二人旅
「ひとつ聞きたいんだけど、どういう理屈でアタシと貴方の二人旅になるのよ」
「んっ、恥ずかしがらないでOK。初期メンとしてたまには水入らずでガールズトークをすべき」
「………はぁ、こんな事なら強引にミナトを連れてくるべきだったわ」
アルベラは馬上で大きなため息をつく。
周りを見回してもミナトを始め他の仲間の姿はなく、正座の状態で馬に曲乗りをするリオだけが無表情で轡を並べている。
「疑ってるなら申し訳ないんだけど、今回の件はアタシは関係ないわよ。ステラはああ言ってたけど、どうせカロ陥落に怯えた村人が作った幻影でしょ。だいたい、こんな田舎も田舎、ド田舎に上位悪魔なんているわけないわ。下位悪魔ならともかく、上位悪魔はアタシでも召喚するのに多少なりとも魔力を必要とするの。ましてや、これだけ距離が離れてればそれを維持するための魔力も馬鹿にならないわ。コストに見合った成果を得られないような愚行、腕のたつ術者がすると思う?」
アルベラはステラの言葉を思い返す。
「最後の村の周りにはなんか激強い悪魔がいるらしくて、超ヤバいらしいから、マジ気を付けた方がいいらしいよって、村の長老が言ってたのを聞いた子がいるらしいって、友達の友達がすっごく噂してたしぃ」
再び地を這うような深いため息が平原の草木を揺らした。
ステラの話を総合すると、上位悪魔が村の外れに出現したというシンプルな内容になるのだが、それ故にその噂はアルベラによって飾り付けられた大量のクエスチョンマークによって彩られていた。
「エクリウスとかいうのは神殿に籠って軍隊作ってた」
「報告にあった魔法詠唱者ね。そいつが何者かは知らないけど、転移魔法を操れるほどの術者でも、使役していたのは小鬼とか緑竜だったわけでしょ。前にも言ったけど、アタシを含め悪魔はこの世界に実像を結ぶだけでも大量の魔力を消耗するの。だから使役するにしても実体を持ってるゴブリンとかオーガが便利なわけ。実体がある亜人とか魔物は増えるのに時間がかかるってデメリットはあるけど、優れた術者なら寿命を延ばすくらいわけないし、時間は幾らでもあるもの。悪魔召喚は貴方が言うところのコスパが悪い道具なわけ」
「コスパが悪くても成し遂げたい目的があるパターン」
「こんな田舎で?ジェベル王国とかゴドルフィン帝国を攻略する拠点にするにしても、こんな辺鄙な場所選ばないでしょ………完璧に冤罪ね。貴方もステラの話に出てきた少女ってのがアタシだと思ってるわけでしょ?」
「………そう、ちょっと怪しい。ミナトが隙を見せた瞬間後ろからブスっとやる典型的な小悪党臭がする。たぶん村の近くに上位悪魔の軍隊がいて、一斉に襲ってくるはず」
アルベラは今日三度目のため息をつき、ジト目でリオをねめつける。
「上位悪魔なんて、千いようが万いようが貴方相手じゃ時間稼ぎにもならないでしょ。苦労してまでそんな事する間抜けがどこに………」
不意に肌を刺すような冷気を感じ、アルベラは手綱を引き絞る。
この世のものならぬ気配に恐慌状態に陥る馬を魔法で眠らせると、幽世から吹き込んでくるようなどこか懐かしい空気に、アルベラは身体中の細胞が活性化し血液が歓喜に踊るような感覚を覚えた。
「リオ、さっきの話は忘れて頂戴、どうやら貴方の見込みが当たってたみたい………………リオ?」
問いは虚しく霧のなかに吸い込まれていく。
いつの間にか辺りは数十メートル先を見渡すのも難しいほどの濃霧に覆われ、その白く細かな粒子がこの世の振動をすべて喰らい尽くしているかのように、いつ終わるとも知れない静寂だけが場を支配していた。
面白かった、これからも読みたい、AI先生による絵が可愛いと思った方は是非、☆評価、ブックマーク、感想等をお願いいたします!!
基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。




