ラビット大集合
ステラにより村の集会場に招かれたミナトは、少女達から過剰なまでの歓待を受けながら席に着く。
集会場は村でも一際巨大な古木をくり抜かれ作られており、ミナトの天幕と同じほどのスペースに数十人ほどが集まれるだけの机と椅子が置かれている。
兎人の少女達はその広いスペースを埋め尽くすようにミナトに群がり、古木は重みに耐えかねるようにギシギシと悲鳴をあげる。
「こら~、みんなお客様で遊ばないだしぃ。お勧めのドリンクがあるから、座ってて」
椅子に腰かけると触れた部分が低反発マットレスのようにゆっくりと沈み込み、数十秒かけて身体を包み込むように形を変える。
表面はフカフカしており、触るとほのかな温もりがあり、座る者にこれまでに感じた事のない不思議な落ち着きをもたらす。
「珍しいでしょ~。それキノコなんだよ、多分」
「多分?」
「たまに動いたり鳴いたり何か食べてたりするんだよね~。ほら、普通のキノコって口とかついてないじゃん?」
「生きてるの、これ!?」
ミナトは思わず飛び上がると、座っていた部分が空気が満ちていくようにゆっくりと膨らんでいく。
「そんなに怖がんなくても大丈夫だしぃ。座るくらいなら全然問題ないから。でも、居眠りはしないほうが良いかも。ウチらの村って定期的に誰かいなくなるんだよね~」
「十分怖いから!!それにサラッと言っていいことじゃないからね!?」
「冗談だしぃ。はい、これウチらの村で流行ってるシュワシュワリンゴジュースだよ~。口の中ピリピリして美味しいし、飲むと頭がフワフワってして気持ち良いんだよ。グイっといっちゃって~」
ミナトは差し出されたアルコール臭のある白濁した飲み物に恐る恐る口をつける。
一口飲むと清涼感のある瑞々しい香りが口内に満ち、遅れて程よい酸味と甘みが、そして最後にガツンとした濃厚なアルコールと舌先を痺れさせる炭酸の刺激が現れる。
「へ~、なかなか美味しいじゃない。穴倉に住んでる野ウサギと変わらない文化水準かと思ったけど、姿を真似てるだけあって人みたいなことも出来るのね」
「褒められた~、でもウチこの耳の長いピンク色嫌いかも~」
「ミートゥー」
「なっ、なによ、獣の割にはよくやってるって認めてあげたのよ!?嬉しがるならともかく、逆恨みとかどういう倫理観してるのよ!!」
「ははっ、ゴメンね、エルムはちょっとだけ口が悪くてさ………それにさっきは罠にかけちゃって本当にゴメン!!話し合いたかったんだけど、いつの間にか捕まえる方向で話が進んじゃって………」
「いいのいいの、捕まる方が間抜けなだけだしぃ。それで、ミナトはなんでウチらを探してたの?分かった、捕まえて奴隷にしようとしてるんだ、可愛い顔して極悪人~」
ステラが爆笑しながらミナトの頬を指で突くと、周りを囲む少女達も一斉に笑い声をあげる。
「笑いのツボがエキセントリックすぎる」
「やっぱり脳味噌は兎くらいしか入ってないみたいね」
「………二人はちょっと静かにしててくれると助かるかな。えっと、ボク達の目的は二つある。一つ目は、この辺りにある人が住んでる村について教えて欲しいんだ。ラビットマンは人里と交流があるって聞くし、行動範囲も大きいから知ってるかなって」
「人の村?う~ん、外に遊びに行くのってほとんど男なんだよね~。ウチらみたいな若い女の子が人里に出ると、売り飛ばされて帰ってこれなくなるか、楽しくなって居ついちゃうかの二択みたいな?でも、なんとなく位置がわかる村は幾つかあるし、案内するよ。まだ住んでるかは分かんないけど」
「ありがとう、助かるよ!!目的の二つ目は、ちょっと頼みにくいお願いなんだけど………」
ミナトはバツの悪い表情を浮かべ、口ごもる。
「もう、ウチらの仲じゃん、そんな遠慮されると寂しいしぃ。なんでも言って」
「会ってから一時間も経ってない件」
「警戒心が強いって話なのに何で都市にあんなに兎人がいるのか不思議だったけど、いま理由が分かったわ。バカだからなのね、警戒心があろうがバカは勝るのね」
「二人とも!!………えっと、お願いしたいことって言うのは………」
ステラに耳打ちをすると、兎人の少女は潤んだ瞳でミナトを見つめ、恥ずかしそうに小さくコクリと頷いた。
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