封印の地
「これが六大魔公が一柱、鮮血公『金色のアルベラ』ですのね………こうして封印された姿を見ると、まるで無垢な少女のようですわ。悪魔はその美しい容姿により人を魅了し、破滅へと導くと申しますが、魅入られる気持ちも分かるかもしれません」
国王と王女による会談、そして少年と少女による交流を終え、一行はアルベラを封印した丘の上に来ていた。
それはジェベル王国にミナトの価値、ひいてはシンギフ王国の存在意義を誇示する行為であったが、当のミナトにはそういった政治的意図は微塵も頭になく、ただ純粋に友人に自慢を観光地でも紹介するような心の弾みだけがあった。
シャルロッテは水晶に触れながら、魔法で模られたアルベラの形代を食い入るように見つめる。
「ハァッ!!」
澄んだ空気を切り裂くように発せられた息吹。
細くか弱い少女の肉体から正拳突きが繰り出され、その拳が水晶にぶつかったと同時に鈍く重い音が響いた。
「どうしたの!?いきなり!!」
「オーホッホッホッ、一撃与えれば謎の王女パワーで粉々に砕け散るような気がしたのですが、見た目によらず、すっごく硬ったいですわ!!」
「大丈夫?なんか嫌な音がしたような………」
「………なんのお話でしょうか?」
シャルロッテは額に浮かぶ脂汗をとびきりの笑顔で隠し、紫に膨れた右手を背に回す。
「んっ、明らかに折れてる」
「ホホホッ、ご冗談を。水晶が無傷なようにワタクシも全くの無傷ですわ、ほら、この通り………痛ったぁいですわ!!」
悲鳴を聞きつけお付きの者たちが慣れた様子で集まり、治癒魔法をかけるとすぐさまその場を後にする。
「シャルロッテ様、王都に戻ったら少し長めのお話が………」
「またまた殺気ですわ!!けれども、古の神々が与え給うたと謳われる、カロの大結界すら断ち切った大悪魔をこう易々と封印なさるとは………ミナト様は紛れもなく神託の勇者でいらっしゃるのですね」
「ミナトは凄い、当然」
「この水晶、人ならざる神の御業が顕現したものかと存じますが、ミナト様は魔法詠唱者でいらっしゃるのですか?恥ずかしながら、ワタクシ魔法という物をあまり見たことがなく、是非一度ミナト様の大魔法を拝見したいですわ!!」
シャルロッテが子どものように純真無垢に瞳を輝かせる。それは好奇心の発露のようでもあり、疑念から生じた詐略のようでもあった。
「あっ、えっと、その、ボクは………」
(不味い、全くこういう展開を想定してなかった。こんな事ならアルベラとQ&Aを練っておけば良かった………どうにかしてこの場を切り抜けないと、あらぬ疑いが………)
必死に思考を巡らせるミナトの視界に、シャルロッテ達の背後で右手の親指をグッと立てるリオの姿がうつる。
(そうだ、ボクにはリオがいるじゃないか。リオが……………って、不安要素しかないッ!!えっ、まさか、この場にいる全員の記憶を抹消して『んっ、万事解決、オールクリア』とか言い出さないよね!?この前の王都での結構ノープランだったけど、信じていいんだよね!!)
リオはミナトの不安気な面持ちを見て、わずかに首を捻ったあと難しい顔をし、とうとう一つの結論に至ったのか、胸を押さえ頬を赤らめる振りをする。
(うんっ、伝わってないな、この気持ち。絶対ロクでもないことになる確信があるけど………でも、きっとリオなら何とかしてくれる!!手段とか犠牲とかを厭わなければ、きっと何とかしてくれる………気がする、信じよう!!)
ミナトはリオの想いに応じるように、親指をグッと立てる。
それを見て、さらに首を捻るリオ。
「いや、おかしいでしょ、託したんだからそこは分かってよ!!」
「いきなり叫ばれて、どうされたのですかミナト様!?」
シャルロッテは両手で口を覆い、怪訝そうに声の主の様子を窺う。
「んっ、それには深いわけがある。そう、凄い………深い………伝説的な………理由が………」
動揺するミナトと若干引き気味のシャルロッテが見たものは、明らかにどう場を切り抜けるか今になって考え始めたリオの姿だった。
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基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。
すいません、次こそこのエピソード完結します………しかし、このお姫様いると話し終わらないな(反省)




