石竜
「グアァァァァアアッ!!!」
地獄の蓋が開いたかのような断末魔が一帯に響き渡る。
スケルトンが、ゾンビが、リビングメイルが、ロッティングコープスが、ヘルハウンドが、そしてトロールゾンビが次々と宙を舞う。
城壁ほどの高さはあろうかという膨れ上がった巨大な土の繭から粘度の高い泥の触手が伸び、近くにいるアンデッドを捉え、子どもがぬいぐるみを扱うような無邪気さで空中を上下左右に乱雑に振り回す。
純粋なまでの圧倒的な暴力によりアンデッドの身体は瞬く間に砕け、肉片や骨片が大地に降り注ぐ。
それはまさに地獄絵図と呼ぶに相応しい光景であり、ミナトは未だ靄のかかった意識の中で、目の前で起こっている幸運とも惨状ともいえる現状について思考を巡らせる。
「なんなのよ、これ!!新手の敵、それとも味方!?」
「う〜ん、敵を攻撃してるわけだから、敵の敵は味方的な?でも、あんまりお友達にはなりたくない雰囲気してるよね〜、ネチョネチョしてそうだし」
「なに呑気に言ってるのよ!!あの化け物がこっちに来る前にサッサと逃げるわよ………………キャーーーーーーーーッ!!!!」
「エルム!!」
無数に伸びる触手の一本がエルムの身体に巻きつき、目にも止まらぬ速さで土の繭まで引き寄せられる。
「なんなの、やめなさい!!」
「大丈夫〜?それが生き物だったら、口がパカっと開いて一呑みにする展開だと思うから、気をつけてね〜」
「どう気をつけろって言うの、誰か早く助けなさいよ!!毒、そう、神代のエルフには毒があるわよ、食べたら神経がグズグズに溶けて死ぬんだからね!?むしろ触れるだけでも死ぬんだけど!!だから放しなさいってば!!キャーーーーーーーーッ!!!!!」
拘束から逃れるために思いついた言葉を手当たり次第に口にするが、土の繭は言語を理解しないのか、それとも程度の低い朝を見破っているのか、触手を緩めることなくエルムをポンと繭の一番上に置いた。
二本の触手が何かを訴えかけるようにエルムの鼻先でうねうねと動き、そのうちの一本が形を変える。 それはまるで椅子のような形状をしており、残った触手がエルムの手を引き強引に座らせた。
「………この状況なんなのよ!?誰か説明しなさいよ!!」
「あのさ〜、念のため質問するんだけど、さっき真言でどんな魔法唱えたの〜??」
「簡単よ、貴方の石蛇があまりにみすぼらしかったから、神代のエルフたる私が見本として石竜を召喚してあげたの。まっ、色々妨害があったせいで失敗………途中で呼ぶのをやめたんだけど」
「石竜にはどんな命令したの~?」
「考えなくても分かるでしょ、アンデッドを全部倒せっていう条件をつけて召喚する予定だったわ。実在する竜を転移させるわけじゃなくて、真言で石に命をかけて吹き込むわけだから、実際には周囲の動く物をぜんぶ壊しなさいくらいの単純な指示しか出来ないけどね」
「なるほど〜」
アンデッドが空を彩る異常な空間の中で、その場に居合わせたすべての人間が何かに気づいたかのようにジト目でエルムを見る。
「なっ、なによ、言いたいことがあるなら、はっきり言いなさいよ」
「エルム、話に割って入って申し訳ないんだけど、いま乗ってるそれが真言で召喚した石竜じゃないかな」
「………………はぁ、バカにしてるの!?私の召喚魔法で顕現した石竜がこんな不細工な土の塊のわけないでしょ!!」
エルムが顔を真っ赤にして否定すると敵を拘束していた触手が急速に萎み、アンデッド達を地面にポイと投げ捨て土の繭の中へと戻っていく。
突然解放された死者達は何が起こったのか理解できない様子であるが、やがて自らに課せられた使命を思い出したのか、再び城壁に向かい動き出す。
「エルム!!怒ってるから、呼ばれた来たのに扱いが雑で怒ってるから!!褒めて、褒めて伸ばして!!」
「えっ、私が………これを??」
エルムは恐る恐る椅子の形に折りたたまれた触手を撫でる。
すると、触手は歓喜するようにビクンと脈打ち、もっとかまえと言わんばかりにエルムの目の前で踊るように蠢いた。
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