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異世界ハーレムは義務です~0からはじめる建国物語~  作者: 碧い月


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白亜の巨城

「これがジェベル王国の王城………」


 ジェベル王都ハイペリオンの最奥部に聳える白亜の巨城を前にしてミナトは感嘆の声を上げる。


「んっ、完璧なまでのおのぼりさん仕草」


「あらっ、ジェベルで冒険者をやっていたのだから王城くらい見たことがあると思っていたけど」


「王都の冒険者組合は独立してっから、呼びつけられでもしねえ限り寄るこたぁねえよ。だいたい、いつもの格好で来たら城門を通る前に捕まるのがオチだろ」


 アルベラの問いに、デボラが着慣れない仕立ての良い上着の袖を引っ張りながら答える。


「貴族以外は大広場までしか入れないですからね。ここからは未知の世界です………ううっ、また胃が痛くなってきたかも………」


「なに緊張してんだ、ミナトは国賓なんだぜ。ドーンと構えてりゃ良いんだよ」


 ミナトが腹部に手をあてると、デボラが笑いながら背を叩き強制的に姿勢を正す。

 ジェベル王直々の招待状により舞踏会に招かれたミナトは、リオ、アルベラ、デボラ、アルシェ、エルムの5人引き連れジェベル王都ハイペリオンへと来ていた。

 国賓として招かれているという立場から、供の数があまりに少ないことはシンギフ王国の沽券に関わるということで、ミナトは他の重臣達も連れてくる予定であったものの、ジェベル王国が亜人に対して冷淡な国家である現実を鑑みて、王都の民に馴染みの薄い種族については断念することとなったのだ。


 しかし、それでもエルフであるエルムはともかく、巨人や獣人との混ざり者である二人へは奇異なものを見るかのような冷たい視線が絶えず突き刺さり、アルシェは自らの姿を恥じるように俯き、黙り込んでいる。


「それより、国賓待遇だって言うからわざわざ同行してあげたのに、この扱いはどういう事なの!?案内人すらいないじゃない!!」


 エルムは不満を全身で表現するかの如く、小さな身体をぴょんぴょんと跳ねさせる。

 その言葉通り、国賓という耳障りの良い言葉とは裏腹に、一行への待遇は好意的に見ても同盟国の王をもてなすものとは程遠い礼を欠いた者であった。


 城門を通過する際の通り一遍の社交辞令を除けば、中に入れてやったのだから勝手に見て回れと言わんばかりの放置状態であり、その杜撰な扱いは外交的な観点でも、防諜的な観点においても落第点をつけざるを得ない。


「国王はともかく、実務を担当する役人からすれば数ヶ月前に出来た新興国の国王なんて、辺境の村長を呼びつけるのと同じ感覚なんでしょうね」


「おいおい、それじゃ美味い酒も食いきれねえほどの珍味もお預けか?このために飯も酒も抜いてきたんだぞ」


「この調子じゃミナト以外王城の中に入れるかも怪しいものだわ。いくらなんでも軽んじられすぎね。馬鹿にされたままってのも癪に障るし、問題にならない範囲で少し強引にいこうかしら」


「アルベラ、お手柔らかにね………」


 アルベラを先頭に一行は王城の中に入るべく正門の通過を試みる。


「止まれっ!!何者だ!!」


「貴方達の王に招かれたのだけれど」


 前を塞ぐ衛生に対し招待状を突きつける。


「本物か?もし国書を偽造したのだとすれば、死罪は免れんぞ」


「気が済むまで調べたら?」


 詰所から紋章官らしき人物が現れ、筆跡や印影を確かめ、魔法の鑑定にかけていく。


「………偽物ではないな」


「往生際が悪いわね、つまりは本物でしょ。案内はつかないんでしよ?通して貰うわ」


「待てっ!!招待状に書かれた名は一人だけだ。それ以外の者は外で待っていろ!!」


「なんだぁ!?黙って聞いてりゃ調子に乗りやがって!!自分とこの大将を一人で敵地に送り込むバカがどこにいんだよ!!」


「んっ、敵地ではない」


「乱暴な物言いで申し訳ないけど、正論よ。王としての品位を守るため最低限の供回りは必要でしょ。クレブレール侯がワタシ達の王都を訪れた際も数十からなる供を連れてきたのだけれど、まさか王命を受けた第一王女の振る舞いが間違っていたと貴方は言うのかしら?」


「シャルロッテ様が!?………くだらん妄言を、クレブレール侯の名を騙るか!!構わん、こいつらを詰所に連れて行け、尋問する!!」


 衛兵がミナト達を取り囲み、じりじりと包囲の輪を縮める。


「マジか、せっかくあつらえた新品をこんな雑魚相手に汚すってか?」


「なに嬉しそうにしてんのよ!!こっちから手を出したら外交問題よ!?」


「襲われたのなら仕方ない。最初は強くぶつかって、後は流れで」


「冗談言ってる場合じゃないよ!!すいません、ボク達の話を聞いてくださいっ!!」


 前に歩み出たミナトの鼻先に槍が突きつけられる。


「………排除する」


「待ちなさいっ!!」


 リオが剣の柄に手をかけた瞬間、凛とした少女の声が響き渡る。

 美しく覇気に満ちた音色に導かれるように視線を声の主へと向けると、そこには緋色の髪を持った一人の少女が燃えるような赤い瞳でミナトを見据えていた。

面白かった、これからも読みたい、AI先生による絵が可愛いと思った方は是非、☆評価、ブックマーク、感想等をお願いいたします!!

基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。

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