王女とワルツを
「オーホッホッホッ!!!お集まりの皆々様、タイッヘンお待たせいたしましたわっ!!王都に咲く一輪の黄バラ、シャルロッテただいま参着いたしましたの〜!!」
大音量で奏でられるシャルロッテ楽団の管楽器よりも更に大音の高笑いが大広間を一瞬にして支配する。
数百の貴族、それに数倍する子女や従者の視線が一斉に一人の少女へと注がれるが、王冠を思わせる艶のある金の長髪を靡かせ颯爽と部屋に入るその王女は、数千に近い視線の刃など意に介する事なく、一直線に父であるジグムンド3世のもとに進み出た。
「相変わらずだな、シャルロッテ。勝手をするなと何度も伝えたはずだが」
「ご機嫌よう、お父様。今宵はジェベル貴族の親睦を深めるための祝いの場にして、シンギフ王国ミナト陛下をおもてなしする場でもございます。つまり、いつもより二倍!!いえ数十倍場を盛り立てる必要がありますのッ!!!!さぁ、祝宴に親子喧嘩は無粋というもの。ミナト様、是非ワタクシとワルツを」
シャルロッテはミナトの手を引き、大広間の中央まで戻り、ゆったりと優雅に踊り出す。
「ありがとう、シャルロッテ。フローネさんのおかげでこの通り何とか形になったよ」
「礼には及びませんわ。フローネは舞踏会でワタクシと踊って頂くために送り込んだ、いわば刺客。満座の前で初めてダンスをワタクシと踊ってしまった以上、最早ワタクシとミナト様の仲は公認!!お父様だけでなくジェベル中の貴族がワタクシ達が晴れて夫婦となったことを認めたも同然ですわ〜!!!………と思ったのですが、予想外に反応が薄いですわね??」
シャルロッテは自らの行動に期待した反響がないことを訝しみ、踊りながら周囲の状況を確認する。
「えっと………実を言うとね………」
ミナトは気まずそうな面持ちでシャルロッテにエルフリーデとの一件を耳打ちする。
「ワタクシと踊る前に別の女とっ!?きゃーーーーーっ、とんでもない寝取られ展開ですわ〜!!!」
「寝取られ!?こっちの世界でも流行ってるの!!??いや、そういうのじゃなくて、ほらっ、なんとなく流れで………」
「全然そういうのじゃなくないですわ!?流れで………と言いますが、妻であるワタクシを差し置いて気軽に他の女性の手を取るとは言語道断ですの!!」
「あ、いや………ごめん」
(確かにボクのためにフローネさんまで寄越してくれたシャルロッテより先に他の女性と踊ったのは良くなかったかな………でも、一国の王女様が誘ってくれてるのに断るなんて外交的にも不味い気がするし、そもそもボクが困ってたのを助けようとしてくれたエルフリーデの好意を無碍にするのは、もっと良くないというか………………ダメだ知恵熱で意識が朦朧としてきた)
ミナトは次々と噴き出ては複雑に絡まってゆく思考に、頭から白い煙を上げる。
「………反省しておりますか?」
「………はい」
「もう浮気はしないと誓えますか?」
「えっ、浮気って言うのは少し違っ………」
「誓いますか??」
「………はい」
ミナトは圧に負け、うなだれる。
「ふぅっ、仕方ありませんわ、今回だけは許しますの。ですけれど、どれもこれも全てはワタクシ達の関係生が周りから見てあやふやなのが諸悪の根源なのです。………分かりました。つまり、こうすれば余計な心配をしなくて済むということですわね!!」
シャルロッテが自らの楽団に向けパッと手を振りハンドサインで何かを伝えると、ピタリと演奏が止まる。突如途切れた演奏に王城付きの楽団も演奏を止め、大広間に不自然なまでの沈黙が満ちた。
多くの貴族が動揺するなか、シャルロッテはミナトの手を取り悠然と父であるジグムンド3世の前へと舞い戻る。
「今度はなんだ」
「お父様………いえ、この場にお集まりの皆様にお伝えいたします。ワタクシとシンギフ国王ミナト様は来たる成人の儀をもって永遠の誓いを立て、夫婦となりますの。盛大なる結婚式を執り行いたいと思いますので、是非とも参加下さいまし」
満面の笑みと共にペコリと礼をするシャルロッテの堂々たる姿を、大広間に集まる人々は歓声を上げることも出来ずただ見つめていた。
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