全権大使
「今回、ワタクシ王女シャルロッテは、特使の任務中に冒険者であり王であるミナト様の家を焼いてしまい、深く謝罪致します。まずワタクシが、ミナト様が放火だと訴える行為を働いた経緯を説明しますと、移動中に楽団の一人が暖を取ろうとした際、ミナト様の家がみすぼらしく建っていたもので、ワタクシはそこでアラっと思ってしまい家を燃やしてしまいました。着火前に楽団内で『あの家ならある程度いっても大丈夫だろう』という噂があったのです。ワタクシがミナト様の家を燃やしてしまった事は紛れもない事実であります。しかし、廃屋といえば一般的に薪同然なイメージがあるという事も事実であります。よって、ここは一つ喧嘩両成敗という事で、水に流して頂けないかと思っている所存でございます。王女シャルロッテ」
「見事な謝罪でございます、シャルロッテ様。相手の神経を逆撫でするという意味では完璧かと」
「本気で謝ってる!?それ!!」
「んっ、謝罪風煽り」
すっかり灰となったミナトの家の前で、シャルロッテの謝罪が虚しく響く。
広大な平原にポツンと建っていたあばら屋が消え去った事で、草木にそよぐ風を遮るものはなくなり、楽団が奏でる哀歌は大気の流れに乗りどこまでも広がっていく。
「ううっ、王女の立場としては軽々に謝罪できませんが、一人の人間、美少女シャルロッテとしては心よりお詫び申し上げますの~!!ミナト様、誠に申し訳ございません………責任を取って脱いで謝意を示しますわ………………止めないですの!?可愛い顔に油断しておりましたが、心の奥底では獣欲を滾らせ、ワタクシを手籠めにしようと虎視眈々だったのですね!!??やはり男はみんな野獣ですわ~!!!」
「いや、ツッコミが追いつかないだけだからねっ!?済んだことは仕方ないし、王女様から見たらボクの家なんか廃屋同然に見えたのも分かるから、もう大丈夫だよ。謝ってくれたんだし、怒ってもない。ところで質問なんだけど、ジェベル王国からの特使ってことでいいんだよね」
「はい、ミナト様。改めまして、ワタクシはこの度シンギフ王国とジェベル王国間に横たわる諸問題解決のため、父である国王ジグムンド3世より全権大使の任を受けてまいりました、第一王女シャルロッテと申します。以後お見知りおきを」
シャルロッテは先ほどまでの取り乱しぶりが幻だったかのような落ち着き払った態度で、ミナトに対し膝折礼により敬意を表す。
「あっ、こ、こちらこそ。えっと………シンギフ王国の国王、ミナトです」
ミナトは見様見真似でお辞儀をし、そのあまりの不格好さに自ら苦笑をこぼす。
「ワタクシの先ほどのお辞儀は女性のもの、ミナト様にはこちらの方が素敵に見えるかと存じますわ」
シャルロッテは貴族間の礼法に気後れするミナトの手を取り、男性式のお辞儀の型を示すと、ミナトの鼻腔に爽やかで瑞々しい香水の匂いが広がる。
視界にはミナトの姿勢を正すシャルロッテの無防備な胸元が入り込み、ミナトは思わず視線を逸らす。
「ふふっ、ミナト様は飲み込みが早いですわね。一度お教えしただけで、もう立派な貴族の所作に見えますわ…………とても立派な…………そちらまで立派になられる必要はございませんわ!!きゃ~!!やっぱり殿方はみんな野獣ですわ~ッ!!!!」
シャルロッテは屹立するミナトの股間の気づき、両手で顔を覆い悲鳴をあげつつも、その指の隙間から聳え立ったソレを凝視する。
「いや、違うんだよ!!これは、シャルロッテの胸が見えそうになったからっ!!!」
「んっ、何も違わない。夜の帝王健在」
「夜になったら王から帝王になられるのですね、新興国なだけあって中々ユニークな国体をなさっています。ところで、いつになったら両国間の協議に入られるのでしょうか。そろそろ火も消えて久しく、シャルロッテ様が風除けを焼き尽くされたこともあって、肌寒くなってきたのですが………」
わざとらしく身体を震わせ肌をさする侍女の姿に、ミナトとシャルロッテは共に笑みを漏らし、互いに向き直った。
王女と国王、両国の行く末を決めるであろう会談が、いま始まろうとしていた。
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最初は3話くらいで終わらそうと思ってましたが、あと3話くらいプラスでかかるかもです…




