拒絶
「ボクはジェベル王国からこの土地の王に任命された、シンギフ王国の国王ミナトと言います。話をしたいので、門を開けてくれませんか」
「はあ!?何を言うかと思えば………そんなくだらない作り話を信じる馬鹿がいるか!!嘘八百を並べてこの村を襲おうとしてるんだろうが、そんな子供騙し通じると思うなよ!!射殺されたくなければ、さっさと消えろ!!」
ビュッという風切り音を立て、矢がミナトの足元に突き刺さる。
女性の周りには数人の若い男達が控え、同様に弓を手にしているが、その構えは明らかに不慣れで、まともに弓を扱えるようには思えない。
「野蛮。国王暗殺未遂。処すべし」
「そういう不穏なこと言わないで!?でも、これが普通の反応だよね。ボクだっていきなり王様って自称する男が現れたら、まずは疑うと思うし………よしっ」
ミナトは大きく一つ深呼吸をすると、馬を降り、地面に刺さった矢を抜く。
「何をする気だ!!今度は当てるぞ!!」
再び矢を番える女性に対し、ミナトは動じることなく手にした矢を頭上に掲げた。
「良い矢だね。作りも丁寧だし、威力も十分だ。柵や櫓を上手く使えば、ゴブリンの小集団位なら十分に撃退できると思うよ。でも、敵の中にホブゴブリンがいたらどうかな。トロールが………もしかしたらオーガやゴブリンチャンピオンがいるかも知れない」
「何が言いたい、どんな魔物が来ようと、自分の村は自分で守る!!」
「君は随分若いね。自警団のリーダーかい?それとも村長?」
「お前には関係ない!!」
「関係あるよ。経緯はどうであっても、ボクはこの国の………シンギフ王国の国王だ。ボクには国民を守る義務がある。ただ、この国は新しく出来たばかりで、軍隊なんて立派なものはない。だから、散らばっている村の住民を王都に集めて、集団で自衛をする必要があるんだ」
ミナトのよく通る声に、女性は番えていた矢を下ろし、周りの男達に耳打ちをする。
「君の村を守りたいという気持ちは分かった。だから、今すぐでなくてもいい。少しでも不安に思う事があったら、いつでもボクを尋ねて欲しい。王都はカラムーンからカロに続く街道沿いの大きな湖の近くにあるんだ。まだ王都と胸を張って言えるような規模じゃないけど、とても良い所だよ。きっと気に入ると思う。今日は騒がせてゴメンね、また来るよ」
ミナトの言葉に返答する者はいない。
しかし同時に、再度矢を放つような強い敵意も消えていた。
「んっ、収穫なし。記念に櫓の一つくらい破壊しておくべき」
「どうして、そんなに好戦的なの!?しかも、戦果の示し方が蛮族っぽい!!………収穫ならあったよ。ボクは初めて自分の国の村人に会って、新しい国のことを、ボクの事を伝えられたんだ。いきなり会って、すぐに心を開いてくれって言うのは難しいよ。だから、明日も明後日もここに来よう。ダメなら何度だって来ればいい。時間は幾らでもあるんだから」
「明日には村が無くなってる可能性。あのレベルの防壁、悪魔なら魔法一発、すぐに全滅」
「うぅ、痛い所を突くね。でも、リオを言う通りだ、今この瞬間に魔物の軍勢が押し寄せてもおかしくない。とにかく一刻も早く他の村を探そう。今は一つでも多くの情報が必要なんだから」
ミナトは再び馬に跨り、駆け出した。
………数時間後。
そこにはすっかり疲れ果て、ガックリと肩を落とすミナトの姿があった。
「んっ、ビックリするほど収穫なし」
「ほらっ、幾つか村は見つけられたから………誰も話を聞いてくれなかったけど………」
「最初がピーク。出落ちスタイル」
「さっきみたいな敵対的な反応であっても、会話が成立するだけマシだったんだね………うぅっ、流れ的にひとつくらい村の中に入れてくれる所があると思ったのに………。もう暗くなってきたね、皆んなも心配してるだろうし、もう一度最初の村に寄ってから帰ろう」
「んっ、未練がましさMAX。昔の女が忘れられない系男子」
「ほ、ほらっ、見えてきたよ!!夕食の準備かな、あちこちから煙が………………リオ、様子がおかしい、急ごう!!」
夕焼けの赤を塗り潰す黒煙は、小さな村に不吉な影を落としていた。
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実際すぐに門を開ける村は即滅びると思います




