祝福
「じゃあ、続きをしましょうか」
アルベラが悪魔に押さえつけられているミナトの頬を再び撫でると、その艶やかな顔に唾が吐きかけられる。
「まだ折れてないのね、可愛い顔して性格もそこの芋虫よりずっと強情。いいわ、さっきの子より、助けに来てくれた勇者様との方が盛り上がるわよね。絶望も無力感もひとしお…………興奮も悦楽もね」
アルベラはミナトの股間に手を伸ばし、掌に収まる形にそってゆっくりと上下に動かす。
「さっきからずっと前に大きくなってたんでしょ?こういうシチュエーションが好きなのね。それとも死ぬ前に種をばら撒こうとする動物の本能ってやつ?いいえ、これは違うわね。興奮してるんでしょ、自分よりずっと前に強い勇者様が嬲られてる事に。期待してるんでしょ、そんな偉くて立派で強い、自分が手が届かない存在なはずの勇者様を、無理やり犯さなきゃいけない、そんな夢みたいな出来事を。………どうしたの?もう抵抗は終わり?前戯は抜きにして早く本番をしたいってこと?」
アルベラが耳を甘噛みしようとした瞬間、ミナトは緩んだ拘束の隙をつき、隠し持った短刀を首筋に突き立てる。
しかし、それが当然の世界の摂理であるが如くナイフは肌の表面で物理法則を超えた『何か』に阻まれ、薄く滑らかなシルクのような薄い皮膚に血をにじませる事すら出来ない。
只人と六大魔公と称される大悪魔。
世界を隔てる壁がそこにはあった。
「ミナト、貴方って本当にいいわ、大好きよ。そうだ、良いことを思いついた。私が一つ都市を滅ぼすたびに一人、奴隷をプレゼントしてあげる。毎回人間の奴隷っていうのも趣がないから、日替わりで違う種族を奴隷にするのも面白そうね。ありとあらゆる種族を集めた貴方だけのハーレムを作るの。そうしてミナトは奴隷の親の生首の前で、今にも息絶えそうな夫の前で、泣きじゃくる子供の前で、獣のように犯すの。貴方は屈辱でその可愛い顔を一層歪めながら、でも心の中では早く次の奴隷に種を流し込みたいって興奮する。ふふっ、楽しみだわ、いつ貴方が堕ちるか。でも、大丈夫。貴方が堕ちてもワタシは気づかないフリをしてあげる。ワタシが飽きるまで何度でも殺し、奪い、犯しましょう」
アルベラは屈託のない笑顔をミナトに向ける。
その言葉には虚偽も驕慢も悪意もなく、近い未来に世界を襲うであろう現実だけがあった。
(………ボクは無力だ。病院のベッドの上で、ただ外の景色を眺めていた時と何も変わらない。誰も救えない。誰かの為になりたいと思っても願いは叶わない。この世界でも、僕は主人公じゃない)
(それでも…最後まで諦めたくない。誰かを救いたい、誰かの役にたちたい………)
(もしコレが物語だとしたら、もし残酷な神様がこの残酷で醜悪な見せ物として楽しんでいるのだとしたら、ボクの命と引き換えにひとつだけ願いを聞いて欲しい)
(世界を救いたい、そんな荒唐無稽な願いを)
………
………………
………………………………
「転生者code006の『願い』を観測しました」
突如ミナトの脳内に無機質で中性的な何者かの声が響く。それは耳元から聞こえるようでもあり、遥か遠くから投げかけられるようでもあり、ミナト自身が発しているようでもあった。
「クムト、アールライン、セルシャ=イズスによる審議を行います」
「クムト問う。『願い』は転生者自身の変容を伴わないか」
「YES」
「承認」
「アールライン問う。『願い』は転生者に奇跡を示しうるか」
「YES」
「承認」
「セルシャ=イズス問う。『願い』は転生者により観測しうるか」
「NO」
「再審議」
「code006『願い』、『世界の救済』は観測しうるか」
「救済の定義が不確定です、救済の可視化が不可能です、救済の対象者が不明瞭です」
「結審」
「転生者code006、13回目の『願い』は否決されました」
「クムトより発議」
「転生者code016、『願い』次席の採用の可否について」
「再審議を行います」
………
………………
………………………………
「可決」
「転生者code006の『願い』は無謬の裁定者により承認されました」
「『祝福』を顕現します」
「コードネーム『Credo』」
音声はそこで途切れ、ボクの前に一人の少女が現れた。
その美しい少女の姿はあたかも『祝福』を体現しているかのようだった。
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