胸騒ぎ
「んっ、おつおつ」
周囲を覆っていた濃い霧が晴れると、膝を抱え体育座りをしているリオが片手をあげアルベラを出迎える。既に少女の姿はなく、まるで先ほどまでの出来事が幻であったかのような平穏な世界が広がっている。
「案外簡単に戻ってこれたわね、何がしたかったのかしら………貴方も転移させられてたの?」
「多分恐らくきっとそう」
「何よそれ、どうやって戻ってきたのよ」
「んっ」
リオはポシェットからゴブホリボルグを取り出し、自慢げに掲げる。
「まさか術者を殺して出てきたとか言うつもり?」
「なんかやたらと周りが白かったから空間を掘って出てきた。ゴブホリボルグにかかればこの世に掘れぬ物はなし」
「転移術式を物理的に破壊したってこと!?呆れた、相変わらず無茶苦茶するわね。アタシみたいにスマートに解決出来ないわけ??」
「力こそパワー。パワーーーーッ!!!………………聞いて欲しそうだから特別に質問する。ユーはどうやってこの場所に?」
リオはほのかに頬を紅潮させながら、心底興味無さそうに問いかける。
「アタシ達を転移させた物好きの質問に答えただけ。貴方は会わなかったの?10歳位の女の子」
「女の子?………どんな顔?服装は?何か言ってた?」
リオはいつも通りの無表情で問いかける。
その声色も、その面持ちも、その口調も、どれもが一部の隙もなくリオそのものであることが、アルベラに強烈な違和感を与えた。
「………顔のない子ども。服装も輪郭も存在さえも全ての境界が霧でぼやけていたわ。まるでいるべき世界が異なるようにね………。その子はアタシにただ『分からない』って言っていた。自分がどうして生まれてきたのか、なんのためにここにいるのか、なにをするべきなのか、なぜ作られたのか。それが分からないってね」
「顔のない子ども………」
リオは答えを最後まで聞く前に馬に跨り、手綱を引き絞る。
「あらどうしたの、随分焦ってるじゃない。何か心当たりでもあるの?………………いえ、最初からアレに会うのが目的だったってとこかしら」
「ミナトが危ない」
リオはアルベラを一瞥することもなく、うわごとのように呟く。
「………理由を聞いても答える気はなさそうね」
「戻る、今すぐに」
馬は手綱を通し伝わる感情の濁流に怯え、背に乗る得体の知れない何かを振り落とさんと必死に暴れ回る。
「貴方の呪符で転移できないの?ジェベル王国の王都に行く時に使っていたでしょ」
「………アレはしばらく使えない」
「ならアタシの魔法で近くまで転移しましょう。魔法陣もなしの感覚頼りの転移となると、どこまで座標を近づけられるか自信はないけど、このまま馬で向かうよりかは早いわ。いいわね」
リオは振り返ることなく、僅かに頭を縦に振る。
次の瞬間、二人は光の粒に包まれ、アルベラにより開かれた異空へと消えていった。
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