神を試す者
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……………
「一応聞かれてるわけだし、反応くらいしてあげた方が良いんじゃない?返事待ちしてる感じだし」
「んっ、そっちが答えた方がインパクトある」
「私が答えると色々不味いでしょ。それに貴方がメインっぽく登場したわけだし。この時計が主役なわけでしょ?」
アルベラが椅子代わりにしている大時計をポンポンと叩くと、リオは思い出したかのように指先に視線を移し、止まったままの秒針をつつく。
「………我が最高位魔法『終焉の大時計』を力ずくで止めるだと!?貴様、いったい何者だ!!」
「ほらっ、わざわざ分かり易く言い直してくれたわけだし、無視するのも可哀想でしょ」
「りょ。………私は………我が名はリオ………終焉を、凄い知ってる……黄泉とかに詳しい………支配者、闇の支配者、時空に………時空の支配者。めっちゃ諸々司ってる………ガイド的なやつ………そう、案内人、終焉のツアーコンダクター」
「いや、思いつかないなら無理矢理カッコよくしなくて良いからね!?だいたい敵なんだから律儀に付き合う必要ないから!!」
「くっ、我を愚弄するか!!終焉の大時計よ、我が声に応え全ての命を終わりへと導け!!!」
ジザの叫びに大時計が振り子を揺らし、陰鬱なメロディーを奏でる。
「んっ、耳元でうるさい。叩けば止まる?」
「愚かなっ!!死を具現化した存在が力による妨害で止まるとでも思うか!?」
「指一本で止まってるけど、それは突っ込まないお約束ね。とにかく針が進むと即死魔法が発動する仕掛けなわけだし、そこにだけ気をつければ何したって大丈夫なんじゃない?」
アルベラの言葉を受け、リオは顎に手を当て僅かに首を捻ると、何か閃いたのかポンと手を叩くと、秒針を逆回転させる。
「ちょお!!!!!おまっ、バカ、やめろォ!!!!取り返しがつかなくなるぞ!!死は不可逆、死者が蘇らないように、秒針が頂点を超え巻き戻ると………………って、アーーーーーーーッ!!!!!!!」
リオのか細い指が秒針をグイッと一気に5回転させる。
「オマケにもう5回転。うーん、スムーズに回っておりますなぁ」
「回し過ぎじゃない?まっ、あの骸骨が焦ってるの面白いからいいけど」
秒針から指を離すと、大時計の振り子がけたたましく鳴り響き時針、分針、秒針が無秩序に動き出す。
「故障?サポセンにクレーム案件」
「………終わりだ………世界が死に覆われる………おおっ、許したまえ主よ、これは我が意志ではないのです!!この愚かな人間どもがっ、裁きを与えるならば此奴らにっ!!」
ジザは地面に跪き、許しを乞う。
死者が生を願い首を垂れる姿は、滑稽であり、悲愴であった。
『神をためしてはならない』
微かな、しかし、脳内に直接語りかけるような優しい女性の声が幾重にも反響する。
「主よ!!おおっ、その御業によりこの者を…………」
空が瞬時に曇天に代わり、灰色の渦の中心からキラキラとした光の粒が降り注ぐ。
「そんな、私は超越者として主のお役に…………」
『神をためしてはならない』
光の粒が明滅する槍となりジザを貫き、骨が崩れ砂へと変わっていく。
『すべてに安らぎを 苦しみなき世界を』
一人の超越者の身体が完璧に砂となり土に還ると、灰色の雲は消え去り、再び世界に色が戻る。
終焉の大時計もいつの間にか姿を消し、腰かけていたアルベラは地面に尻餅をつき顔をしかめている。
「なんか死んだ」
「………助かったんだよね?ありがとう、リオ、今回ばかりはダメかと思ったよ」
ミナトはリオに駆け寄ると、緊張が解けたのかヘナヘナと倒れ込み、抱きとめられた。
「とりあえずは大団円ってところかしら」
アルベラはとりあえずという部分を強調した。
リオとアルベラというシンギフ王国最大戦力不在時に現れたアンデッドの軍勢、それを率いていた超越者の存在、そして超越者すら罰することの出来る神を自称する何か、アルベラに問いかけた少女………すべてが一つの線で繋がっているのだとすれば、よりあわさった糸が示すものは何なのか。
アルベラは自嘲気味に笑うと、リオと共にミナトを支え、城門へと歩きだした。
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