全裸は突然に
「これで上手くいけば儲けものだけど………」
ミナトは背嚢から一枚の取り出し、封を切る。
すると呪符は毒々しい深紅の炎をあげ燃え盛り、ものの数十秒で灰すら残さずに消え去った。
「ダメだ。王都………しかも王城のど真ん中だもんな。やっぱり簡単な詠唱阻害術式くらいは常時発動してるよね。だけど赤の反応なら熟達した魔法詠唱者ならなんとでもなるはずだ。アルベラが動いてないとすると見張られてるか、他の場所はより強固な術式が刻まれてるのか………アレを試すしかないかな」
ミナトは冒険者の頃から愛用しているブーツを脱ぐと踵部分を開け、中に仕込んだ金色に輝く軟膏状の物質を指に乗せる。
「魔法陣を描くのは久しぶりだけど」
十分な厚みを持った敷物を動かし、慣れない手捌きで大理石の床に金色の図形を描いていく。
「一か八か、繋がってくれよ………」
剣を杖に見立て、切先で魔法陣の中心を突き発動を促す。
瞬間、金色の塗料で描かれた図形が宙に浮かび上がり、文字となり分解されていく。
「よしっ、成功だ。………んっ?ボクが描いたのって呪符効果増大の陣だよね?昔やってみた時はこんな真言魔法みたいなエフェクトは出なかったような………」
無数の文字が激しく明滅し、ミナトの視界を奪う。
世界が膨張、収束、分解、構築を繰り返し、急拵えの魔法陣の上にひとつの物体を形作っていく。
「いったい何が起こって………!!??」
ミナトは思わず叫びそうになる口を無理矢理手で抑え、激しい動揺を言葉ごと飲み込む。
真言が消え去った後に残っていたのは、一人の少女………全裸のエルムだった。
「う〜ん、ここは………ミナト?ってことは成功したの?………ふっ、ふふんっ、あまりの驚きに二の句が継げないようね。私の真言魔法なら、場所が分からなくても座標となる人間の顔さえ思い浮かべれば、任意の場所に転移するなんて思いのまま………」
エルムはすっくと立ち上がり、いつも通り自画自賛すべく胸に手を当てる。
しかし、本来であればその指先に触れるはずの布はなく、不思議に思ったエルムは視線を下に落とし、自分が何も身につけていないことを気づいたのか、獣の如き咆哮をあげるべく大きく息を吸い込む。
「キャ…………ん〜っ!!んん〜っっっっ!!!!」
ミナトは咄嗟に口を塞ぐと、パニックに陥り激しく暴れようとするエルムを押し倒す。
「静かにっ、暴れると人が来るから………痛っ」
耳元で囁くミナトの鼻にヘッドバットが直撃する。
「こらっ、だから………もう知らないからねっ」
あらん限りの力を持って抵抗するエルムの華奢な肉体を、冒険者仕込みの制圧術で確実に押さえ込んでいくミナト。
右手で両腕を頭の上で抑え、左手で口を塞ぎ、蹴られないよう膝の少し上に腰を乗せ、覆いかぶさる。
徐々に弱まる抵抗、汗ばむ肌、荒くなる呼吸。
やがてエルムは身を任せるように手足から力を抜いた。
「はぁ…はぁ……ようやく大人しくなったね………」
ミナトは目に涙を浮かべるエルムの姿をまじまじと見つめる。
(………いや、事案だ、これ!!!!!!)
一糸纏わぬ細身の美少女が若い男に組み伏せられ、全てを諦めたような表情で横たわる光景は、客観的に見ても主観的に見ても、濃縮還元するまでもなく純度100%の犯罪現場であった。
手を上で組み伏せられているため、僅かに隆起した双丘は硬くなった桃色の蕾と共にミナトの視野に綺麗に収まり、誘うように上気する。
下に目を向ければ、滑らかな恥丘が汗とは異なる湿り気を帯び、足で隠そうとする度に艶かしく糸を引く。
「ご、ごめっ………」
ミナトが反射的に拘束を緩めた刹那、エルムはその一瞬を狙っていた。
右腕に両足が蛇のように絡みつき、ハサミのように首にまで伸びた太ももは、そのまま頸動脈を締め上げる。
薄れゆく意識の中でミナトが最後に見た景色は、薄ピンクの世界が2つに割れ、自らを飲み込まんとする幻想的なものであった。
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