ゴブリン襲来
「不味い、村が囲まれてる………でも良かった、まだ柵は突破されてないみたいだ。煙は火矢か何かが柵を飛び越えて、納屋にでも燃え移ったのかな。櫓には人影があるし、矢や投石で反撃もしてる。すぐに潰されることはないはずだ」
村に急行したミナトは、近くの茂みに馬を繋ぎながら周囲の状況をつぶさに確認する。
「んっ、なんで徒歩?馬の方が映える。『#リアル炎上中』間違いなくバズる」
「不謹慎にもほどあるからっ!!………それに、ボクは馬に乗る稽古はしてるけど、馬上戦闘の訓練を受けたわけじゃないからね。態勢が不安定だと飛び道具の精度も落ちるし、片手じゃ満足に剣も振れない。慣れてるスタイルが一番だよ。………リオ、手伝ってくれる?」
「………無理、この村はハーレムに無関係、ルール的にアウト。でも、ミナトの危険が危ない時だけ助ける」
「分かった、つまりボクに危機が迫れば戦ってくれるんだね。ありがとう、それだけでも心強いよ」
リオの答えを予想していたのか、ミナトは笑顔で応じる。
「怒らないの?」
「大丈夫だよ、理由があるんだよね」
ミナトの問いかけに、リオはただ無言で首を縦に振る。
「理由、聞かないの?」
「リオが言いたくなったら教えて。それまでは聞かないよ」
「んっ、そこはもっとガンガン質問攻めにすべき。その上で秘密にしたい乙女心」
「もう、ワガママだなぁ」
ミナトは笑いを噛み殺すと、真面目な顔に戻り、馬に括り付けた背嚢から幾つか飛び道具を取り出し、懐に差し込んだ。
「リオ、ボクは敵の注意を引きながら数を減らす。もし戻ってくる前に柵が破られたり、門が突破されたら『ボクが危険な目にあってるかもしれないから』村に入って、様子を見てくれるかな」
「んっ、わかった、ミナトの危険を守るため頑張る」
「それ意味おかしくない!?………………じゃあ、行ってくるね」
ミナトはリオの返答を聞く前に茂みを飛び出す。
「まず一つ」
柵を登り、今にも村に侵入しようとするゴブリンの肺を投げナイフが貫く。
呻き声とともに背中を貫かれたゴブリンが地面に落下し、その落下音が周囲の魔物にミナトの存在を教えた。
「二つ、三つ」
自らを落ち着かせるように低く短く呟くと、背後からの奇襲に当惑するゴブリンめがけ、残りの投げナイフを放ち、命を奪う。
「残りは三つ」
ミナトは鞘から剣を抜き、続けざまに3匹のゴブリンを切り捨てる。ゴブリン達は悲鳴を上げる暇すらなく両断され、周囲には物言わぬ死体だけが転がっている。
(凄い。羽根のように軽いのに、革鎧を紙みたいに切り裂ける。これが伝説の竜燐級冒険者が使っていた剣の威力)
王都で預かった英雄デュゼルの剣。
これまで手にしてきた数打ちのショートソードとは隔絶した切れ味に、一瞬表現のしようのない昂揚感を覚えたミナトであったが、すぐに頭を振り戦況を確かめる。
いま倒したゴブリンの数は6体。
眼前から敵影は消えたが、これだけの防衛網を備えている村を襲う以上、数十体のゴブリンだけで攻め寄せたとは考えにくい。
火矢を使っていることからも一定程度の文明レベルは有しており、そのことから推察すると魔法を用いるゴブリンメイジやホブゴブリンがいる可能性が高い。
ダイアウルフなどの大型の狼に騎乗し、用心棒としてトロールやオーガを雇っている事すら考えられる。そして、これは最悪のケースだが、ゴブリンにとっての英雄『ゴブリンチャンピオン』やゴブリンの最終進化形態ともいえる『ゴブリンキング』がいることも………。
(1対1ならオーガでも仕留められる。だけど、相手に魔法詠唱者の支援があったら?もしくは2匹の上位種を同時に相手取ることになったら?もし、ゴブリンチャンピオンやゴブリンキングがいたら?)
「関係ない、倒すだけだ」
ミナトは次から次へと胸の内から湧き上がる不安を無理やり踏みつけるように呟くと、力の限り剣を握りしめ息を整える。
「行こう、ボクの国の皆が待ってる」
夜の帳が夕日を飲み込み、世界は闇に覆われようとしている。
沈みゆく太陽を背に、ミナトは新たな敵を求め駆けだした。
面白かった、これからも読みたい、AI先生による絵が可愛いと思った方は是非、☆評価、ブックマーク、感想等をお願いいたします!!
基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。




