神話を紡ぐ者
「痛っ!!ルーナ、締まってる!!締まってるから!!」
「んっ、貴重な捕食シーン」
「大丈夫?尾が首の方まで伸びていってるけど。顔とか真っ青になってきてるし………あっ、落ちた」
数十秒前まで苦しみに悶えていたミナトの動きが、尾による圧迫で魂が飛び出たかのようにピタリと止まる。
「あれ~、ミナトっち大丈夫~?ごめ〜ん、ついつい無意識にやっちゃうの〜」
ルーナは半死半生のミナトの頭部を自らの豊かな胸の谷間に引き寄せ、もみくちゃにしながら撫でまわす。
「金等級の冒険者をあの世行きに出来んだ、戦力としちゃあ問題なさそうだな。とにかく人手が足りねえし、先代の王様の代わりにオレが太鼓判押しとくぜ」
「デボラさん、勝手に殺さないでください………。ふぅ、ルーナの強さについては身をもって理解したよ。ボク達の王国は出来たばかりで、まだ何もかも足りないから大変だと思うけど、もしルーナがそれでも大丈夫だって言うなら、ボクからも是非お願いしたいな」
「んっ、ナーガ入手。夢に向かって一歩前進」
「あれ~、私アイテム扱いされてる~?ミナトっちってコレクターなの~??でも、いいや~、これで無職脱却だよ〜、やった~。じゃあ、私はお昼寝専門に頑張るね〜」
「お昼寝専門はちょっと困るかな………まだボク達も役割が決まってるわけじゃないけど、ルーナは何か得意なこととかある?やりたい事があるなら言って」
「ん〜、読み書き〜?ナーガは魔法が得意だから、魔術書好きが多いんだよ〜。でも、私は魔術書より物語派だから、変な子的な?たまに吟遊詩人さんが村に来ると、私ばっかりお話して、一緒に歌とか物語を考えたりしてたんだよ〜」
「読み書きが得意なんだね。それなら、お願いしたい事があるんだけど………」
ミナトは未だ尾で自分を拘束しているルーナに耳打ちをする。
「わかった~、やってみる~…………………こんな感じ~?」
『シンギフ王国歴元年、とある晩秋の日のこと。
英雄王ミナトは、喉が渇いたという廷臣の言葉を聞くと、持っていた槍で地面を軽く突いた。
すると、たちまち地面は割れ、吹き出した水は大地を覆い、湖となるまでその勢いを失わなかった。
廷臣が王の威光にひれ伏し、湖面の水をひと救いしようとしたところ、湖底から水龍が現れ「ここは誰の地であるか」と廷臣を一喝した。
恐怖に廷臣たちが身をすくめるなか、英雄王は槍で水龍の尾を突くと「ここは誰の地であるか」と逆に問うた。
すると水龍は美しい女人となり、膝を屈し「貴方様に捧げるべく、この土地を守っていたのです」と答え、王は「左様か」と言うのみであった。
王の王たる威厳に水龍は心服し、以後王の帷幕にはいり、重臣としてその覇業を支えたという
シンギフ王国史Ⅰ~王国の夜明けと美しき水龍~ 著・クライ=シュ=ルーナ』
「………なんだよ、これ、嘘ばっかじゃねえか!!しかも、こっそり自分のこと重臣とか美しいとか、好き勝手脚色しやがって!!卑怯だろ、オレも登場させろ!!」
「多少の脚色は英雄譚の華だよ~。それに私の事は、作者権限の範囲的な~?」
「んっ、ほぼ原形ない。ほぼカニと実際の蟹くらい違う」
「いいんじゃない?建国譚なんてどれもこれも、やりたい放題盛りに盛ってるでしょ。100年も経てばコレが歴史になるのよ」
ルーナが吟遊詩人の如く歌い上げた王国史に対し、それぞれが思い思いの感想を口にする。そんななか、ミナトは瞳を輝かせルーナの手を取った。
「凄い、凄いよ、ルーナ!!最高だ!!今日の事だけじゃなくて、これまでの事も歌にしてよ!!」
「………いいよ、やくそく~」
「絶対だからねっ!!」
「ミナト大歓喜」
「男の子って、こういうの好きよね」
「はぁ、ウチの王様が喜んでんなら仕方ねえか。ルーナ、これからよろしくな!!」
差し伸べられたデボラの手に、ルーナは自らの尾の先をポンと置いた。
【シンギフ王国暦元年 11月5日】
人口=6人
種族=5種(人間・悪魔【六大魔公】・獣人【ハーフ】・巨人【ハーフ】・ナーガ)
面白かった、これからも読みたい、AI先生による絵が可愛いと思った方は是非、☆評価、ブックマーク、感想等をお願いいたします!!
基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。
次回は人口を増やそう回になります!!
なお、ルーナの画像もこっそり登場人物紹介にあげてますので、そちらもご覧ください。




