自己嫌悪
パチパチと水分を含んだ生木がリズムよく爆ぜる。
空気が揺れる度に肌を吹き抜ける温かな風に、毛布の上に横たわっていたシャルロッテは目を覚ました。
「目が覚めたみたいだね、寒くない?」
「………ミナト様?申し訳ありません、眠ってしまっていたようです。どうしてワタクシは外で横になって…………」
「あっ、気をつけて、いきなり起き上がると………」
「どうされたのです、顔を隠されると寂しいですわ………………んっ?」
上半身を起こすと身体を覆っていた毛布をハラリとはだけ、見慣れた双丘が視界に入る。
「ゴメン!!濡れたままだと危なかったから………見てないからねっ!!」
「へっ?………あ………ワタクシこそ………御迷惑おかけいたしました………」
シャルロッテは毛布を巻きなおすと、何かを確かめるように自らの下腹部を見つめ、モゾモゾと何回か体勢を変える。
「本当に何もしておりませんの?」
「うん、神に誓って」
もう一度毛布のなかの自分の身体を確かめる。
チラリと様子を窺うミナトの視界に布越しにシャルロッテが足を開く動作をしている姿が映り、再び目を固く閉じる。
「嘘ではありませんのね………本当に律儀な方ですわ、女としては少々ショックではありますが」
わずかに複雑な表情を浮かべ、小さなため息をつく。
「服とか下着………色々なのはもう乾いてると思うから」
「ありがとうございます。では着替えますので、そのまま目を瞑っていてくださいまし」
シャルロッテは焚火の側に丁寧に畳まれている衣服を手に取る。
なまめかしい衣擦れの音が抑えこんだ感情を刺激し、肉体の一部がそれに比例して膨れ上がっていく。
(落ち着け、さっきは我慢できたんだ。今になってみっともない所を見せたら、耐えがたきを耐え、忍び難きを忍んだあの時間が無駄になってしまう)
ミナトは小さい頃に漫画で知った呼吸法を駆使し、邪念を心の奥底にしまい込む。
「お待たせいたしました、もう大丈夫です」
「よかった。なるべく火から遠ざけて乾かしたけど、布とかが焼けちゃってたら弁償を………」
目を開けたミナトは思わず声を失った。
目の前には一糸もまとわぬシャルロッテが、頬を真っ赤に染めながらミナトをジッと見つめていた。
白く透明感のある滑らかな肌。
長く細く、けれども女性らしさを失っていない足。
無駄な体毛は一切なく、全身が美を詰め込んだような淀みない曲線で構成されている。
成長途上にある双丘の頂上には、ほころんだばかりの桜を思わせる薄い桃色の小さな突起が存在を主張し、真冬の寒気と羞恥により一層紅潮する。
次の瞬間、抑圧していた情欲により固く閉ざしたはずの心の蓋が弾け飛び、全身の血流が一カ所に集中し、鉄のように固くなっていった。
「ワタクシに興味はおありですのね………ミナト様、そんな凝視しないでくださいまし!!」
「えっ!?ご、ごめん!!」
ミナトは理不尽な要求に混乱しながらも、再度目を瞑る。
「うぅっ、自己嫌悪ですわ〜!!自分が何をしたいのかワタクシ自身わかりませんの〜!!」
「とにかく、服を着ようっ!!なんか構図的に誰かに見られたら100%誤解を招くから!!」
裸体で叫ぶ少女とその側で佇む少年。
どう言い訳したとしても確実に事が起こった、もしくは事を起こそうとし拒絶されたという形であり、どちらに転んだとしても双方にとって不名誉な噂が立つことは確実な二択である。
ミナトは生まれたままの姿で膝を抱え落ち込むシャルロッテの肢体を目に入れないよう細心の注意を払いながら、その姿が他者から、そしてミナト自身から見えないように毛布で隠した。
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