兎人の少女
「きゃん!!………いった~い!!!ちょっとぉ、しっかりしてだしぃ」
魔法が切れ、地面に吸い込まれるように落ちた兎人の少女は、落下地点で待ち構えたミナトを圧し潰しながら不満をぶつける。
「んっ、既視感のある流れ。でも無理なタイプのエルフより嫌悪感がない不思議」
「はぁ!?私は罠くらい自分で解除して、華麗に舞い降りたんだけど!!」
「エルム、サラッと記憶捏造するのやめよう。………えっと、ゴメンね、怪我はない?」
ミナトは背中に乗る柔らかな感触に本能的に頬が緩むのを自制心により必死に引き締めつつ、少女の身体を気遣う。
「うん、大丈夫、ありがと。………キャー、無意識に罠仕掛けた犯罪者にお礼言っちゃったしぃ!!!!誰か助けて~~~~~~!!!!!皮剥かれて剥製にされるぅ~~~~~!!!!!!」
「平気平気、ジッとしてればすぐ終わるから、人生が。兎だからウサ生??」
「いや、しないからね、そんな野蛮な事!?落ち着いて、ボク達は君に聞きたいことがあるんだ………この状態で信じてって言うのが無理があるのは重々承知なんだけど………」
ミナトはうつ伏せの状態で首だけを少女に向け、笑顔を作る。
「………皮剥がない?」
「剝がない」
「焼き印は?」
「押さない」
「エッチなことは?」
「………………しない」
「いま間があったんだけど!?やっぱりこいつ等変態犯罪者だよぉ!!みんな、逃げてだしぃ!!!」
少女は森中に轟かんばかりの勢いで、命を振り絞るように絶叫する。
「いや、ほらっ、今のは………違うんだって!!二人もなんか言ってよ!!」
「流石はミナト、略してさすミナ。今日も『目指せ酒池肉林!!やるぜボク絶倫!!全世界全種族全制覇、どすけべハーレム王国の建国だウェイ!!』のために、もう脳内では事を始めてる」
「始めてないからね!?っていうか、脳内で頑張ってるだけなら、むしろ健全だよ!!」
「相変わらず全身海綿体ね。隙あらば私の身体を貪ろうと涎を垂らしながら、ガードが堅いと見るや頭も体も緩いラビットマンでチャチャっと済ませようとするなんて」
「ボクの悪口はいいんだけど巧みに種族ディス混ぜるのやめて!!ごめん、本当に違うんだよ、別に変なことする気なんてなくて………」
少女はミナトの言葉にピタリと抵抗を叫ぶのを止め、鼻先が触れるほどの距離でじっと何かを観察する。
「………タイプ」
「へっ?」
「ちゃんと見たらすっごい可愛いじゃん、超タイプ!!さっきからそこの二人に虐められてるよね??こんなブサブサなんか無視して、うちらの村に来ればいいしぃ!!みんなでハーレム作ろ!!」
「ブサブサ?」
リオは少女の言葉に首を90度ほど曲げ、悩んでいる風のポーズを取る。
「不細工×2って意味、自覚ないしぃ??鏡いるなら貸すよ???」
少女はミナトの身体を引き起こすとギュッと抱き寄せ頬をピタリとつけながら、なんの悪意もなく………それ故に最高の悪意となる一言を口にする。
「んっ、やっぱり皮剥いどく。剥製にしてシンギフ名物にする」
「仕方ないわね、私も手伝ってあげる」
「ちょっ!!待つしぃ!!冗談だから、冗談ッ!!キミもなんか言ってだしぃ!!」
少女は真顔で少しずつ距離を縮める二つの恐怖から逃れるように、一層力を込めてミナトを抱きしめた。ミナトは久々に自分の身に降りかかった正統派ハーレム物らしい展開に顔をほころばせ、自分の頬に当たる二つの柔らかな肉感に身を委ねた。
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