意外な結末
「ザテトラーク、負けを認めるんだ、ボクはお前を殺したくない」
「戯言を!!我はベスティアの王、敗北とは即ち死!!誇りを捨ててまで生にしがみつくと思ったか!!殺せ、やれるものならなっ!!」
ザテトラークは最後の力を振り絞り、激しく身をよじる。
(そうだ、ザテトラークもボクと同じなんだ。誰しも譲れないものがある………自分の命に代えても守りたいものが。その意志を砕くためには………そうか、これならひょっとしたら何とかなるかもしれない。もうボクも限界が近い、最後の賭けだっ!!!)
ベスティアの王の首に幾重にも巻きついた金の茨が緩み、青白くなっていた顔に一気に赤みが戻る。
「ミナト、何やってんだっ!?ここまで追い詰めて意識が…………」
「んっ、大丈夫、勝った」
デボラの悲鳴とも思える叫び声に対し、リオは平然と勝利を断言する。
戦いの行方を見守る一行が目にしたもの、それは額から突き出す一本の角を左手で掴むミナトの姿だった。
「おいおいおいおい、まさか………」
「いつでも殺せるのに敢えて分からせにいくスタイル。渾身の舐めプ。これこそ王の器」
「うぅっ、なんだか気分が悪くなってきたんだけど………」
「えっ、いったい何をする気なの!?」
「角を掴んだのだ、やることは一つだろう。ベスティアの王の誇りを折り、殺さずに負けを認めさせるつもりだ」
鋭い刃が角に触れ、ミナトの右腕に力がこもる。
「ふざけるなっ!!これは命をかけた神聖なる決闘!!我を愚弄するつもりか!!」
「ザテトラーク、お前は言ったはずだ、勝った方が正しいと。なら、ボクはボクのやり方で正しさを証明してみせる!!」
次の瞬間、白刃が表皮に喰い込み、鉄よりも硬いと言われる角を少しずつ切り裂いていく。
(もしこの角がアルベラのものと同じ構造なら、神経に到達すれば耐えることの出来ない苦痛が襲うはず!!そうすれば、命を奪わず負けを認めさせることができるっ!!!)
「我が誇り、雄々しきベスティアの魂を人間如きに断ち切らせるものかぁっ!!」
ザテトラークはミナトがむき身の剣を手にしていることも忘れ、2本の後ろ脚で大地を蹴ると、背を地面に叩きつける。
しかし、ミナトはその衝撃にも耐え、一心不乱に角を切り続ける。
「くそぉ、やらせはせん、やらせはせんぞぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
ザテトラークは立ち上がり、両手でミナトの右腕を握りつぶそうとする。
しかし、その動きよりも早く剣は角を守る強固な鎧を剥がし、決して触れてはならない内部の柔らかな部分に刃を立てた。
「負けを認めろ!!!!!!!」
「我はベスティアの王、世界を手に入れる者!!!やれるものならやってみろ!!!!耐えてみせる!!!!!!」
「ならば、その心を断つ!!!!!!!!!!!」
ザクリ
刃が神経に達し、切り裂く。
「グアァァァァッァァァアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!」
咆哮が大地を揺るがし、大木から無数の葉が舞い落ちる。
地獄の底から響くような断末魔に周囲で戦いを見守るベスティアの戦士達が思わず耳を抑えた。
「お前の負けだ、ザテトラーク!!!!!!!」
ミナトは剣を天高く振り上げ、そして角を深々と切り裂いた。
刹那、ベスティアの王の巨躯が雷に打たれたようにビクンと跳ね、そして口の端から大量の涎が流れ落ちる。
時が止まる。
ミナトもザテトラークも戦いの結末を見届けようとする者達も、指先すら動かすことなく止まった時のなかで息をひそめる。
「………………勝ったの??」
レティが静寂に耐えかねた誰に言うでもなく問いかける。
すると、止まった時が再び動き出し、ザテトラークは口から叫びにも似た言葉が零れ落ちた。
それは誰も予期していなかった………恐らくザテトラーク自身すら意識することのなかった、魂の雄叫びであった。
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