サバイバル
「新興国に必要なのは何よりも人と情報、そして現金。金、金、金、世のなか結局は金です。酒場を開けばこの全てが手に入ります。情報を制する者は世界を制すとも言いますし、極めて合理的な判断かと」
「酒場は必要よ、確かにね。間違ってはないわ。でも、いま必要な物じゃないのよ。却下。他にないの?」
「全く、人生経験の浅いお子ちゃま達はこれだから困るぜ」
デボラが革袋に詰められた酒をグイっとあおり、ニヒルな笑みを浮かべる。
「自信満々じゃない。大都市でギルド長を務めていた者の余裕ってやつかしら、建設的な意見を期待するわ」
「賭場だな」
「酒が脳まで回ってるわけ?」
「酒は一人でも飲めるけどよ、賭けは2人いないと始まらねえからな!!しかも、アルシェが作った酒場に賭場を開帳すりゃ、酒は売れるし、人も増えるし、胴元としてガッポガッポだぜ!!ついでに色街もつけりゃ、完璧な楽園都市の完成だなぁ、おいっ!!飲む打つ買うは人生の醍醐味だぜっ!!」
「治安終わってそうな国が出来そうだけど大丈夫?必要ないし、今でもないわね。却下も却下、大却下よ。はぁ………貴方達真面目にやってる?まともなのはないの?」
「んっ、真打登場」
リオが長く美しい銀糸のような髪をかき上げる。
「その真剣な眼差し、一計ありそうね。ワタシ達に必要なもの、今後こそ頼むわよ」
「ハーレム」
「知ってたわよ、貴方がそれしか言わないことは!!」
「とりあえず国境沿いを見回って、国境侵犯してくる種族のメスを手当たり次第に捕まえて持ち帰る。ミナトは喜ぶ、人口は増える、治安も良くなる、一石三鳥」
「治安を悪くしてるのは誰かって話よね。あとメスって言うのはやめなさい」
「ミナトの夢はやめられない止まらない」
「夢と倫理が衝突したら一度立ち止まる事をオススメするわ。却下よ。だいたい連れてきた所で、どこに住ませるつもりなの?」
「んっ、とりあえずその辺の木にくくりつけとく」
リオはポシェットから取り出したロープをピンと引っ張り、自らの首に巻き付ける。
「ハーレムの概念おかしくない?イメージ図が完璧に拷問現場なんだけど」
「ハーレムと拷問は紙一重なとこある」
「ワタシの知ってる紙とは随分形状が違うみたいね。とりあえず意見は出揃ったみたいだけど………一応念のため確認しておきたいんだけど、揃いも揃って本気で言ってるわけじゃないわよね?」
アルベラが不安げな面持ちで問いかける。
「本気だよ」
「本気です」
「本気だぜ」
「ハーレム」
応える声が幾重にも重なり、その重みがアルベラの眉間を深い皺を刻む。
「えっ、なんなの?皆が皆、穢れなき眼で見つめてくるの止めてくれない?なに、冗談で言ってたわけじゃないの?示し合わせてワタシをからかってたって言われた方が、精神的に遥かに楽なんだけど」
「んっ、対案を出さず否定だけする。万年野党の発想。フリーライダー仕草。現代社会の闇」
「相変わらず何言ってるか分かんないわね。はぁ………仕方ないわ、ワタシ達に決定的に欠けてる物を教えてあげる」
「城だよね」
「違う!!」
「うーん、それならいったい何が足りないの?」
「『水』と『屋根』よ」
アルベラの言葉に、4人が顔を見合わせる。
「意外と普通ですね」
「まぁ、悪くはないと思うけど………」
「んっ、シンプルにつまらない」
「捻りがねえよな」
「まとめて捻り潰して欲しいの?いざとなったら魔法で半永久的に食事も睡眠もいらないワタシと比べて、貴方達は水も寝床も必要でしょ?なんでそこまで無頓着になれるのよ!」
「ほらっ、水ならボクの井戸があるから、5人くらいなら大丈夫だよ」
「馬は全部見殺しにする前提なの?」
「あっ………」
ミナトの脳裏にシャルロッテの顔が浮かぶ。次会う時に譲り受けた馬が全滅していたら………。ミナトは頭を振り、考えるだけでも恐ろしい未来図を記憶の隅に追いやる。
「馬は草食、水がないなら草を食べれば良い。だいたい水がないから死ぬとか甘え」
「いかれた根性論やめなさい、命をなんだと思ってるわけ?それに貰った食料や布を保管する場所だって必要でしょ。馬だって日中は木に繋いでおくとしても、夜は最低限雨露を凌げる小屋が必要になるわ。わかったら、サッサと始めるわよ」
「何を?」
「決まってるでしょ、ワタシ達で作るのよ、井戸と小屋を」
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基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。
これはもう国造りというより、サバイバルなのでは?




