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異世界ハーレムは義務です~0からはじめる建国物語~  作者: 碧い月


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新たな神話

「新しく王都に移住した国民は147人。お姫様から貰った食糧なんて、一週間も持たないわよ」


 ミナトは馬車の積み荷を思い返す。

 6人だった時には1年かけても食べきれるだろうかと思うほどの量であった食料も、100を超える民を養うことを考えれば心許ないことこの上ない。


「明日村に人をやって、残ってる食い物を根こそぎ移送する必要があるな」


「エッダ様が言うにはゴブリンの襲撃により貯蔵庫が燃え、冬に備えた備蓄用物資の大部分を失ったとのことです。それぞれの家で保管している物を持ち寄れば数週間は持つかと思いますが、過剰な期待は禁物かと」


「カラムーンで仕入れるにしても先立つものが必要だよね………シャルロッテから貰ったお金はいざという時のために取っておきたかったんだけど、建国早々にその時が来たのかな………」


 ミナトの口から何度目かのため息が零れる。


「あれだけの金貨があれば、当面は食糧の心配する必要はなくなるわね。ただ、それはこれ以上国民が増えないという前提の話だけど」


「あっ………」


 ミナトの脳裏にオーガが口にした不吉な言葉がよぎる。


「オーガはゴブリン共が他の村も襲ってるって言ったんでしょ?まっ、相手の絶望を誘うために適当に吹かすのは魔物の得意技だから、口から出まかせを言ってる可能性もあるけど、美しく聡明で誰よりも気高いと噂の六大魔公『金色こんじきのアルベラ』が現れたことで、人の領域に色気を出してる輩が多いことも事実よ。アルベラが封印されたことも、国境沿いにシンギフ王国が出来たことも、ジェベル王国民にすら浸透してないんだから、亜人や魔物にそれを把握しろってのも無理な話だしね」


「飯に敵に、ほっときゃ幾らでも問題が積みあがるな。ミナト、国王稼業ってやつは冒険者より遥かにめんどくせえみたいだぞ」


「どちらにしろ、もう一度お姫様に謁見する必要がありそうね」


「できた~」


 天幕内に満ちた重苦しい空気を減圧するかのような気の抜けた声がルーナから発せられる。


「どうしたの、ルーナ」


「今回のミナトっちの活躍もりもりの英雄譚だよ~。けっこう良いと思う~」


 ルーナは細かな文字でびっしりと書き込まれたページを誇らしげに掲げる。


「んっ、朗読会の始まり。つまらない話が続いたからグッドタイミング」


「リオ、大事な話してるんだから………」


「いいじゃない、ワタシも退屈してたところだし」


「じゃあ、さくさくっと読んじゃうね~」


 ルーナはこほんと咳ばらいをすると、尾の先をピンと伸ばし、歌うように語り始めた。


『シンギフ王国歴元年、空澄み渡る秋の暮のこと。


 廷臣と馬を駆っていた英雄王ミナトは、夕映えに朱く染まりし空に、ひとつ黒雲がある事に気づいた。


 黒雲のもとまで馬を走らせると、万を超える小鬼ゴブリンの群れが小さな村を取り囲み、今にも襲い掛からんと剣を打ち鳴らす音が聞こえ、廷臣はその勢い盛んなるを恐れ、軍をもってこれを破る策を王に献じた。


 しかし、王は馬を降り、万余の小鬼ゴブリンの前で「黒雲たるは誰か」と一喝すると、黒雲は瞬く間に天を衝くほど巨大な食人鬼オーガへと姿を変えた。


 食人鬼オーガが「小さき王よ、怯えて動くこともままならぬ」と嘲ると、王は「動けぬは其の方たるや」とのみ言い、呵呵と笑った。


 食人鬼オーガは王の威厳に動くことすら能わない様子であったが、王が「我の前で動けるものありや」と叫ぶと「ここにいるぞ」と勇躍胸を張り、大きく一歩踏み出した瞬間、天から降る幾億の雷光に焼き尽くされ、頭部の皮のみがヒラヒラと宙を舞い、村長むらおさの手元に落ちた。


 廷臣が「今のは神の御業なるや」と嘆息すると、王は「神意うえいなり」と事も無げに語った。


 すると、王の言葉を聞いた村長むらおさが「こは神衣うえいなり」と食人鬼の皮を被り、誇らしげに「うえい、うえい」と声を上げた。


 ほかの村人もこれに倣い、小鬼の皮で被り物を作ると、小鬼はそれを恐れ、二度と村に近づかなかったという。


 その滑稽な光景を前に、廷臣が王に「神意と神衣、どちらが王の真意なるや」と問うと、王は「どちらも『しんい』なり」と笑うばかりであった。


 以来、シンギフ王国においては、上意を尊ぶ際、または慶事を祝するに辺り『うえい、うえい』と叫ぶようになったと言う。


 なお、収穫祭において、小鬼の頭部を模した仮面を被り各家庭を練り歩く、『ウェイ祭』がシンギフ王国の秋の風物詩となっているが、この奇祭が上で語った歴史的事実を基に作られた祭りであることは、今更語るまでもないだろう。


 シンギフ王国史Ⅱ~ウェイの真相~ 著・クライ=シュ=ルーナ』


「いや、もう話の原形無くなってるから!!ほぼ創作というか、純度100%の嘘だから!!」


「だいたい合ってるわよねぇ」


「はい、間違ってはないかと」


「細けえ違いは気にする必要があるねえだろ」


「んっ、概ね正解。驚くほど史実準拠。なんならもっと盛るべき」


「概ねの範囲が広すぎる!!なんかまだ出来てもない祭りが既成事実みたいに語られてるし!!作らないで、勝手に変なお祭り作らないで!!それに、神意うえいとか神衣うえいとか、神話だからガバガバなの前提にしても、ツッコミどころが多すぎるから!!」


 ミナトの魂からの叫びを他所に、天幕内には朗らかな空気が満ち、ルーナは一人歴史書に締めの一言を書き加えた。


【シンギフ王国暦元年 11月7日】

 人口=153人(うちハーレム構成員5人)

 種族=5種(人間・悪魔【六大魔公】・獣人【ハーフ】・巨人【ハーフ】・ナーガ)

面白かった、これからも読みたい、AI先生による絵が可愛いと思った方は是非、☆評価、ブックマーク、感想等をお願いいたします!!

基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。


神話特有のガバ設定と急展開大好きです

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