村を探そう
バキッ
何回目かの乾いた木が折れる音。
バキッ
リズムよく刻まれる木材の悲鳴が、ミナトの耳管を震わせる。
「さっきから凄いペースで天幕用の木材を薪に変えてる人間がいるんだけど、それは何か意図があるわけ?」
「脆い木の選別。シンギフ王国では力こそ全て。弱きものはこうして排除してる。決して力加減が分からないわけじゃない」
「ミナトの理想と真っ向から対立してるけど大丈夫?はぁ、この調子だとすぐに予備が底をつくわね………ミナト、この辺りに人が残ってる村がないか見回って来たらどうかしら。まだ昼になったばかりだし、遠出しなければ暗くなる前に戻れると思うけど」
「ん?あぁ、そうだね、そうしようかな」
アルベラの目配せに気づいたミナトが、作業をやめ立ち上がる。
天幕設営はデボラを中心とし、かなりのハイペースで進んでいた。
重い荷の運搬はアルベラが、細かな作業はアルシェとルーナが、そして天幕の組み立てはデボラが担当し、ミナトはデボラの補佐をしていたのだが、リオが一人ポツンと佇んでいたため、共に材木の整理にまわっていたのだ。
「んっ、行ってらっしゃい」
「貴方も行くのよ」
「作業中」
「その作業を止めさせるために言ってるのよ!さっさと行ってきなさい!!」
リオの手から天幕用木材が取り上げられ、代わりに2頭の駿馬が引き渡される。
馬車を引いていた荷馬ではあるものの、ジェベル王国が選りすぐった馬だけあり、若く精悍な顔つきに引き締まった馬体を有し、鞍を乗せられ見知らぬ人間を乗せることとなっても動じる気配はない。
「んっ、パーティーから追放された。復讐劇が始まる予感」
「始まらないからね!?これも大事な仕事なんだから、気合を入れていこう」
ミナトは勢いをつけ鞍に跨ると、手綱を緩め周囲を駈足で走り、馬との相性を確かめる。
「んっ、ミナトが馬に乗れるの、解釈違い。しかも、意外と器用」
「意外って言われるのは心外だなぁ。冒険者も上のランクになると、馬に乗って行動する機会も出てくるからね。デボラさんに習ったんだ、結構様になってるでしょ。リオは…………」
すこし得意げに語るミナトの真横を、馬上にY字バランスで立ち、颯爽と風を切るリオが通り過ぎる。
「大丈夫そうだね………じゃあ、行こうか」
平原を2頭の駿馬が疾駆する。
蹄が地面を蹴り上げる音がここちよく響き、土埃が舞う。
「やっぱり徒歩とは段違いだね、この調子ならかなり遠くまで探索出来そうだ」
「んっ、ハーレムに関係なさそうだけど、形だけ頑張る」
「そこは本気で頑張ろう!?シャルロッテも言ってたけど、まだ退避が終わってない人達がいるなら、危険なのは確かなんだ」
「どうして?」
「今までカロに駐屯していた守備隊が訓練を兼ねて定期的にモンスター狩りをしてたし、国境沿いの見回りもしてたから、魔物も大人しくしていたなんだよ。その重しが無くなったいま、魔物の動きは激しくなっているはずだ。小さな集落だけで魔物の襲撃から身を守るのは難しいと思う。早く見つけて、王都に移住して貰えるよう交渉してみよう」
「理解した。村を各個撃破して、征服。男は地面から生えてる謎の棒を回させて、若い女は全員ハーレムに持ち帰る」
「本当に聞いてた!?ダメだからね、助けに行くんだからね!!」
「壮大なネタふり」
「いや、ネタふりじゃ………」
ミナトが話を続けようとしてすると、リオが不意に馬を止め、遠くを見つめる。
「んっ、第一村人発見」
「あっ、リオ、待って!!」
ミナトが先を行くリオの後を追うと、次第に丸太で作られた柵が見えてくる。
森から木を切り出しそのまま荒縄で結んだだけの簡易な柵は、村を囲うように作られ、およそ人相手の防衛戦に資するような物とは言えないものの、短時間魔物を侵入を喰い止める程度の役割は果たせそうであった。
柵の間には数十メートル間隔で物見櫓があり、とても辺境の寒村とは思えない規模である。
「誰だっ!!」
物見櫓の一つに近づくと、頭上から鋭い声が降り注ぐ。
ミナトが見上げると、そこには弓を手にした一人の女性の姿があった。
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馬に乗って草原を爆走したい人生でした…




