無理なタイプのエルフ
「痛っ、痛いってば!!もっと優しく出来ないの!?これだからガサツな人間は嫌なのよっ!!」
罠を外そうと試みるデボラに対し、少女から絶え間ない罵声が浴びせられる。足に絡まった荒縄は思いのほか深く食い込み、デボラの太い指では容易には外せない。
「暴れんなっ!!あと、うっせえ!!!!!」
「んっ、このまま吊るしとく」
「まぁまぁ、二人とも。デボラさん、ボクが外しますか?背中を借りることになっちゃいますけど………」
「ああ、頼むぜ」
デボラは僅かに身体を前にも屈ませ、ミナトは靴を脱ぎその背に乗る。
「はぁ!?ちょっ、やめなさい、触らないで!!」
「動かないで、危ないよ」
背という不安定な足場で懸命に縄を緩めようとするミナトの腕を振り払うように、少女は手足を激しく動かし暴れる。
「何が危ないよっ!!貴方は噂に聞く男って生き物でしょ!?常にメスの身体を求め、涎を垂らしながら徘徊する、脳みその代わりに海綿体が詰まってる愚かしい生物………助けるのにかこつけて、私の足とか胸とか触って、その薄汚い欲望を満たそうとしてるのね!?言い訳は聞かないわ、そうに決まってるから!!」
「えっと………やっぱり、このままにする?」
ミナトの言葉にリオとデボラが超高速で首を縦に振る。
「な、なに?見捨てるつもり!?このか弱い美少女を!!??高貴なエルフを!!!???この不潔なゴブリンだらけの森に置き去りにする気!!!!????」
「んっ、面倒」
リオが短く呟くと、自由を奪っていた縄が千切れ、少女はそのまま地面へと落下した。
「ギャンッ!!…………っ!!痛いんだけどっ!!最っ悪っ!!服が汚れちゃったじゃない!!」
「ごめんね。えっと………………ボク達はこの近くにあるゴブリンのねぐらを討伐しに来たんだ。危ないから帰った方がいいよ。じゃあ、気をつけて」
ミナトは相手に言葉を挟む隙を見せることなく一息で言い切ると、そそくさと立ち去ろうとする。
「んっ、最短で関係を断つ好判断」
「ちょっと待ちなさいよ!!私をこんなに汚しておいて、何もなしに逃げるつもり!?あと助けてくれて、ありがとう!!」
「お礼のタイミングとテンションおかしくない!?」
「そんなの私の勝手でしょ!?もう、人間って自分勝手でデリカシーに欠けるわね」
「んっ、もしかしてエルフの国には鏡なかったりする」
「はぁ?鏡くらいあるわよ。変なことばっかり言ってないで、さっさと行くわよ」
「えっ?どこに??」
ミナトの頭上に特大のクエスチョンマークが浮かび、少女はやれやれと言った表情でため息をつく。
「ゴブリンの巣を退治しに行くんでしょ。偶然私と同じ目的みたいだし、今回だけ特別に手伝ってあげるわ。感謝なさい」
「いやいやいや、ほらっ、いま危ない目にあったよね!?これからもっと危険なところに行くんだよ。どんな強敵がいるかも分からないし、ボク達だって自分の身を守るので精一杯になるかもしれないんだ。一人で帰るのが怖いなら、安全な所まで送るからさ。考え直した方が………」
「はあっ!?別に危なくなんかなかったけど。エルフの私がゴブリンなんかに負けるわけないでしょ。ちょっと相手に合わせて遊んであげたけど、あと1分貴方達が来るのが遅かったら全員消し炭だったわ。むしろ私の超魔法に巻き込まれなくてラッキーたったのよ、貴方達。だいたい格好を見れば想像がつくけど、貴方達魔法使えないでしょ。3人パーティーで魔法詠唱者が一人もいないって正気なの??危なっかしくて見てられないわ」
「異常な早口、私じゃなきゃ聞き逃してる」
「私の名前はエルム。高貴な純血のハイエルフにして、帝国魔法学院創立以来の天才と呼ばれた最高の魔法詠唱者。貴方達には勿体ないくらいの英雄級の逸材だけど、戯れに付き合ってあげるわ。運が良かったわね」
「んっ、ムリなタイプのエルフで『エルム』。覚えた」
「誰が無理なタイプよ!!と、友達とか凄い多いんだからね!!と、とにかく、暗くなる前に討伐するわよ、ついてきなさい!!」
「えっ、あっ……………………うん、ボクはミナト、それにデボラさんとリオ。よろしくね、エルム」
ミナトは言いたい事を全て飲み込み、少女とともに歩き出した。
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私的には無理なタイプじゃないです




