国作り始動
「はぁ、今日もダメみたいだ」
「………ミナト、がっかりしてるとこ悪いんだけど、そろそろ剣をしまってくれない?お肌に悪いのよね、刃物って」
アルベラに馬乗りになって首筋に刃を突き立てているミナトは、がっくりと肩を落とし剣を鞘に納める。
「朝からゴメンね、そろそろデボラさんとアルシェが到着する頃だから、明日からは朝アルベラの所に来れないと思うんだ。そういう関係だと思われても困るし………」
「夜這いがアウトで、殺人はセーフっていう価値観はちょっと分からないけど、どちらにせよ人には見られないほうが良いかもね。明日からは朝じゃなくて夜更けに来て、楽しみにしてるから。………あらっ、噂をすれば影ね。待ち人が来たりて轍鳴るってとこかしら」
車輪が轍を進む乾いた音が幌を揺らし、ミナトは馬車を飛び出す。
「ミナト様、ただいま参りました」
「アルシェ、待ってたよ!!」
「おうっ、ミナト、調子はどうだ………って言いたいとこだが、馬車からご登場たあ、何があったんだよ。それに随分焦げ臭えな」
デボラが訝し気な様子で鼻をひくひくと動かし、臭いの発生源を探る。
「それがですね………」
ミナトは二人を自分の馬車に招き、昨日あった出来事を伝える。
「はぁ!?特使としてお姫様が来て、家を焼いて帰ってただと!?………………なんだ、そりゃ」
「至極真っ当な反応ね。ともかくワタシ達は建国早々家なき子ってわけ。王様が馬車暮らしなんて格好つかないわよね」
「んっ、戻った」
幌が開きリオが中に入ると、馬車の中は肩を寄せ合わないと座り切れないほどの密度となる。
鼻をくすぐり肺を満たすかぐわしい香りに、ミナトは膝を抱え身を固くする。
「アルベラ様の仰る通り、とても国王陛下の座所とは思えませんね。至急改善する必要があります」
「そうね、じゃあ、全員集まったところで、我らが国王陛下に記念すべき第一回御前会議の開催を宣言いただこうかしら」
「えっ、御前会議っ!?」
「賛成。『ドキッ、女だらけのハーレム会議』を開催すべき」
「最悪のネーミングセンスですが、私も会議自体には賛成です」
「いいじゃねえか、ミナト。5人しかいねえんだ、作法なんて関係ねえ、気楽にやろうぜ」
自身に集まる視線に気圧されながらも、ミナトは意を決し、一つ息を大きく吸ったあとゆっくりと口を開いた。
「えっと、それじゃあ、第一回御前会議始めます!!話し合うテーマは………ボク達が最初に取り組むべき問題でいいかな」
ミナトはアルベラの顔を覗きこみ反応を窺う。
「悪くないけど、少しテーマが漠然としすぎてるわ。そうね、とりあえず今ワタシ達に必要な物はなんなのかに議題を絞りましょう。国造りと言えば聞こえは良いけど0からのスタートなわけだし、冒険者よろしく、いつまでも野宿をやってるわけにもいかないでしょう?夢を見るにはベッドが必要だもの」
「アルベラの言う通りだね、生活基盤を整える事から始めよう。まずはボクからでいいかな」
異議がないことを確認すると、ミナトは自分の考えを確認するように軽く頷き、一人一人の顔を見渡しながら切り出した。
「城を作ろう」
「ワタシの話聞いてた?」
「城は国のシンボル。城がないって事は、国の支柱がないのも同じなんだ。柱がない家が脆いように、城がない国はすぐに崩れ去る。ははっ、城なんてすぐに建つわけがない、そんな顔をしてるね。大丈夫、ボクに考えがあるから。明日もう一度ここに来てください。本物の城というものをお見せしますよ」
「えっ、なに?話が通じなくて怖いんだけど………」
「んっ、漫画の読みすぎ」
「はぁ………百歩譲っていつかは必要なことは認めるけど、今ではないわね。却下。次、誰かない?」
「ミナト様は夢見がちで困ります。もっと地に足をつけて考えるべきです」
アルシェはやれやれという風に肩をすくめる。
「良かったわ、まともな意見が出そうね。貴方は何が必要だと思う?」
「酒場に決まっています」
「貴方もそっち側なの?えっ、ちょっと待って、さっきの下り『沈黙』で掻き消されてたわけじゃないわよね」
困惑するアルベラを横目に、アルシェは敢然と持論を語りだした。
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私もオッサンとではなく、こんな空間で会議がしたいです(切実)




