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異世界ハーレムは義務です~0からはじめる建国物語~  作者: 碧い月


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失政の責任

「お〜い!!…………ダメだ、コッチにはいないみたいだ」


 日が傾き徐々に木々が地面に長く影を落とすなか、ミナトは城外で馬を駆り、一人の少年を探していた。 ミナトが更に数度呼びかけると、それに応えるように遠くから馬蹄の響きが近づき、レティとバイムトが駆けてくる。


「レティ、湿地の方はどうだった?」


「手がかりなし。でも、ぬかるみに足跡は無かったから、沼に落ちたって事は無さそう。この辺りにいるか、森の方に行った確率が高いと思う」


「森に入れば一層視界が狭くなり、少数での捜索は容易ではなくなる。人を増やすか?」


「そうしたいのはやまやまだけど、皆には城の近くを探してもらってるし、土地勘のない人間だと日が落ちたら二次遭難が起こるかもしれない。この辺りはまだゴブリンも出るし、狼や熊だってうろついてる。夜になる前にボク達で可能な限り探そう」


「そういう事なら私達ブレニムの民に任せて。ゴブリンや獣相手に後れを取るような軟弱者は一人もいないから。今日王都で野営する仲間に声をかけてみる。飲んだくれるのは迷子を見つけてからで遅くないしね」


「ありがとう、助かるよ。日が落ちたら、一旦ここで落ち合おう」


 レティは城内に、バイムトは森へと向かい、ミナトはリオと共にまだ捜索できていない平野部をしらみつぶしに当たっていく。

 火照った身体を冷たい空気が包み込み、口からは絶えず白い吐息が漏れる。


「ミナト、焦りすぎ。まだ6歳、そんな遠くは行けないし、お腹が空いたら帰ってくる」


「住み慣れた元の村ならともかく、来たばかりの場所なら一歩城門を出れば近場でも迷子になってもおかしくないよ。今回の件はボクの落ち度だ。こうなる可能性を考えるべきだったのに…」


 ミナトは奥歯を噛み締める。

 働き手を求め始めてから10日、交易再開から数えると20日の時を経ても、王都の賑わいはとどまることを知らなかった。

 帝国の陸上交易の拠点であるゼダーンとカラムーンを始めとする王国北部の主要都市は休みなしで移動するには遠く、温かな食事や好きなだけ酔えるほどの酒、ひとときの安らぎを求める商人の間で覇王都NOBUNAGAの存在は、その珍妙な名称も相まって瞬く間に広がっている。


 一方でその賑わいを支えるべく広く求めた働き手は、一向に増えることは無かった。

 ミナトがこっそりと内容を差し替えた月並みな求人書も商人を通じて各地に撒かれているため、そのうち反応はあるだろうと楽観視していたが、急に歴史の表舞台に現れた怪しげな新興国での仕事に身を投じる女性は中々現れない。


 ちなみに求人の予期せぬ副産物とも言える良からぬ噂を聞きつけ、商人がエルムやアルシェを始めとする見目麗しい女性達にそういったサービスを求める事案は後を絶たないが、説明をしてもなお食い下がるような輩に対してはデボラが肉体言語を用いた説得を行い、顔面についた青痣をもって下賤な噂を打ち消すことに成功しつつあった。


 今では女性はほぼ全員が、王都に立ち寄る商人の応対のため忙しく働いており、日中土木工事に勤しんでいる男の方がまだしも時間的余裕があるといった有様であった。


 そこで割を食うのが幼い子ども達だ。

 両親が共に仕事で不在の間、祖父母や近所の老人などが面倒を見ることとなるが、次第に子ども達は親に構われることのない現状に不満を抱き、問題行動を起こすことが増えている。

 そうして起こったのが、今回の迷子事件であった。


 迷子という言葉だけをみれば、平凡でありがちな日常の一幕と感じられるが、その過程を追えばそれはシンギフ王国の体制に起因しており、それは即ち王であるミナトの力が及ばない故の出来事であった。


 これは些か論理の飛躍が過ぎるように思われるが、少なくとも当の本人であるミナトはそう固く信じ、後悔と無力感に苛まれているのだ。


「んっ、悲鳴…………こっち」


 リオが短く呟くと、馬の脇腹を蹴り全速力で走らせる。


「リオ!?」


 ミナトも遅れまいと馬を駆ると、遠くに小さな人影が4つ見えてくる。


「あれは………ゴブリン!!やっぱりまだ生き残りがいたんだ。間に合うかっ」


 ミナト馬上で投げナイフを背嚢から取り出し、構える。

 ゴブリン達は迫りくる馬蹄に驚いたのか一瞬身体をビクリと硬直させるが、すぐに自らに危機が迫ったことを悟ったのか、本能的に人質にとった子どもの首筋に錆びた短剣を突きつける。


「くっ、リオ、止まって!!」


 ミナトとリオが同時に手綱を引き絞ると、馬は前足を高く上げ激しくいななく。

 突然現れた人間が子どもを助けるためにやって来たのだと理解したゴブリン達は、ニタリと粘度の高い笑みを浮かべ、ざらついた咆哮と身振りにより、何かを訴えかける。


「馬を降りて武器を置けと言ってる」


 ミナトはリオの言葉に頷き同意を示すと下馬し、手にした投げナイフをゴブリンにも見えるように地面に置いた。

 その様子を目にしたゴブリン達は高笑いをすると、再び何かを叫ぶ。


「とにかく今はあいつ等の言う通りにするんだ。子どもを抱えたまま逃げ切れるほど奴らの身体能力は高くない。そのうち痺れを切らして隙を見せるはずだ。その時に一気に………………って、リオ!?」


 小声で作戦を共有しようとするミナトの声が裏返る。


 ゴブリンから視線を切らさないよう慎重に振り返ったミナトが見たものは、武器を外し、服を脱ぎ始めたリオの姿だった。

面白かった、これからも読みたい、AI先生による絵が可愛いと思った方は是非、☆評価、ブックマーク、感想等をお願いいたします!!

基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。

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