婚姻
お付きの者達が荷車から組立式の椅子を2つ出し、ミナトとシャルロッテが腰かける。ミナトの後ろにはリオが控え、シャルロッテの後ろには黒髪の侍女が恭しく仕えている。
2人の間には小型のテーブルが置かれ、簡単な書き物が出来るよう、ガラス細工で出来た流麗なペンと鉱石を削り出し形作ったような瀟洒なインク壺が置かれる。
先程までとは打って変わった畏まった雰囲気に、ミナトはどこか身の置き場のないような表情で、意味もなく何度も姿勢を正す。
「紹介が遅れましたが、こちらは侍女のフローネです。小さな頃から共に育っておりますので、言ってしまえば姉妹のような気が置けない間柄ですわ。フローネ、ご挨拶を」
「フローネと申します、以後お見知り置きを」
頭を下げると黒く艶やかな長髪がフワリと舞う。その所作は美しく、堂々としており、第一王女付きの侍女としての誇りと気品を感じさせた。
「えっと、じゃあ、ボクも紹介を………」
「んっ、私はリオ、ミナトの正妻。他にも3人愛人がいる。でも私が正妻。リオ=正妻、ここ重要、テストに出る」
ミナトの言葉を遮るように、リオが『正妻』という単語をこれでもかと繰り返す。
「ミナト様、お若いのにもう正妻がいらっしゃいますの!?しかも、正妻公認の愛人まで………シンギフ王国、恐ろしい国っ、爛れておりますわ~!!………………後学のために、どのような営みをなさっているか、詳しくお聞かせ願えますか?」
「シャルロッテ様、好奇心旺盛なことは良いことですが、陛下より与えられた使命をお忘れなく」
「ふふっ、嗜められてしまいましたわ。聞きたい事は山程ございますが、まずはこちらをお収め下さい」
シャルロッテはミナトに一枚の羊皮紙を手渡す。
「これは?」
「ジェベル国王よりの国書でございます。内容は三点。シンギフ王国の建国を認めること、領土の一部割譲に関すること、両国の同盟関係の確認。この国書をもってジェベル王国は、正式にシンギフ王国を承認した事となります。またこの国書の写しを近隣各国に送っておりますので、近日中にシンギフ王国の名は大陸全土に伝わることとなります」
ミナトは思わず息を飲む。
つい数日前まで一介の冒険者に過ぎなかった少年が、この1枚の書状を以って王となったのだ。激しく音を立てて回る運命の歯車を前に、ミナトは眩暈がしそうになるのを堪えるので精一杯だった。
「では、こちらの書類に署名頂けますか」
シャルロッテは続けざまにもう一枚の書状を取り出し、署名を促す。
「あっ、はい。えっと『シンギフ王ミナトは、ジェベル王国第一王女シャルロッテを王妃とし、生涯愛し抜くことを誓う』っと。じゃあ、ここにシンギフ国王ミナトとサインして………………ん!?」
ミナトが異変に気付いた瞬間、書状はシャルロッテにより素早く奪いさられる。
「オーホッホッホッ、引っ掛かりましたわね、ミナト様!!ふふっ、これで婚姻成立ですわ!!リオ殿、ご覧になりましたか、正妻の座は言葉ではなく、このように行動に勝ち取るものですのよ〜!!」
高笑いとともに勝ち誇るシャルロッテからフローネが書状を取り上げ、わざと大きく音を立てながら破り捨てる。
「あぁん、ワタクシとミナト様のバラ色の夫婦生活がっ!!」
「………シャルロッテ様、そろそろ真面目にやって頂けますでしょうか」
「殺気を感じますわ!!ですが、ミナト様『年頃のレディーからサインを求められたら婚姻届だと思え』は王族のみならず貴族間では常識ですの。油断してはダメですわ」
「んっ、歪んだ常識、貴族特有の傲慢さ。革命が必要」
リオの言葉にシャルロッテは僅かに笑みを浮かべる。
「ふふっ、その通りですわね。ミナト様、国書ともなれば、内容を確認するだけでも相手を疑うことに繋がりかねないと心配なさる気待ちは分かります。しかし、国家同士の取り決めともなれば、慎重となって当然。信頼を利用し、相手を謀ろうとする輩もおります。お気をつけください」
落ち着いた口調で諭すように語りかけるシャルロッテは、先ほどまで冗談を口にしていた少女とは別人のように感じられた。
面白かった、これからも読みたい、AI先生による絵が可愛いと思った方は是非、☆評価、ブックマーク、感想等をお願いいたします!!
基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。
さっき最初から物語を見直していて、当初王国の名前を『ファロス王国』と記載していたことに気づきました………申し訳ありませんでした!!!(焼き土下座)
正しくは『ジェベル王国』です。というか、今そう決めました………これだから、用語集も作らずその場で名前を考えながら書く人間の文章は信用できませんね。
これからもちょくちょく人の名前や都市の名前等を間違えてはこっそり修正するかもしれませんが、何卒ご容赦くださいませ………多分国の名前はもう間違えないです(前振りではありません)




