新たな仲間?ゴブ彦登場!
「おらよっ、これで終いだ!!」
獣の咆哮にも似たデボラの気合が、薄暗い洞窟の闇を切り裂く。
竜鱗すら断つと評される大戦斧をその身に浴びたホブゴブリンの上半身は、壁に叩きつけられ肉塊となり、下半身は何が起こったのかすら理解し得ないように硬い岩肌を踏み締めている。
「ちっ、さっきから数ばっか多いくせに、小物ばっかじゃねえか。せっかくミナトの前で良いとこ見せようと思ったのによ」
「十分すぎますよ。それにしても、ここまで大物が出てこないと、嫌な予感がしますね。戦力を一箇所に集中させて、待ち伏せてるんでしょうか………」
「もしくは、動けねえ理由があるかだな。どっちにしろ、雑魚狩りじゃストレスが溜まるばっかだぜ。これで大将がオーガだなんて言った日にゃ、洞窟ごとぶち壊すぞ」
冗談ともつかないデボラの発言にミナトは苦笑いで応える。
(ボクにも、いつかもっと強い敵と戦いたいと思える日が来るのかな)
ミナトはふとそんな事を考えたが、すぐに思考を切り替え、周囲の状況に目を配る。
(ボクはボクが出来ることをやるだけだ。これまでも、これからも)
「リオ、怪我は………ないよね。エルムは大丈夫?」
「ずっと無口。でも元気。この通り」
リオは繋いだ手をグイっと上げる。
「あぁ、良かっ………………えええええええぇっ!?リオ、リオ!!手!!!手見て!!!!!」
促されリオが視線をエルムに向ける。
エルムがいるはずの場所には照れ笑いを浮かべるゴブリンの姿があり、しきりに頭をペコペコと下げている。
「んっ?ミナト、国王たるもの如何なる時も落ち着きが大事。例えば………エルフとゴブリンが入れ替わってても動じないハートが重要」
「いや、そこは驚こうっ!?ゴブリンだからね、敵だからね!!すっごい媚び売ってるし、本人も自分の立場わかってるやつだから!!」
「すっごい手汗ネチョネチョなタイプのエルフの可能性」
「ねえよ」
リオがべっとりと付着した手汗をゴブリンの粗末な衣服で拭うと、ゴブリンはこっちの方が綺麗ですよと言わんばかりに懐から取り出した布切れを手渡す。
「この通り気も効く。たぶん魔法とかでゴブリンに化けた。敵を騙すためにはまず味方から理論。いいの?もし間違えて殺っちゃったら、取り返しつかない。多分ちょっとだけ寝覚めが悪くなる」
「お嬢ちゃんの命、軽すぎねえか?」
「くっ、確かにそう言われるとエルムに似てるような………」
「ねえよ。やるにしても一声かけんだろ。」
「んっ、間違いない、これはエルム。心で通じ合ってる」
「いや、さっき無理なタイプとか言ってなかった!?元から全然通い合ってる感じなかったけど!!危険だし、早く始末しないと………」
「例えエルムじゃなくても、私が責任もって育てるから………」
リオが暫定エルムの頭に手を置き撫でまわすと、ゴブリンは一層へつらうような愛想笑いを繰り返す。
「うっ………まぁ、リオがしっかり面倒みるなら………………ちゃんと餌あげられる?毎日散歩いく??」
「んっ、週2でブラッシングもする」
「毛ねえよ。あと、絶対親が世話する事になるやつだろ、それ。二人で楽しんでるとこ悪いけどよ、あんま遊んでっと肝心の本人が危ねえぞ。ここはオレに任せて、さっさと様子見に行ってこい」
「ゴブ彦を置いてけない………」
「ゴブリン前提じゃねえかよ!!とりあえずそれと一緒でいいから早く行け!!」
「横暴。行こう、ゴブ彦、散歩の時間」
デボラに怒鳴られ、リオは渋々指示に従う。
リオに手を繋がれ、そして剣を片手に背後を取るミナトから殺気を向けられ、ゴブ彦はただひたすら小刻みにお辞儀を続けていた。
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ゴブ彦はエルムなのか!?
ゴブ彦の運命はいかに!!
次回「ゴブ彦、死す」お楽しみに!!




