予期せぬ提案
「ふっ、一回やってみたかったんだよねえ、コレ」
地面に叩きつけた手袋に視線を落とし、エランが不敵に笑う。
その瞳には確かな決意と燃えるような闘志が静かな焔となって揺らめいている。
「エランさん、理由を聞かせてください。ボクには貴方と戦う理由がありません」
「理由、そんなものが必要かい?俺は決闘を申し込む、王はそれを受ける。決闘なんてそれだけじゃない」
「ボクには必要なんです」
ミナトはエランが全身から発する強烈な殺気を全身で受け止め、なお一歩も退くことなく答えた。
互いに武器に手をかけることはなく、けれど抜き身の刃よりも数倍激しい視線の剣撃を交わし合う。
「ふぅん、良い眼をしてるじゃない………分かったよ、君の勇気に免じて決闘については考えなおそう。王のところに連れて行ってくれないか」
「分かりました………………えっ??」
「どうしたんだい。ああ、そういう事か。確かにこんな夜に王に会おうとするのが無礼だ、それくらい理解しているさ、こう見えて俺も貴族だからね。しかし、この血の滾りと共に一夜を明かせってのも酷じゃない。君の立場もわかるが、取り次いで貰えるかい」
「あっ、いや、違くて、ボクがミナトです」
ミナトは動揺を隠しつつ、自分自身を指さす。
「ああ、すまない、ミナト。よろしく頼む」
「えっ………だから、王なんです、ボクが」
「んっ?ああ、王か。そう王だよ。王のところに連れていってくれ」
「えっと、その、ボクが王なんです。シンギフ王国の国王ミナト」
「それは聞いたよ、君が国王なんだろ?…………君が国王??」
エランが顎に手を当て、首を捻る。
「エーアリッヒ?………すまない、状況が飲み込めないんだが、ひょっとして君がシンギフ王国のミナト陛下なのかい?」
「だから、そうですって!!えっ、今まで気づいてなかったんですか!?さっきボクに手袋を投げつけて決闘を申し込んだじゃないですか!!」
「いやぁ、あれはこんな感じで決闘を申し込むんだぞっていう意気込みを示しただけじゃない」
「あんな演出されたら、最初からボクのこと国王だと知ってるパターンだと思いますよ!!なんだったんですか、あの意味深な物言いは!!」
「そんなこと言われてもねえ、英雄って奴はいつでも芝居がかってるものじゃない。すまない、頭を整理させてくれるかい。君が六大魔公を封印したというミナト陛下…………なるほど、全然イメージと違うねえ」
エランはミナトのツッコミに気恥ずかしそうな笑みを浮かべながら、ミナトを頭から足先までじっくりと眺める。
「んっ、だからさっき言った、単なるバカだって」
自身に向けられる冷ややかな視線を尻目に、エランは地面から手袋を拾い上げ土埃を丁寧に払うと、再びミナトの足元に叩きつける。
「こほんっ………シンギフ王国、ミナト陛下。ジェベル王国ラージバル伯爵が息子エランが決闘を申し込む!!受けてくれるかい??」
「いや、さっきの流れならともかく、この状況で受けませんけど!?だいたい、さっきボクに免じて決闘は考えなおそうって言ってたじゃないですか!!」
「ふっ、英雄と呼ばれる男が決闘の申し出を断るとは無様じゃない。俺の婚約者であるクルブレール侯に手を出しておいて、それは虫がいい話だと思わないかい?」
「クルブレール侯?」
「………シャルロッテのことだよ」
「シャルロッテ??」
「いや、流石にシャルロッテは覚えてるよね!?あぁ、もうメチャクチャだよ!!こういうのはさ、もっとさ、こう…………なんていうのかな………………とにかく、しっかりしましょうよ!!!!!」
「リオちゃん、君達の王様ストレス溜めこんでるのかい?怒りっぽいのは良くないじゃない」
「ミナトは雰囲気を重視したいタイプ。ロマン派男子。観覧車が一番高い位置に来た時に告白とかしちゃう系」
「なるほどねえ、言葉の意味はよく分からないけど、なんとなく同類の波動を感じるじゃない」
言葉に出来ない不満から腕をブンブンと振るミナトを、エランとリオは申し訳なさそうに見守っていた。
面白かった、これからも読みたい、AI先生による絵が可愛いと思った方は是非、☆評価、ブックマーク、感想等をお願いいたします!!
基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。




