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異世界ハーレムは義務です~0からはじめる建国物語~  作者: 碧い月


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忠臣リオ

「んっ、到着。ミナトは『暇になったら村でパーリーナイトを見学しながら、ハーレムタイムを妄想してて』って言ってたはず。間違いない。ミナトの危険も危なくないし『休み時間に教室の端の自席で声をかけられないよう寝たふりをしながら、聞き耳を立てて周りの状況は把握するモード』に突入する」


 リオは長い独り言を終えると、散歩でもするかのような気軽さで至る所から火の手の上がる村の中央部に進み、そのまま体育座りをし、周囲の観察を始める。


 村人達は互いに鼓舞し合うように大声を上げ、破られた柵に荷車を寄せ敵の侵入路を減らし、ゴブリンに対して鍬や鋤で、それすらない者は石を投げ応戦している。

 地面には村人の戦果とも言えるゴブリン達の死体が幾つも散乱し、一方で、それよりは少ないものの傷つき倒れ果てた村人の姿も確認できる。


「戦況は………順調に悪化中。ジリ貧」


 リオはポシェットから取り出したクッキーをモグモグと咀嚼しながら呟いた。


 リオの分析通り、防衛戦の趨勢は徐々にゴブリン側に傾いている。

 家の数から推測するに、村の住人は100〜200人程度だろうか。辺境の寒村にしては異例の多さと言えるが、戦うことの出来る者はそのうち半数程度であり、いまだ無傷な者は数えるほどしかいない。


 対してゴブリン達の数は100を超えており、その全てが曲がりなりにも武装を整えた戦闘員である。

 勝てば自分の物になるであろう食料や家畜、そして思う存分弄ぶことの出来る女子供という玩具の存在に心を躍らせ、欲望が赴くままに一気呵成に攻め立てており、ミナトが上位種も含めた敵を20以上引きつけているという事実を考慮しても、不利は否めない。


 そんな中、数匹のゴブリンがリオという極上の獲物が逃げることもなく、無防備に座っていることに気づく。


「おいっ、お前、何処から入ったんだ!!早く逃げろっ!!」


「んっ、お構いなく」


 自警団の一人が叫ぶように命じるが、リオはにべもなく断り、手の届く範囲にまでにじり寄るゴブリン達をジッと見つめる。

 敵はリオの恐怖を煽るように、手にした刃こぼれだらけの剣を執拗にアピールし、村人から切り取ったであろう血の滴る耳と鼻に舌を這わせるが、リオは一切表情を変えることない。


「お構いなく」


 リオはゴブリンに対しても同じ言葉で拒絶を示すと、ポシェットからもう一枚クッキーを取り出し、口に放り込んだ。


「ゴアアッ!!」


 その超然とした態度を挑発と捉えたのか、1匹のゴブリンが金切り声を上げながら、武器を片手に襲いかかる。


「嬢ちゃん、危な………」


 パンッ


 響く破裂音。


 自警団の男は眼前で起こった事象を信じる事が出来ず固まる。

 自分の娘ほどの年頃の少女が焼き菓子の破片を指で弾いただけで、ゴブリンの頭部が柘榴のように爆ぜたのだ。


「んっ、炎上の予感。食べ物で遊ぶな系正義マンが大挙して押し寄せてくる。軍靴の音が聞こえる。後からテロップで『ゴブリンの頭を砕いたクッキーは村人が美味しく食べました』って入れる必要有り。全くSNS社会は地獄、現代社会の闇」


 突如仲間を失ったゴブリン達は、誰に何をされたかすら理解できず、しきりに辺りを警戒する。


「邪魔。見えないから、どいて欲しい」


 パンッ


 今度は拾った小石を指で弾き、ウロチョロと視界を遮るゴブリンを駆除する。


「んっ、視界良好。引き続き見学する。王の命令を守る忠臣ムーブ」


「おいっ!!」


 膝を引き寄せ、体育座りで丸まっているリオに向かい、近くで自警団を指揮していたエッダが、ヨロヨロとした危うげな歩様で歩み寄る。


「あんた、ミナトと一緒にいた奴だろ?まさか、今のはあんたがやったのか!?」


「そう」


「強いんじゃないか!!それなのに、どうしてそんな所で座ってるんだ!!この状況が分からないのか!?村がゴブリンに襲われてる!!あんたの仲間のミナトも戦ってるんだ、力を貸してくれ!!」


「無理」


 エッダの罵倒とも懇願ともつかない心の叫びに、リオは無関心に拒絶を示す。

 短く端的なその言葉は、どこまでも冷たい響きを帯びていた。

面白かった、これからも読みたい、AI先生による絵が可愛いと思った方は是非、☆評価、ブックマーク、感想等をお願いいたします!!

基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。


リオが体育すわりをしていたら、恐らく見えます

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