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異世界ハーレムは義務です~0からはじめる建国物語~  作者: 碧い月


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神代の訪問者

「はぁ、疲れた………もう流石に限界かも………」


 天幕に戻ったミナトはベッドに身を投げ出すと一日分のため息を一気に吐き出した。


「犠牲者が出なかったのは不幸中の幸いだったけど………」


 目を閉じ今日の戦いについて思い返す。

 櫓からの弓や投石での遠距離攻撃に魔法障壁による防御、ウロボロスによる足止め、歩兵騎兵一体となった対アンデッド戦法ハーメルン、そしてエルムの真言魔法の暴走………もとい発動とそれらを囮にしてのデボラの本陣奇襲。


 シンギフ王国の持つ全ての手札を使ってのまさに総力戦といえる戦闘。


 敵の攻勢が稚拙であったことを鑑みても、千を超えるアンデッド相手に四分の一程度の訓練不足の寡兵を率いて死者がゼロであったことは奇跡と言っても過言ではないだろう。

 しかし、一方で負傷者は多数でており、なかには一生涯残るであろう深手を負った者もいる。

 いまは防衛線に勝利したという昂揚感により湧き立っているが、残された傷痕は決して小さなものではない。


「それに………」


 超越者。

 

 竜鱗級の実力を有するデボラでさえ倒すことの出来ない圧倒的な強者。

 もし自分があの化物と一対一で対峙することになったら………ミナトは恐ろしい想像をすると、暗くなりがちな思考を振り払うように大きく深呼吸をし、頭を振る。


 切札はある。

 リオにもアルベラにもデボラにも教えていないミナトだけが知る切り札が。


 しかし、それは無責任に使うことは出来ない最後の手段だ。


(自分には王としての責務がある。だからこそ、最後まで生きることを諦めてはいけない………)


 ミナトはそう自分に言い聞かせると、足をばたつかせる。


「偉そうなことを言ってても、あの時は諦めかけてたんだよね………はぁ、我ながら情けない」


 目を瞑ったままベッドのうえでゴロゴロと転がり、不意にぶつかった柔らかな感触に身を任せる。


「気持ちいい………あれ、これなんだっけ?」


 ミナトが万歳をするように両手を挙げ、記憶にない謎の物体を撫でまわす。

 冬の寒気をうけシンと冷え切ったそれは、ピタリと肌に吸い付くような心地よい質感をしており、弾力があり指で押すとフニフニと形を変えた。


「さっきからどこ触ってんのよっ!!!!!!!」


 雷鳴のような怒声と脳天に走る衝撃に目を開けると、天井を見上げるミナトの視線とミナトを見下ろすエルムの視線が交差する。


「エルム!?いつからいたの!!??」


「貴方が天幕に戻ってきた時からいたんだけど!?なんなら声だってかけたんだから。疲れて気づかなかったみたいだから、私が特別に気を遣って静かにしててあげたのに、偶然を装って煩悩を満たすための擬態だったのね!!心配して損した、これだから全身海綿体は苦手なのよ」


「………心配して来てくれたんだね、ありがとう」


「はぁ!?その格好でしおらしくされても気持ち悪いんだけど!!だいたい、私の意志で来たわけじゃないから。なんか順番で夜伽に行くんだって言われたから、仕方なくするフリだけしに来たわけ。………そういう事はしないからね、絶~対っ!!!!!!!」


「リオに言われたの?止めるようお願いしたんだけど、前向きに検討する方向で調整することをお約束するとしか言ってなかったかも………あぁ、ゴメン、起きるよ」


 ミナトはいまの体勢がちょうど膝枕をして貰っている状態になっていることに気づき、身体を起こそうとするが、エルムに頬を両手で摘ままれグイと太ももに押しつけられる。


「疲れてるんでしょ、別にそのままで構わないわ。あんまり離れてると、後からちゃんと夜伽したのかって問い詰められた時に面倒だし………それに神代のエルフたる私と対等の目線で話そうってのがおこがましいのよ。私が頭を見下ろすくらいが正しい関係性ってやつなわけ」


「………ありがとう、じゃあ、お言葉に甘えてこのままでいようかな」


 ミナトはエルムの剣幕に気圧されるように、再び身体から力を抜いた。

 長い戦いを終え疲れ切った少年と少女の間で、長い夜が今始まろうとしていた。

面白かった、これからも読みたい、AI先生による絵が可愛いと思った方は是非、☆評価、ブックマーク、感想等をお願いいたします!!

基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。

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