内乱の始まり
「国王陛下は凶刃に倒れました。そして陛下を襲った下手人はそのまま王都から逃亡し、叛乱の首謀者となっています」
「なるほど、国王陛下が御不在なのにはそんな理由が………えっ?陛下が凶刃に??つまりは暗殺されたという事ですか!?」
貴族というよりも幇間といった方がよほどしっくりくるほど、ころころと感情を顔に出す青年貴族に、玉座の間に集まった貴族から冷笑が向けられる。
しかし、一見冷静さを保っているように見えるその行為は、眼前の変事から目を逸らすための精神的逃避の一形態に過ぎず、その点自身の疑問に真正面から向き合っているパーティス子爵の方が数段真摯であると言えた。
「その通りです」
「陛下を手にかけた者が叛乱軍を率いているのですか!?」
「その通りです」
エルフリーデは努めて冷静に、眉ひとつ動かすことなく答える。
「エルフリーデ殿下、その首謀者とはいったい誰なのですか!?」
パーティス子爵の問いが核心に触れると、貴族達は自然と姿勢を正し、判決を待つ罪人の如く目を瞑り顔を俯ける。
「クルブレール侯シャルロッテ………ジェベル王国第一王女であり、国王陛下の養子にして私の姉にあたる者です」
「………ご、御冗談を。父殺しは死すら生温い大罪。一介の平民であっても口を憚るような罪業です。それをシャルロッテ殿下が?何かの間違いではないのですか??皆さんもそう思いませんか???」
青年貴族は大きな身振りで同意を求めるが、賛同する者は誰一人としていない。
「間違いではありません。姉は王位を自らの物にせんと父を殺し、すぐさま王都を脱すると賊徒に合流。今度はこの王都ハイペリオンごと、我らを燃やし尽くさんとしています。その証拠にクルブレール侯が滞在していた部屋はもぬけの殻となっており、従者ひとり王都にはおりません。計画的な叛乱であることに疑いの余地はないでしょう」
「おぉ、神よ!!父娘が王位を巡り殺し合うなど、そんな恐ろしい事があっていいと言うのですか!?」
敬虔な信徒でもある青年貴族は、天を仰ぎ泣き崩れる。
すると雄大な体躯を持つ一人の壮年貴族が、演者の交代を求めるように前に進み出で、膝を絨毯につき臣下の礼を取る。
「エルフリーデ殿下!!叛乱軍討伐、我にお任せ頂きたい!!必ずや惰弱なる北部貴族どもを討ち果たし、反逆者シャルロッテの首を御前に捧げましょう!!」
獣の肉を骨ごと噛み砕き咀嚼しそうな大きな口と強靭な顎を持つ男は、鼓膜を破らんばかりの大声で高らかに宣言すると、反論は許さぬと言わんばかりに一段階段をのぼり、上から貴族達を睨みつける。
「ラダメル侯爵、頼もしい申し出、王に代わり礼を言います」
王女より言葉を賜ると、ラダメル侯と呼ばれた戦士然とした男は、早くも自分が指揮官となったかのような態度で顔を背ける貴族達の前を悠然と闊歩する。
「早速この場にいる貴族の兵をまとめ、賊徒どもを蹴散らしましょうぞ!!」
「お待ち下さいラダメル侯。叛乱軍とはいえシャルロッテ殿下が旗頭となっている以上、相手は何かしらの大義名分を用意し、北部貴族を糾合したうえで決戦の準備を進めているはずです。それに比べ我らの兵力は過小であり、装備も不十分。王都に進軍しているとは言っても、南部貴族の勢力圏で自由に動けないでしょうし、ここは前線が持ち堪えている間に兵力の増強を図り、大軍をもって当たるのが得策かと」
「ぬるい!!」
ラダメル侯は王女の謀臣であるレオニードの献策を一笑に付すと、ラダメル侯は自分に付き従う貴族を引き連れ足早に玉座の間を後にした。
いま国を二つに分ける内乱が始まろうとしていた。
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