ベッドにて
「バタバタしてて二人で話す暇もなかったね。村の人達はどう、上手くやれそうかな」
「はい、穏やかな方が多いですし、混ざり者への偏見も無いわけではないですが、少ないように感じます。私のような小娘の指示も文句を言わずに聞いてくださいますし、とても良い方々かと」
ベットに座っているアルシェが促すと、ミナトはすこし戸惑いながらも遠慮がちに隣に座る。
深夜に少女と呼べる年齢の美しい女性と同じベッドのうえにいるという事実に、ミナトはこれまでに感じたことがないよう緊張と昂揚を覚え、思わず身を屈める。
「よかった………村の人達はルーナとも大丈夫そうかな」
「私はルーナ様とは別々の場所で作業をしていたので存じ上げません。そんなにルーナ様の事が気になるなら、直接お伺いになった方が良いかと思います」
ミナトは動揺を悟られないよう咄嗟に思いついた話題を口にするが、ルーナの事を問われたアルシェはやや憮然とした表情で突き放すように答えた。
「あっ、ほら、ルーナは亜人の中でも珍しいナーガだからさ。驚いてる人もいるかなって………」
「そうですか」
気まずい空気が流れる。
ミナトは何を話せばいいか分からない自分自身を誤魔化すように、また普段と様子の異なるアルシェから逃避するように、思わず視線を逸らす。
数十秒の重たい沈黙。
すると、シンと静まった世界を切り裂くように、ミナトの隣から衣擦れの音が響く。
「えっ、ちょっ、アルシェ、何して………!?」
「天幕が思った以上に気密性が高く暑いので、脱いだだけですが」
「いや、結構寒いよね!?早く着たほうが………」
「ミナト様、獣人は元来凄まじく暑がりなのです。恐らく身体に流れる獣の血が、毛皮があった頃の記憶を呼び起こさせるのかと。普段は皆様に合わせ、分厚い給仕服に身を包んでおりますが、自室ではこのような格好をしております。何か問題がございますでしょうか」
アルシェはこれが正しい姿であると言わんばかりに給仕服を全て脱ぎ去り、ベッドの上に畳む。
薄く透けたキャミソールのような肌着から淡い色の下着がチラリと垣間見え、ミナトは目のやり場を失いジッと床を見つめる。
「ミナト様、そこまで露骨に目を背けられると、私も落ち込むのですが。強制するわけではないですが、いつもと同じ態度でいて頂けると嬉しいです」
「あっ、ごめん………そうだね、そう、うん」
ミナトはアルシェのほうに向きなおると、燭台の炎が揺らめき、すき間風に吹かれた火が形を変える度に、少女の身体を構成する曲線の陰影が強調される。
「ここは本当に暑いですね………」
アルシェはそう言うとミナトの目の前でキャミソール状の肌着を脱ぎ、下着だけの姿でミナトににじり寄る。
「ミナト様は寒いのですか?」
「そ、そうだね、ちょっとだけ………」
「では、こうすれば少しは暖が取れるかと」
アルシェはベッドに無造作に置かれた毛布を掴むと、腰の引けたミナトを引き寄せ、互いの身体を連結させるように毛布にくるまる。
毛羽だった毛布の下で、手の甲にアルシェの肌が触れ、温もりが伝わる。
アルシェがもぞもぞと姿勢を動かすと、その度に互いの身体の様々な部分が触れあい、ムニュっとした感覚を感じたところでミナトは反射的に手を引っ込めた。
ミナトが一層身体を硬直させると、アルシェがミナトの太腿を手でさすり、ゆっくりと動かす。
「あっ………あ、アルシェ?」
「………凝っていますね。筋肉が硬くなっています」
「そ、そうかも、結構無茶な動きをしたし、馬に乗るのも久しぶりだったからさ。ほらっ、乗馬って熱くより楽に見えるけど、意外と全身の筋肉を使うんだよね。アルシェも今度乗ってみる?教えるからさ、きっとすぐに上手くなると思うよ」
ミナトは天幕を覆う粘度の高い雰囲気を変えるように早口で捲し立てるが、アルシェは太腿に手を置いたまま僅かに潤んだ瞳でミナトをジッと見つめる。
「………分かりました」
「どういう………」
「ミナト様、横になってください」
「えっ、それは流石に!!あのっ、ほらっ、だってさ………」
「………ダメですか?」
「えっ、あっ………う、そういうわけじゃ……………」
ミナトはそれ以上何も言う事が出来ず、アルシェのなすがままにベッドに横たわる。
「それは同意とみなしてよろしいでしょうか?」
アルシェの言葉にミナトは顔を赤くするだけで答えない。
「………はぁ、かしこまりました………では、うつ伏せになってください。マッサージをいたしますので」
アルシェの口調にはどこか苛立ちのような感情がこもっていたが、ミナトはそれに気づくことなく、マッサージと言う言葉に胸をなでおろした。
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もうちょっとだけ続きます




