ジェベルの盾
「クライス、貴様がライズフェルド伯を継いだだと!? そのような事、儂は認めん!! 認めんぞ!!」
老貴族のしわがれた顔が怒りで歪み、血を振り絞るような怒声が大気を震わせる。
「貴公の裁可など不要だ。いや、たとえ先王であろうが、新王であろうが、誰も俺を止めることはできん。ライズフェルド伯であった叔母自身が俺を後継に指名し、俺自身が自らの意志でそれを継いだ。叔母の、先王の、そしてこのジェベルに連綿と続く過ちを断ち切るためにな」
「先王の過ちだと!? 貴様のごとき若造が、何を知っていると言うのだ!!」
祖父であり、敵する北部軍の首領でもある老爺の激昂を、クライスは冷徹な微笑で受け流す。
「ふんっ、ここより先は王家の問題。俺よりも相応しい語り手に譲るとしよう」
空を焦がす大火の如く、エルフリーデの赤髪が風に舞う。
その鮮烈な色彩は、戦場を埋め尽くす兵士たちの耳目を強烈に惹きつけた。
「新王の御前よ。もし新しいジェベルに己の居場所を求めるならば、膝をつき、臣下の礼を示しなさい」
気負いなど微塵も感じさせぬ、静かな、しかし抗いがたい重みを持つ勅令。一部の貴族が堪らず膝をつき、兵達は雪崩を打ってそれに倣った。
「愚か者が!!策謀と暗殺で玉座を奪った偽りの王に、跪く道理などあるものか!!構わん、弓を射かけよ!!魔法により、王なき旗ごと灰燼に帰すのだ!!」
激情に任せた老爺の命令に、しかし兵らは動けない。
彼らは嵐に揺れる葦の如く、ただ身を縮めて事の成り行きを待つことしかできなかった。
今や兵だけでなく、反旗を翻した貴族たちまでもが、エルフリーデの次なる言葉を待ち望んでいた。
「正統なる王位………甘美な響きね。けれど、その響きを維持するために、ジェベルはどれほどの過ちを積み重ねてきたのかしら」
エルフリーデの声が、静まり返った戦場に染み渡る。
「ライズフェルド伯クラウディア。彼女は因習を断ち切るため、自らを犠牲にした。………いいえ、彼女の死こそが新たな火種として利用された。シャルロッテの父、ヘルモーズ二世を死に追いやったのは六大魔公が一柱、詐略公『変幻のフェルリオール』。奴の仕組んだ影こそが、王の命を奪い、クラウディアに無実の罪を着せたのよ」
六大魔公の名が出た瞬間、戦場に戦慄が走り、兵士達から困惑の声が漏れる。
しかし、その騒然とした空気の中で、エルフリーデは毅然として続けた。
「彼女は内乱を避けるため、自ら汚名を被り死を選ぶことで事態を収拾し、父を王位に就けることで国を繋いだ。…………この真実は、シンギフ王国の王にして、六大魔公を封じた英雄王ミナト陛下の協力により、ようやく突き止めたもの。いまここに、国王エルフリーデの名において宣言する!!ライズフェルド伯クラウディアの汚名は雪がれた!!我等ジェベルの末裔は知った、彼女こそがジェベルの盾であったと!!」
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