涙の理由
「神の力………そう、神託のアレは、凄い。凄いから………もの凄い………ことになる」
(うん、ダメっぽい)
「神託………なるほど、ミナト様の魔法は神の奇跡そのものとも言える強大な力ですのね。故にみだりに用いることはあってはならないと」
言葉に詰まるリオに助け舟を出すように、シャルロッテが一人納得する仕草を見せる。
(よしっ、なんか凄い良い感じに解釈してくれた!!)
「うん、そうなんだ、だから見せるのはちょっと………」
「違う」
「えっ?」
出港したばかりの助け舟に特大の重石を投げる音が、確かにミナトの鼓膜を震わせた。
「惜しい、かなり惜しい、一部はあってる。でも違う。やっぱりギリギリの所で正妻とそうでない者の差が出てる」
「リオ、何を言って………」
「ミナトが神託の勇者としての力を使う時、ミナトはほとんど神同然になる………いわゆるカミメンになる」
「カミメン!!そういう言葉があるんですの!?」
即興の嘘を煽るような絶妙な合いの手。
一度転がり始めた嘘の螺旋は、安易な思い付きと無条件の肯定に後押しされたわずかばかりの悪乗りにより、一層混迷を深めていく。
「そう………しかも、カミメンになると、意識がなくなる。言うなればヘブン状態。身体を乗っ取られる。カタツムリが寄生虫に乗っ取られて、目をウニョウニョさせながら高い所に登るのと同じ状態になる」
「例えがほんのりと気持ち悪いですわ!!」
「気持ち悪い………気持ち悪い繋がりでいくと、魔法の使い方は更に危険。18禁」
「18歳未満に公開できない魔法とは、どんな破廉恥な物ですの!?教えてくださらないと、お昼寝もままなりませんわ!!」
「………吐く。ミナトの肉体に宿ってカミメンパワーを、口からリバースする形で魔法を使う。口から延々と色々混じったスライム上の粘液が溢れ出して、それが水晶になる」
「想像以上にグロいですわ!!というか、それはもはや悪魔側の戦い方ですのよ!!ワタクシさっき『綺麗ですわ~』と呑気になでなでしてしまいました、責任を取って娶ってくださいまし、ミナト様!!」
「んっ、ミナトの正妻になるには清濁併せ吞む器量が必要。まだまだシャルロッテには早い。一度修行して出直すべき」
「ううっ、花嫁修業はかくも壮絶なる覚悟が必要なものだったのですね………負けましたわ、今のワタクシには吐瀉物を撒き散らしながら戦うミナト様の御姿を、正視する決意がございません。シャルロッテは弱い女です………まずはお庭で寄生されているカタツムリを見つけて、現実を見つめなおしますわ」
「………うん」
大役を果たし得意顔のリオ、打ちひしがれるシャルロッテ、言葉と共にあらゆる感情を飲み込み無我の境地に至るミナト、早く終わらないかと溜息交じりのフローネ、四者四葉の想いを封印の地に残し、一行は丘を下る。
「ミナト様、本日は全てを曝け出してくださいまして、お礼の言いようもございません。父上に良い土産話も出来ました」
「うん、本来見せるつもりの無かった部分も見せちゃったね。あと、その土産話は帰り道に捨てておいて………」
地を這うような嘆息に、シャルロッテはミナトの手を取る。
「ミナト様、六大魔公アルベラからジェベル王国を………多くの民を救ってくださいまして、本当にありがとうございます。そして、本日の非礼の数々、心よりお詫び申し上げます」
瞳を潤ませ震える声で頭を下げるシャルロッテに、ミナトは困惑しながらも手を握り返す。
「ワタクシはミナト様を疑っておりました。父上は勇者を騙る詐欺師にそそのかされ、自らの血肉たるべき領土を切り捨てたのだと。けれど、実際にお会いして分かりました。ミナト様は犠牲を顧みず、我々を救ってくださったのですね。先般のアルベラとの戦いには、ミナト様の他にも、死を前に勇敢に戦った無数の英雄がいたと伺いました。その方々の勇気を、ミナト様の献身を、僅かでも疑った愚かなワタクシをお許しください」
シャルロッテの涙に、ミナトは共に戦い若い命を戦場に散らした少女の涙を重ねる。迫りくる死を前に、彼女は何を思っただろう。それを知るものは、最早この世界に一人としていない。
「ありがとう、シャルロッテ。今の言葉はきっと皆の心に届いたよ」
ミナトの頬を一筋の光が流れ落ちる。
涙にも似たその雫には、冷たい大地に眠る仲間への哀惜が宿っていた。
面白かった、これからも読みたい、AI先生による絵が可愛いと思った方は是非、☆評価、ブックマーク、感想等をお願いいたします!!
基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。
シャルロッテの画像を登場人物紹介に加えました。
真顔の立ち絵バージョンも投稿したかったのですが、AI先生とのコミュニケーションが上手くいかず、投稿した絵と似ても似つかない顔になってしまいまして………いつか真顔バージョンも投稿します!!(多分)




