建国
「神託の勇者ミナトに問う。貴公はなぜ国を望む。国がなければアルベラを封印出来ぬというのは誠か」
王は低く重くはっきりと、一つ一つ確かめるように問いかける。
(ボクが国を望む理由?そんなものない。国なんていらない。ハーレムだって欲しくない………全然いらないと言えば噓になるけど、基本はいらない。………ちょっと欲しいけど、そこまでじゃない。積極的に作るほどじゃない。あれば嬉しいな~くらいだ。それなら国なんていらない。王様のいう通り、形だけ貴族になって、アルベラを封印したことにして、これまで通り冒険をして、人を助けて………それでも助けられない人がいて、泣く人がたくさんいて………)
(もし、これまでのボクが救えない人も助けられるなら、多くの人を助けられる国が作れるなら、ボクは王様になりたい………リオの夢も叶えたい、ハーレムもやっぱり欲しい!!誰よりも良い国を作って、六大魔公が出たら全員返り討ちにして、平和な世界を作って、そんな夢みたいな、あり得ないくらい幸せな世界を作りたい!!)
(異世界くらい、誰も泣かない、最高にハッピーエンドで、ビックリするくらいお花畑な、そんな世界にしたい!!)
「………余の提案を承諾すると受け取ってよいか」
(ダメだ、ボクは王になる!!なら、ボクが言うべき事は………)
「悪魔が………悪魔に言うことを聞かせる為には、契約が必要なんです。悪魔にとって言葉は魔法と同義だから。彼らは魔法を使うのと同時に、魔法に縛られているんです」
(嘘をつくなら堂々と、自分は絶対に正しいのだと思い込め)
「アルベラは六大魔公。そう六大魔公は公爵であり、本来彼らの上には魔王がいます」
「魔王だと!?そんな物は伝承にも聞いたことがないぞ!!」
「よい、続けたまえ」
ミナトは異を唱える神官を一瞥することもなく、真っすぐと王を見据える。
「ボクは神の啓示を受けた際に、この世界の真の歴史を知りました。古の神々と魔王の壮絶な死闘の歴史、それが故に主人を失った六大魔公の弱点を」
「『神託の勇者』は六大魔公を倒すために神によって生み出された存在。でも、悪魔は無限の世界の住人です。有限の世界に生きるボク達とは住む世界が違う。彼らをただ倒すだけでは、いずれ復活し、いつしか世界は滅びの運命を辿ります。無限は永遠、有限には限りがあるからです」
「なら、彼らを屈服させうる神の奇跡を持ったボクが、六大魔公の主となったら?主人として悪魔を完全に無限から引きずり出し、有限の世界で彼らを殺すことで永遠に消滅させることが出来ます」
ミナトの言葉には一切の淀みはなく、感情の高ぶりも、欺瞞ゆえの後ろめたさもない。
「アルベラを、六大魔公を永遠に消し去るために、ボクは王にならなければなりません。ジェベル王国を救うために、そして世界を救うために。もちろん、ただ国という枠組を設けるだけでは、契約は完成しません。人の人との契約に信義が必要なように、人と悪魔の契約であっても実がなければ虚と見なされ、主従関係は成立しないんです。人を集め、土地を耕し、民を慈しみ、六大魔公を心服させられる豊かな国を作ってこそ、真なる盟約は成るんです」
途方もなく大きな嘘に、わずかな真実を混ぜ込んだ演説は、まるで予め定められた運命に沿い告げられる神託であるかのように、耳にする者の心を溶かしていった。
「………話は分かった。貴公が王となり、アルベラを国という檻に閉じ込めることで、真なる盟約は完成するというわけだな。そして、国が富み栄える事で、王として六大魔公を永久に断罪しうると………。最後にジェベル王ジグムンド3世が神託の勇者ミナトに問おう。貴公の言葉に嘘偽りはなく、全てがジェベル王国民のため、ひいては世界を守るためであると誓えるか」
「愚問。当然ミナトは………」
「誓います。ボクは六大魔公の暴虐に苦しむ無辜の人々のために王となり、必ず打ち倒して見せます」
静かな、しかし、確かな決意。
同時にミナトの頭上に喝采が降り注ぐ。市民が打ち鳴らす拍手は、新たな国の誕生を祝う鐘の音であるかのようだった。
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基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。
私はハーレムとかいらないです。別に自分から求めたりしません。どうしてもと言われれば、あっても良いかな程度です。
………嘘です、大好きです、超欲しいです。