一難去ってまた一難
「ううっ、皆が働いてるのに、ボクだけサボってるみたいで、いたたまれなかったよ」
「何もせず座ってるのも王の務めよ。ただでさえ浮き足だってる所に、国王がちょこまか顔だしてアレコレ作業を手伝ってきたら、気が散るでしょ。まっ、1日経ってだいぶ落ち着いたみたいだし、明日からは好きに行動していいんじゃない」
王都への帰還から半日経ち、ミナト達はアルベラが封印された事となっている丘を背にするように設置された豪奢な天幕の中で、テーブルを囲み食事を取っていた。
元が野営用であるとは言っても、指揮官である貴族の座所となることから、天幕内には大ぶりの机を置いても軍議が出来るだけの十分なスペースが確保されており、事実ミナト、リオ、アルベラ、デボラ、アルシェ、ルーナの6人が一堂に介しても、狭苦しいといった雰囲気はない。
天幕を支える柱は太く長く、布の表面には特殊な加工がされており、内部にも丁寧な刺繍が施され、およそ戦地に設営するには不向きな重厚な作りとなっているが、それがかえって王の間としての威厳を演出している。
一方で、テーブルの上に乗せられた食器は木から削り出しただけの粗末な物であり、そこにアルシェが調理した小麦粥が盛られてゆく。
「食材が限られておりますので、こんな物しか作ることが出来ず申し訳ありません。あまり味には期待しないで頂けると嬉しいです」
ミナトが匙で湯気が立つ温かな粥を掬い、口に入れる。
「アルシェ、美味しいよ、凄く!!」
安宿で出されるようなドロッとした嫌な食感はなく、サラリとした口どけと口内に広がる豊かな風味、そして良く効いた塩味が味蕾を刺激する。
「うん〜、私もこれ好き〜。カリカリとグニグニの食感がいいよね〜」
ルーナの言う通り、粥の中には小さく刻まれた具材が入っており、それが歯切れのよさと味の奥行きを足している。
「食欲そそる良い匂いもさせてんじゃねえか、流石カラムーン1の給仕だなぁ、おい!!」
「おだてないで下さい。シャルロッテ様から頂いた物の中に小麦と干し肉、イチジクなどを乾燥させた果物、胡桃などの木の実が含まれておりましたので、食感のために刻んで加えただけです。野生のハーブも入っていますので、最低限風味も整っているかと。アクセントに魚醤を端に添えていますので、味に飽きたら混ぜてみてください」
アルシェは少し耳の内側を赤くしながら、やや口早に言う。
食事が終わると、シャルロッテから贈られたハーブティーの華やかな香りが天幕に広がる。
「しかし、ミナト、今回も大手柄じゃねえか!!ゴブリンの大軍を一人で足止めしたうえに、ゴブリンチャンピオンまで討ち取るたぁ、ミスリル級は固い活躍だぜ」
デボラは皆がハーブティーの香りに心を落ち着かせるなか、ひとりジョッキ一杯に注がれたエールを煽りながらミナトの背をバンバンと叩く。
「大軍は大袈裟ですよ、それにゴブリンチャンピオンもたまたま持っていた手札がハマっただけで、剣での勝負じゃ勝ち目が無かったですから」
ミナトは謙遜するが、頬は紅潮し、声は上ずっている。
「良いじゃない、それがミナトの戦い方なんだから。もっと誇るべきよ。ただ、シンギフ王国の国王としては、軽率なのは否めないけど」
「そうです、ミナト様の双肩にはシンギフ王国の未来がかかっていることをお忘れなく」
「ごめんね、気を付けるよ」
ミナトは二人から窘められ頭を掻く。
「んっ、私の心配もするべき」
「心配すべきは村人の精神状態でしょ。それで、これからどうするつもり?問題は山積してるけど………」
「んっ、ハーレム作りを進める。今度は美人のゴブリン娘」
「集めるのは良いけど、抱く側のミナトの事も考えてあげたら?」
「リオ様、シンギフ王国を魔物の楽園にでもするつもりですか?人口も増えたのですし、酒場を作るべきです」
「お酒より大切な物があるでしょ」
「賭場………」
「じゃないわね」
「ふかふかのベッド………」
「違うわね」
「もちろん城だよね!!」
「すごい勢いで正解が地平線まで駆けていったわ………人の根源的な欲求を思い出しなさい」
「性欲?」
「そういうの止めて貰える?………はぁ、毎回ワタシにこれやらせる気かしら。そろそろ、まともな回答者が欲しいわ」
「んっ、出し惜しみ系司会者。昭和の遺物。トレンドの敗北者。答えから言うべき」
「また訳のわからない事を………水に屋根と来たら、次に必要な物はもう決まってるでしょ?」
「ハーレ………」
「食糧よ」
アルベラは先ほどまで小麦粥で満たされていた食器の端を指で弾いた。
空の食器からはただ虚しい音が響き、それはあたかもシンギフ王国が抱える問題を暗示しているようだった。
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ハーレム物だからハーレムが一番重要なのは自明の理(多分)




