メイド服は鎧に似ている
「きゃ~!!!これミナトの趣味なの!?エロすぎるしぃ!!」
王都に黄色い悲鳴が響きわたる。
「ミナト様、お帰りなさいませ。この度はまたまたまたまたまたまたまたまたまたまた沢山の若い女性をお持ち帰りのこと、誠に誠に誠に誠に誠にお喜び申し上げます」
長い耳を持つ少女達が真新しい衣装を身にまとい、互いに裾を引っ張り合ってははしゃぎ回る一方で、アルシェは王都に帰還した主人をゼロ距離で出迎えていた。
「た、ただいまアルシェ。ルーナが言ってた通りに探したら本当に見つかって、ボク達に協力してくれることになったんだ。ほ、ほらっ、ずっと人手不足で大変だったでしょ。給仕の経験はないみたいだから、教える立場のアルシェが大変なんだけど、仕事への意欲は凄いし、きっと戦力になってくれるはずだよ」
「お心遣い感謝申し上げます。視界に入る女性は余さず持ち帰らないと気が済まないミナト様の習性を考慮しても、新しく迎えるのは一人二人だと思っておりましたので、まさかダース単位で口説き落としてくるとは想定外も想定外、望外の喜びです。わ~い、嬉しいな~」
半歩前に踏み出せば唇が触れそうな距離でアルシェは一切表情を変えることなく、魔法を高速詠唱するようなスピードでミナトへの感謝と自らの歓喜を言葉にしていく。
「んっ、アルシェが嬉しそうで何より」
「アタシと貴方なにか違う世界が見えてたりする?まっ、うちの大給仕長の御機嫌はともかく、人が増えたのは好材料ね。これで相当な人数を家庭に戻せるし、休みを取ることも出来るもの。流石ミナトね、女をひっかけることに関しては右の出るものがいないわ」
アルベラは腕を組み、ミナトが連れ帰ったラビットマンを数えあげる。
王都に同行したラビットマンは約30人。
なぜ『約』という言葉がつくかというと、村を出たまではいいものの途中で用事を思い出して戻ったり、初めは村に残ろうとしたものの突如気分が変わりついてくるなど、移住の段階ですら人数の変動が激しく、自称リーダーであるステラもその事を全く気にしていないため、その場その場で一人ずつ目で追うしか人数を把握する術がないためである。
「兎人ってのは本能が赴くままに行動するから嫌ね。どうせ、あっちの方も肉欲のままに即本番しちゃうから際限なく増えてくんでしょ、あー、やだやだ、ほんっと性欲の塊みたいね、存在が卑猥だわ」
「無理なタイプのエルフに言われたくない件」
「あ~、ウチらのこと放って身内で盛り上がってる~。そういうの良くないしぃ~。自己紹介するね、ウチはステラ、人間で言うところのラビットマンってやつだよ。ウチら超接客得意だし、任せてくれればあっという間に売り上げ100倍だよ。そこの暗い獣人の子は厨房に籠ってていいから、安心してね」
ステラが目の横でピシッと裏ピースを決めると、一緒に王都に来たラビットマンの少女達も一斉に決めポーズをする。
「………チッ。それは大変…チッ。心強いです……チッ。とても尻が軽そう………いえ、フットワークと頭が軽そうで頼りになります………チッ。とりあえず、そのなんの商売をするつもりなのか分からない服を脱ぎ捨てて、最低限の品性と知性を感じさせる衣服に着替えることをオススメします…………チッ!!」
「アルシェ、舌打ちと一緒に色々本音漏れてるから!!」
「え~、やだ~。ミナトにこれ着て働いてって言われたしぃ。うちなんて、目の前で着替えたんだよ。ね~、ミナト」
ステラはアルシェとミナトの間にひょいと割って入ると、ミナトの頭を抱えるように抱きしめギュッと胸に押しつける。
「はぁ!?いくら下半身でしか物を考えないミナト様といえど、初対面の女性相手にそこまでド直球なセクハラをするはずがありません」
「んっ、ほのかに主人をディスっていくスタイル」
「今のように程度の低い誘惑でたぶらかそうとしたのかと思われますが、深夜に女性と自室で二人きりになっても手を出さないほどの鉄の意志を持ったミナト様が、獣臭い兎如きに身体で欲情するはずが………」
わずかな沈黙、のちに静寂。
アルシェの視線が、アルベラの視線が、リオの視線が、エルムの視線が、周囲の少女達の視線が、一点に集中する。
そこにはステラの持つ双丘の柔らかな感触に反応し屹立した、もう一人のミナトの姿があった。
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