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異世界ハーレムは義務です~0からはじめる建国物語~  作者: 碧い月


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血の軌跡

 剣を伝う鮮血が床に血溜まりを作る。


 ニタリ


 勝利を確信した小鬼の王が、デボラの内臓をバラバラに切り刻むべく、剣に更なる力を込める。


「ガッ…………グガッ!?」


「ここまで来てまだ喋らねえって事は、身体面は強化されても、オツムまでは栄養が行き渡ってねえみてえだな。その間抜け面、嫌いじゃねえぜ」


 小鬼はデボラの腹を貫いたままピクリとも動かない細剣を懸命に引き抜こうとする。


「ったく、足を切られた時にゃヒヤヒヤしたが、トドメはちゃんと腹を狙ってくれて助かったぜ。どうして好きこのんで腹が空いてる胸甲なんかきてると思う?シンプルな答えだ、攻撃ってのは自分が一番自信のある場所で受け止めんだよ!!」


 デボラは貫かれた腹部に力を込め、動揺する小鬼の王に大戦斧を振り下ろす。


「ゴアッアアァァッッッッ!!!!」


 小鬼は剣を諦め、頭上から一直線に落ちてくる大戦斧を盾で防ぐが、威力を殺しきれず、分厚い斧の刃が右肩を深く切り裂く。

 痛みに悶絶しながらも、小鬼は動かなくなった右腕を庇いつつ、デボラから大きく離れる。

 右腕はダラリと垂れ下がり、肩口から激しく出血しているが、その瞳にはいまだ激しい敵意と憎悪が燃え盛っており、盾を手放すこともない。


「チッ、仕留め損なったかっ!!………っ、結構痛えなぁ」


 脳内物質により霧散していた痛みが、時間差でデボラを襲う。

 平然を装ってはいるが、腹部への刺突は臓腑を焼くような苦痛と共に、確かなダメージとなり肉体の動きを妨げ、切先を鈍らせる。

 小鬼への大上段からの振り下ろしも、万全であれば盾ごと両断することが出来ただろうが、追撃の余裕すらないほどの肉体的損傷がデボラから膂力を奪っていた。


「グア!!!!」


 小鬼はデボラがその場から動けないことに気づくと、盾を構えミナトに向け突進する。


「くっ!!」


 衝撃、次いで激痛。


 躱したと思った小鬼の破れかぶれの突撃は、ぶつかる寸前に盾の死角に隠し持っていた小剣による薙ぎ払いへと変化し、ミナトの太ももを切り裂いた。


「ちいっ!!」


「不注意だね、目に見える物が全てではないよ。君達はその小鬼を愚かだと笑うが、彼は剣を失ったからといって焦って盾の裏に仕込まれた小剣を抜くことはせず、剣を持たないという君達の思い込みを利用することを考えた。言語は持たずとも、戦闘という一分野において彼は十分に思考を巡らし、持てるもの全てを使い勇敢に戦っているよ」


「ミナト!!爺の御託に耳を貸すな、目の前の小鬼に集中しろ!!」


 ミナトはデボラの檄に呼応するように、体勢の崩れた小鬼に向け剣を横薙ぎに斬りつけるが、その刃先は盾に阻まれ敵に届くことはなかった。

 しかし、小鬼も無理に右腕を動かした代償か、呻き声をあげるとそれ以上の追撃を試みることはせず、大きく飛び退き間合いをはかる。


(奴の言う通りボクは馬鹿だ。勝手に右腕は使えないものだと思い込んで、最小限動きで回避して剣を叩き込むことしか考えていなかった。デボラさんとの戦い方を見ても、敵の狙いはボク達から機動力を削いで、安全圏から一方的に攻撃すること………それを考えれば、隠し持った武器でボクの足を封じる作戦にも気づけたかもしれないのに………)


 ミナトは傷口に微かに力を込める。


(傷は………深いけど動ける。…………………相手をよく見ろ。盾で身体を覆うようにしているのは、飛び道具を警戒しているからだ。間合いの外にいるリオとエルムの動向を確認しているのは、魔法を恐れているから。リオが戦わない以上、奴とさしで勝負できる力があるのはデボラさんだけ。だけど、実質一対一の戦いであっても、それはボク達の認識だ。奴から見ればどれだけ実力差はあっても四対一、数的不利の中での苦しい戦い。活路を見出すためにも、確実に一人ずつ数を減らしたいはずなんだ。それならボクが取るべき手段は………)


 背嚢から投げナイフを取り出し、小鬼に向かい投げる。敵の視野に収まった状態での投擲は、盾に阻まれ虚しく床に落ちる。

 ミナトは小鬼の視線が自分に向いたことを確認すると、呪符を取り出し、込められた魔法が発動するまでの時間を稼ぐため、傷ついた足を引きずるように後ろに下がる。


「うっ!!!!」


 筋肉の収縮が傷口を広げ、血が吹き出す。

 ミナトは床に血の軌跡を描き、幾つかの道具を落としながらも、なんとか距離を取り敵に向け呪符を構えた。


 ダッ


 小鬼が魔法の発動を潰すべく走り出す。

 盾を構えることで、その小さな体の大半は隠れ、たとえこのまま魔法が放ったとしても、致命の一撃与えるのは難しいだろう。


(ボクは盾ごと敵を切り裂くような力も、相手を焼き尽くすような魔法も持ってない。なら、ボクが取るべき手段はコレだっ!!!!)


 ミナトは呪符を捨て、走り寄る黒き小鬼の王ブラックゴブリンロードに対し剣を構え、痛みを堪え前へと足を踏み出した。

面白かった、これからも読みたい、AI先生による絵が可愛いと思った方は是非、☆評価、ブックマーク、感想等をお願いいたします!!

基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。


私は注射でも気持ち悪くなるレベルなので、お腹を刺されたら暫く会社を休むと思います。

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