総攻撃
「ちょっと、勝手に敵がこっち来てるわ、聞いてない!!聞いてないんだけど!!」
エルムは動き出した敵勢を指差しながら、ルーナの腕を掴みブンブンと上下に振る。
「だから、許可取ってから攻めてくる敵ってレアだと思うよ〜。だけど2人が戻ってくるまで私達で何とかしないとね〜、一応任されてるわけだし?でも私さっきので魔力残ってないんだよね」
「あんなしょぼくれた虚仮威し程度で魔力が枯渇したわけ!?やっぱりナーガって劣等種だわ、期待して損した」
「それヘイトスピーチだよ、リオっちが言ってた。エルムっちには秘策ないの〜?このままだと城壁突破されちゃうよ。あっ、見て見て、あの子が一番乗りだ」
ルーナが櫓から身を乗り出し視線を落とすと、最前衛のスケルトンが城壁に手をかけ、骨を鳴らしながら登ってくるのが見える。
「ちょっ!!なに呑気に言ってんのよ!!早くっ、早くなんとかしなさいよっ!!」
「他人任せよくないよ〜。う〜ん、とりあえず………えいっ」
スケルトンの手が櫓にかかった瞬間、ルーナの尾が鞭の如くしなり、凄まじい速度で腕を砕く。
「グオオッ………」
腕を失ったスケルトンは後続を巻き込みながら地面に落下し、バラバラに砕け散った。
「蛇女やるじゃない!!このまま登ってくる敵全部叩き落としなさい!!」
「ここに来る子達なら頑張れるけど、他の場所を登ってくる子達には届かないかな〜。ほら〜、もう城壁越えた子もいるし」
ルーナの視線をエルムが追うと、城壁を踏破し内側の通路でキョロキョロと敵を探すスケルトンが視界に入る。
不意にスケルトンがこちらを向き、ポッカリと空いた眼窩がエルムを捉えると、生者が発する命の香りに引き寄せられるように駆け出す。
「来る来る来る来るからっ!!!わあぁぁぁぁあ、まってまって、向こう行きなさいよ!!!」
バキリ
エルムが目を瞑り振り回した杖がスケルトンの首を捉え、支えを失った頭部が宙を舞いスポリとエルムの腕の中に収まった。
「えっ?……………ッッッッ!!!!!」
声にならない悲鳴と共に、肉体を失った頭部が放物線を描き、下にいるゾンビに直撃する。
「ストライク〜ってやつ?でも状況は絶望的かも〜、本隊が城壁にたどり着いちゃったみたいだし」
ルーナが言い終わるよりも先に、櫓がグラリと大きく前後に揺れ、エルムは激しく尻餅をつく。
「いった〜いっ!!何が起きたのよ!!」
「城壁にダイレクトアタックされてるっぽいね。遠距離攻撃無効化の魔法じゃ直接攻撃は防げないみたい。積み重なった仲間を足場にドンドン登ってきてるし、もう持たないかも?う〜ん、ココは私が防ぐから、エルムっちは逃げて的な?絶対後から合流するから安心して的な?」
「それ絶対死ぬやつじゃない!!神代のエルフが劣等種に助けられるなんて屈辱、耐えられるわけないでしょ。貴方こそサッサと尻尾巻いて逃げなさい!!私だけならなんの問題もないから」
「おお〜、ちょっと感動的なシーンな気がする。リオっちが良く言う映画化決定みたいな?でも運が向いてきたよ、ほらっ、主役の登場〜」
揺れが収まり、エルムは再び下で何が起こっているか確認する。
「エルム!!ルーナ!!遅くなってゴメン!!」
そこには僅かな歩兵や騎兵と共に、城壁に群がるアンデッドを切り伏せていくミナトの姿があった。
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