救出
「いま助けっ……んぐっ!!」
罠により自由を奪われたエルフの少女に向かいミナトが救いの手を伸ばそうとするが、リオはそんなミナトの口を塞ぎ、引きずるように茂みに身を隠す。
「いててっ………リオ、どうしたの?」
ミナトはゴブリン達に気づかれないよう声を潜める。
「んっ、まだ気づかれてない。様子を見るべき」
「確かにあの嬢ちゃんが騒ぎまくってるおかげで、一匹もオレらの存在に気づいてねえな。なんならオレの上半身丸々見えてっからな」
デボラの指摘するとおり、ゴブリン達は罠にかかりキャンキャンと甲高い声で騒ぎ立てる少女に意識を奪われており、少し見渡せば容易に視界に捉えられるであろうミナト達の存在に一切気づいていない。
それは少女も同じで、眼下のゴブリンに向け杖を振り威嚇することに精一杯で、周囲に注意を向ける余裕は無い。
「しっかし、ありゃなんだ?誰がやったのかは知らねえが、吊った位置が高すぎて、ゴブリンどもの手が届いてねえぞ。罠を設置した奴も、自分とゴブリンの体格差くらい考えろよな、まったく」
目の前にぶら下がる極上の獲物を我が物にしようとゴブリン達は懸命に手を伸ばすが、その指先は少女にかすることもなく空を切る。
ねぐらに持ち帰り、ゆっくりと少女の身体を楽しむことを考えているのか、無傷で捕獲しようとするため槍や弓などの道具も使えないようで、吊られた少女の下で延々と届くことのないジャンプを繰り返す光景は、ある種の祭りのような歪んだ陽気さを醸し出している。
一方で少女は杖での攻撃を諦め、片手でスカートを抑え、片手で徐々にまくれあがる上着を何回も戻そうとしている。身体つきは華奢だが、必死に肌を隠そうとするその行動がかえって欲情を煽っているのか、ゴブリン達は一層興奮し声を上げている。
格好から推測するに魔法詠唱者であることは間違いなさそうだが、逆さ吊りにされていることで頭に血が上り冷静な判断力を失っているのか、状況を打開する魔法が発動する様子はなかった。
「んっ、サルの知能テストっぽい。箱と棒があればいける。箱と棒を用意すべき」
「確かに見ててもどかしいけど、ゴブリンが目線で語ってる場合じゃないよ!?リオ、あの子を助けないのには何か理由があるんだよね。見張りを引きつけて本拠地の戦力を削るため?それとも、他の目的があるとか………」
ミナトの問いにリオが真剣な眼差しで応える。
「ハーレム物の宿命として、ここはエロ展開が期待されてるはず。可憐なエルフ、群がるゴブリン、あとは皆様の玩具………的な流れ。楽しみにしてくれている人たちの為にも、止めるわけにはいかない」
「いや、そんな理由なら止めるからね!?」
ミナトの叫びに囚われの少女が、そしてゴブリンが一斉にこちらを振り向く。
「あっ、しまった………」
「んっ、ツッコミ癖ゆえの失態」
「まっ、どうせ全員ぶっ殺すんだ、この数のゴブリン相手に不意打ちってのも味気ねえ。ミナト、ここはオレに任せてもらうぜ!!おらよっ!!!」
跳躍。
3メートル近い巨体がフワリと宙に浮き、着地と同時にカラムーンにおいてデボラの代名詞ともなっている大戦斧が、周囲の敵を葦でも刈るように横薙ぎにする。
丸太のように太い腕により振り回される大戦斧が、粗末な防具を卵の殻でも割るかの如き手軽さで砕き、ゴブリンの肉体が千切れ、四散する。
一振りで8の命が消え、もう一振りで少女を取り囲んでいたゴブリン達は全て物言わぬ骸となった。
「意外と強い」
「意外は余計だな。鈍ってるとは言え、元オリハルコン級冒険者だぜ?ゴブリン如き100匹いようが相手にならねえよ」
「鈍ってなんかいないですよ、流石です!!」
ミナトがデボラの活躍に目を輝かせる。
「お褒めの言葉は敵のアジトをぶっ潰すまで取っといてくれ。さて、あとはコイツをどうするかだが………」
デボラは首の角度を少しだけ上向きにし、大木に木の実のようにぶら下がる少女を視界に捉える。
「デカ女!!なに呑気な顔で喋ってるの、早く下ろしなさいよ!!ちょっと、言葉が通じないの!?悪口なら分かる!?このグズ!!バカ!!間抜け!!」
デボラに対し次々と罵倒の言葉を投げかける少女に、ミナトは苦笑いを浮かべる事しか出来なかった。
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罵倒系女子ちょっと好きです




