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異世界ハーレムは義務です~0からはじめる建国物語~  作者: 碧い月


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最後の村

「えっ〜と、ウチらの村がこの場所なんだよね。それで、一昨日案内したとこがココだからぁ………多分この奥にある村で最後かな」


 ステラは広げられた地図を前に、ここ数日の記憶と自らの知識を照らし合わせ、ある一点を指し示す。

 同時に天幕の入り口が大きく開き、デボラが顔を覗かせた。


「ミナト、砦の村から移住者の第一陣が来たぜ。あの時はいけると思ったんだが、聞いてた以上に人数が多いな。あの爺、適当なこと言いやがって。ありゃ東9区に入りきるかは微妙だぞ」


 デボラは国境付近の地図の横に王都の都市計画図を広げ、空白となっている区画を指さす。

 図はミナトの天幕を中心に、今後敷設する予定の道路やそれにより分割された区画が大まかに描かれている。

 空白には方角とミナトの座所から近い順に振られた番号をもって地番が当てられており、地番をいうだけで大体の位置関係が把握できるような工夫がなされている。


 一区画は概ね50人程度が住めるスペースが確保されているが、ミナトとやり取りをすることの多い重臣の天幕や食料庫、浄水場といった都市機能の維持に不可欠な施設、またシンギフ王国の主な収入源である酒場などに適した場所を割り振っていく中で、どうしても区画に大小や使い勝手の差が生まれているのだ。


 将来的な都市機能を考慮すれば、政庁となるであろうミナトの天幕周辺は空白地帯として確保すべきであるとアルベラやエルムは主張したが、数少ない人口が分散することによる作業効率の低下、そして何より王であるミナトが少しでも国民の生活を身近に感じたいという希望があり、移住者にも王都の中心にほど近い区画が割り振られていた。


「分かりました、それなら村がちゃんと一区内で収まるよう東の第6か第5区を当ててください」


「いいの?そこまで近いと将来的に王宮の建設範囲に飲み込まれるかもしれないわよ。1~7区までは簡単に移動させられる行政関係者で埋めた方がいいと思うけど」


「大丈夫だよ、そんな大きな宮殿を建てる気はないから。自分の生まれ育った村を捨てて王都に移住することを決めてくれたんだ。同じ村の人と離れて暮らす不安とか、誰もいない町の外れでの疎外感とか………そういった思いをしてほしくないんだ。王都での暮らしが落ち着いたら、改めてどこに住みたいか聞いてもいいしね………ゴメンよ、国のことを考えて差配してくれてるのに、ボクのワガママで仕事を増やしちゃって」


「あらっ、謝られると寂しいわ。アタシはミナトのために働いてるんだもの、我儘のひとつくらい言ってくれないと張り合いがないでしょ。区割りが既得権益にならないよう、最低限の取り決めを交わしておくけどいいかしら」


「ありがとう、細かいことはアルベラに任せるよ」


 アルベラは口角に微かな笑みを残すと、一枚の書状をしたためデボラに手渡す。


「んっ、それより今すぐに最後の村を解放しに行くべき。コンプリートで実績が解除されて、次のミッションが解放されるはず」


「また訳の分からないこと言って。だけど鉄は熱いうちに打てとも言うし、アタシも賛成。移住の時期にあまりに時間差があると、それがそのまま格差に繋がる可能性があるしね。タイミングを合わせられるなら、それに越したことはないから」


「よしっ、じゃあ早速出発するよ。今日はボクとリオだけで行ってこようかな。だいぶ勝手が分かってきたし、移住を決めてくれた村の村長さん達から預かってる書状もあるから心強いよ」


 ミナトは引き出しから3枚の羊皮紙を取り出す。

 国境沿いの村々は連携とまではいかないものの、カロの陥落以前は相互に情報交換を行っており、一部では互いの村から嫁を貰い血縁関係を結ぶことで紐帯を強めていた。

 そのような経緯もあり、近隣の村からの書状は、不安に心を閉ざす彼らの気持ちを和らげるのに大いに役立っているのだ。


 今では話も聞かずミナト達を追い返す村も少なくなり、すぐに移住の決断に至らなかった村に対してもカロ陥落以降に起こった一連の出来事や王都での移住者の生活の様子を伝え、判断を委ねている。

 王都の人口は順調に増え、王国の運営もようやく軌道に乗ってきたこともあり、ミナトの表情も明るく、その小さな身体には王としての威厳が芽生えていた。


「あっ、待ってだしぃ。その村を最後にしたのは理由があるの」


「理由?」


「うん、それがね………」


 ステラは少し気まずそうにミナト達に事情を話し始めた。

 何気ないこのやり取りが、シンギフ王国始まって以来の危難を告げる鐘の音であることを、この時のミナトは知る由もなかった。

面白かった、これからも読みたい、AI先生による絵が可愛いと思った方は是非、☆評価、ブックマーク、感想等をお願いいたします!!

基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。

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