盤石の遭難体制
「いやぁ〜、やっぱり雪見酒は最高だな、おいっ!!
「そうですね………」
デボラの豪快な大笑いが小さな空間に何度も反響し、ただでさえ消え入りそうなミナトの返答は強烈なアルコール臭に溶けていく。
(これが『雪見酒』………風流ですわね。見渡す限りの雪の壁。外の世界と切り離されたような静寂のなか、人類の友を片手に親交を深める。温泉旅行の醍醐味ですわ………)
「いえ、やっぱり、どう考えてもおかしいですの!!!!!!」
悲痛な叫び。
しかし、それは大気に消えるわけではなく、シャルロッテ自らの鼓膜を何度も何度も震わせる。
「雪見酒がいかなるものかは存じ上げませんが、もっと、こう………広々とした温かな湯に肩までつかりながら、深々と降り積もる雪を手に掬って、フッと息を吹きかけると白い結晶が宙に舞い、その美しさに見惚れながら杯を傾ける、的な催しではありませんか!?猛吹雪の中、かまくらに閉じ込められながら飲むお酒は『凍死酒』ではありませんこと!!??」
「おぅ、姫さん、分かってんじゃねえか!!逝ける口か!?」
鼻腔を突き刺す強烈な刺激臭に、シャルロッテは思わず鼻を覆う。
「言葉の端々から不穏なものを感じますわ!?このままではワタクシ達は氷の彫像になってしまいますのよ!!」
シャルロッテは急造の氷の小屋で息を潜める仲間達に視線を向ける。
「大丈夫だよ、シャルちゃん〜。ほら〜、ナーガは半分蛇だから、寒さには強い的な?凄く眠くなってきたし、このまま冬眠的な〜??」
「寒さに弱いから冬眠するのでは!?意識を保ってください、それは一生起きてこれないパターンですわ!!」
「んっ、耳元でうるさい。騒音問題。クーちゃんを見習うべき」
リオの指差した先には、目を見開き微動だにしないクームフェルドの姿があった。
「どうしてそんなに冷静なのですか!?クームフェルド様に至っては、スライムなのに皮膚がカチカチに固まって、シャーベットのようになってますのよ!?」
「マスコット枠にデザート枠も兼任してるから無問題。雪見スライム。恐らく美味」
「倫理的に問題しかありませんわ!?そもそも何故リオ様とアルベラ様は平気なのですか!!お二人は人間ですのよね!?」
「小さい時いつも半袖短パンで過ごしてたから耐性が凄い」
「薄着に対する信仰心が強すぎますわ!!」
「ワタシの美貌の前では雪も花もひれ伏すのよ」
「なるほど………上手いこと言ってる風ですが、意味が分かりませんわ!?見てください、寒さに強いはずのアルシェ様すら凍えていらっしゃいますのよ!!」
「いえ、平気ですが。雪原に生息するスノーファングという狼は雪を毛布かわりに寝ると言います。私もミナト様の毛布になるべく、全て脱ぎ去ってひとつになるのも一興かと」
「寒さで脳がやられてますわ!?とりあえず無理せず着込んでくださいまし!!エルム様は大丈夫ですの!?」
「………ちょっと寒い」
「普通すぎますわ!!!!!」
「別にそれはいいでしょ」
「そうよ、こんなところで無駄に魔力を使いたくないの!!温泉が旅行のメインなわけでしょ!?」
「メインディッシュに行きつく前にオードブルで力尽きかけておりますのよ!?これ以上重いメインが来たらツッコみきれる自信がありませんの!!」
「ツッコミ枠だって自覚はあるのね。だけど、お姫様の言うことももっともだわ。旅行を楽しみたいところだけど、肝心のミナトがこれじゃあね………」
狭いかまくらの中、まだ動ける者の視線がミナトに集まる。
そこには「雪ってほんのり甘いよね」と呟きながら、モグモグと白い襟巻を咀嚼しようとする、哀れな王の姿があった。
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