黄バラの遺志
「エルフリーデ殿下が王だと!?何を言っている!! 国王陛下が崩御されたとでも言うつもりか!!」
兵達の脳裏に浮かんだ疑問を一人の貴族が言語化すると、両陣営から疑念が怒号となって打ち寄せた。
「クククッ、まるで猿回しの猿だな。己の智を以て真実を見出そうともせず、己の分を弁え静謐に御言を待つわけでもない。無様に喚き散らせば、口を塞ぐために答えを放り投げて貰えると考える浅ましさ、その底知れぬ愚かさには感動すら覚えるほどだ」
投げかけられた流麗な皮肉に、騒ぎ回っていた者たちは一斉に口を閉ざした。
高慢をそのまま鋳造したかのような若き宰相の次なる言葉を、誰もが息を呑んで待つ。
「結構。新王陛下に成り代わり、ジェベル王国宰相であるこの俺が真実を授けよう。先王ジグムンド3世は、自らの意思により古式に則り退位礼を執り行い、第二王女エルフリーデ殿下が新王として即位された。国璽、儀仗、王冠……始祖ジェベル以来、正統なる王にのみ受け継がれし『王国の三宝』は、この通り先王より新王へ、親から子へと継承されたのだ」
ジグムンド3世に仕えていた大法官が、恭しく国璽を掲げる。
その輝きは、百の弁舌をも凌駕する一の真実としてそこに鎮座していた。
「馬鹿な!! 生前退位などジェベルの法にはない!!」
「始祖ジェベルは建国に際し万余の法を作り、国民は貴賤の別なくそれに従うことで繁栄を遂げた。ならば始祖の継承者たる王が、新たな法を作れぬ道理がどこにある?」
「何をほざくか!!国政という重責を放棄し、葡萄酒を譲り渡すような気軽さで王位を譲る。そのような者を主と仰ぐことはできん!!我らが戴くシャルロッテ殿下こそ、至尊の座に相応しいお方だ!!」
宰相の紡ぐ理を激情で断ち切らんと、貴族たちは声を高らかに、自らが推戴する美名を叫ぶ。
「シャルロッテを玉座にか………なるほど、先日までの俺ならば是としたかもしれぬな」
傲慢を地で行く宰相が見せた予想外の反応に、両軍に困惑が広がる。
「しかし、それは認められぬ。何故なら、エルフリーデ殿下の即位こそ、我が叔母ライズフェルド伯クラウディアの遺志なのだからな」
「痴れ者が!! 我が娘の遺志を、当時子供に過ぎなかった貴様が知っているなどと、よくもぬけぬけと………クライスよ、これ以上時間稼ぎの茶番に付き合う気は毛頭ない。最早、言論により正義を騙る段階は過ぎた。力により雌雄を決し、それをもって正統の証明となさん!!」
「ククククッ………アーハッハッハッハッ!!!父よ、やはり貴公は何を理解していないようだな。何故貴様の娘クラウディアが死を選んだのか。何故この俺に全てを託さなければならなかったのか。我が旗を掲げよ!!」
クライスの命が戦場に響き、陽光を結ったような金の王冠の背後に一本の旗が立つ。
「黄バラ………どうして、なぜお前がクラウディアの旗を持っている!!!!!!」
「言ったはずだ、遺志を託されたのだと。今この時より、サーダイン伯クライスはジェベルの歴史から消え去る。新しき我が名は、ライズフェルド伯クライス!!ジェベル王国宰相にして、新王エルフリーデが王配の名、しかと心に刻むがよい!!」
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