人質×脱衣
「なんで脱いでるの!?」
リオはミナトの問いに少しだけ首を傾け考え込むと、何かに気づいたかのように脱ぎ進める。
「無言で脱ぎ進めないで!?っていうか、脱ぎ進めるって日本語初めて使ったよ!!なんの意図があって脱いでるの!!」
「兵法の極意とは敵の意表を突くことにあり。つまり旧日本軍並みに意外性以外考慮しない作戦を発動させれば勝利は容易。QED」
「敗戦一直線!!手本にする相手間違えてるから!!」
「でもかなり動揺してる」
ゴブリン達は遠巻きに起こっている怪現象を目の当たりにし、互いに顔を見合わせ、何やら小声で囁き合っている。そこには明確な動揺が見て取ることができ、相手の混乱を誘うという一点においては想定外の有用性があることを示していた。
「良かった。少年が気絶してなかったら、危険な性癖を植え付けるとこだった」
ミナトはツッコミを入れるべくリオの方に視線を送り、すぐに前に向き直る。
会話の間もたゆまず脱ぎ進めた結果、リオは既に下着のみを残すだけとなっており、夕日に照らされた美しい肢体は、たしかに少年の性癖を粉々にするのに十分な破壊力を持っていた。
「んっ、気軽に脱げる物がなくなった………上だけならOK?」
「いや、ダメだからね!!」
ミナトはブラのホックに指をかけるリオを想像しながら叫ぶ。
(不味い、これ以上リオに気を取られると身体の一部が動きを阻害しかねない。素数を数えつつ、どう助救い出すか考えるんだ。幸いゴブリン達の視線はリオに釘付けになってる。っていうか、本当に食い入るように見てるんだけど、上まで脱いだわけじゃないよね!?くっ、そんな姿イメージしてる場合じゃない。足元に置いた投げナイフは3本、今ならイケる!!!)
ミナトはスッと身体を屈め、ナイフを拾い上げ、腕を引く。
シュッ
空気を切り裂く投擲音が鼓膜を震わせ、数秒後にザクリと肉に刃物が突き刺さる鈍い音がそれを上書きし、3体のゴブリンがドサリと地面に倒れ込む。
「んっ、3枚抜き」
「よしっ、これで終わり………」
安堵の声をあげた刹那、地面から一つに影が浮かび上がるように一匹のゴブリンが立ち上がり、凄まじい敵意をもってミナトを睨みつける。
(しまった、ボク達が近づいてきたのを察知して、身体を伏せて茂みに隠れてた奴がいたのか!!ダメだ、間に合わないっ………)
ゴブリンが拾い上げた短剣を高らかに掲げ、人質の首に突き立てる。
「シュラークッ!!!!!」
錆びた刀身が皮膚を切り裂いた瞬間、雷鳴を思わせる咆哮が静寂を打ち払い、同時にゴブリンの身体を一本の槍が貫く。
「グート!!戻れ!!」
力強い男の声に導かれるようにゴブリンの身体を貫いた槍が独りでに動き出し、逆再生を思わせる動きで宙を舞う。
朱に染まった槍はそのままゴブリンの背後に広がる茂みに吸い込まれていった。
「魔法の投槍!?」
「そんなに驚いてくれるなんて、ド派手に決めた甲斐があるじゃない。少年、怪我はないか」
ガサリと草むらを掻き分け、一頭の立派な軍馬に跨った青年が姿を現す。
年の頃は二十歳程だろうか。癖の強いくすんだ金色の髪に、濃紺の瞳。ミナトより頭一個分は大きい長身を銀に輝く鎧で覆い、右手には先ほどの投槍を握っている。
目や鼻、口に顎、どれも大作りではあるものの均整がとれており、美男子であるといっても否定する者は稀だろう。
「助かりました、ありがとうございます」
「ビッテ。礼には及ばない、力無きものを救うのは英雄の本分。しかし、子どもがこんなところで何をしてたんだ。もう夜の帳が人の時間を飲み込む頃合い。闇は魔物と獣の領分、家まで送ろうじゃない、案内してくれないか…………んっ??」
男はミナトの背後に控える少女を視界に捉えると、しばし考えこみ、やがて再び口を開いた。
「本当に何をやっていたんだ!?」
血相を変え叫ぶ男に対し、リオは何も身に付けていない胸部を右腕で抑えながら首を傾げた。
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