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異世界ハーレムは義務です~0からはじめる建国物語~  作者: 碧い月


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空に響くはウェイの音

「んっ、盛り上がった所で、ミナトの夢を共有する必要がある」


 いまだ鳴りやまぬ拍手のなか、リオが動き出すと、ミナトはそれを制するように一歩前に踏み出した。


「あっ、そうだね、ボクの理想とする国、皆の居場所になれる国の事だね。皆の居場所になれる国作りを目指して、共に努力しましょう!!皆の居場所になれる国、皆の居場所になれる国、皆の居場所になれる国のために!!」


「必死すぎて選挙っぽくなってる。大丈夫、ミナトの口から言えないのは良く分かる。自分の欲求を曝け出すのは難しいし、恥ずかしい。でも安心してほしい。私は配慮できる女。デキジョ。だから任せる。エッダに」


「………えっ、私!?」


「シンギフ王国での初仕事。王の御前。失敗は死あるのみ」


「でも、その夢って………」


 雑な振り方に当惑するエッダに、リオが耳打ちをする。

 エッダはやはりと言った顔で頭を抱えるが、やがて顔を上げると大きく息を吸い込み、心を奮い立たせるように拳を突き上げた。


「みんな、新しい門出を祝して、ミナト国王の真の夢、シンギフ王国の国是を共に謳い上げるぞ!!」


 お~!!という歓呼の声が小さな村を包み込む。

 村人の無邪気な笑みに一瞬エッダが怯むが、転がり始めた車輪を止めることは誰も出来ない。自らの内に流れる感情の濁流に掉さすが如く、エッダは声を張り上げた。


「中身は気にするな、とにかく叫べ!!散っていた友のため、まだ見ぬ仲間のため、私達自身のため!!『目指せ酒池肉林!!やるぜボク絶倫!!全世界全種族全制覇、どすけべハーレム王国の建国だウェイ!!』さぁ、叫べ!!」


 沈黙。

 

 先ほどまでの熱狂が嘘のような、静寂サイレンスがかけられたのかと見紛うほどの完全なる沈黙。


 リオは後方で腕組みをし、ミナトは顔を伏せ、エッダの瞳から光が消えていく。


「………ウェイ」


 静まりかえった湖面に石を投げ込むように、エッダがポツリと呟く。


「ウェイ、ウェイ!ウェイ!!ウェイ!!!!!」


 呟きは言葉となり、言葉は叫びとなり、叫びは怒号となり、怒号は絶叫となり静寂を踏み潰していく。


「お前らこの程度で立ち止まるんじゃない!!この怪しさしかない国王についていくと今決めたんだろ!!なら多少夢がおかしかろうと、頭がおかしかろうと、ついていくしかないだろ!!」


 エッダは自分自身に言い聞かせるように叫ぶ。


「祭りだ祭り!!鎮魂祭で辛気臭い顔してたら、この村のために死んでいった奴らが、安心して天国に旅立てないだろ!!変だろうが、馬鹿だろうが、なんだろうが、命を託された私達は生きるんだ!!なら笑え、なら叫べ、天国まで届くよう、力の限り!!『目指せ酒池肉林!!やるぜボク絶倫!!全世界全種族全制覇、どすけべハーレム王国の建国だウェイ!!』おら、続け!!ウェイ!!ウェイ!!ウェイ!!ウェイ!!ウェイ!!ウェイ!!!!!!!!!!」


「「「………………ウェイ………ウェイ!ウェイ!!ウェイ!!!」」」


 エッダが拳を突き上げ、喉を枯らしながら叫ぶ度に、一人また一人と祭りの輪が広がっていく。


 涙を流す者がいる。

 無理に笑顔を作る者がいる。

 言葉にできない感情を叫びに込める者がいる。


 男が、女が、大人が、子どもが、老人が、すべての村人が、無慈悲な運命の女神に抗うように拳を突き上げ、額に汗を浮かべながら叫び続ける。


「んっ、明らかにお薬案件、ちょっと怖い」


「いや、リオが発端だからね!?それに、ボクは結構感動してるから!!」


「王様!!えっと、あんたはリオだっけか!?なに他人みたいな顔してるんだ、二人も一緒にやるんだよ!!」


「んっ、お構いな………」


「リオ、やろう。ボクと一緒に。皆と一緒に」


 ミナトは右腕をリオの肩に、左腕をエッダの肩にまわす。


「………ミナトがそうしたいならやる。私はミナトの夢を叶えるためにいるから」


 ミナトが笑い、それに合わせるようにリオが僅かに表情を緩めた。

 ウェイの響きは終わることなく夜空に響く。

 それはまるで、死んでいったもの達への鎮魂歌のようだった。

面白かった、これからも読みたい、AI先生による絵が可愛いと思った方は是非、☆評価、ブックマーク、感想等をお願いいたします!!

基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。


まあ客観的に見たらヤバイ集団ですよね

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