がいたら、驚きもしますよね




