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異世界ハーレムは義務です~0からはじめる建国物語~  作者: 碧い月


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反抗期

 しんと静まりかえる平原をなんともいえない気まずい空気が支配する。


「娘よ、いや同じ祖先に守られし同胞よ。その無事を祝いたいが、ここは王と族長との盟約の場。口を挟むことは許さん」


「それ、その喋り方、止めて。家じゃそんな変な口調じゃないじゃん」


「娘よ、いや我が同胞よ………」


「はい、また言った。やめてよ本当に。その『いや何々よ』ってのカッコいいと思ってるかもしれないけど、変だからね??」


「………レティ、ほら、お父さんいま族長の立場で話してるからさ。いつもと違うのは許してくれないかな。多分あの王様だって、それっぽい口調にすると思うし………」


「あーはいはい、はいはいはい、言い訳とか要らないから。で、なに??」


「なにって………えっ、どういう事かな」


「だからぁ、私が人質になったふりして潜入捜査してくるってバイムトに伝えるようお願いしたんだけどさぁ、ちゃんと話聞いた??」


「あっ、潜入調査だったんだ………」


 ミナトがポツリと呟くと、レティはハッとした表情で振り返り、ワナワナと震えだす。


「お父さんのせいでバレちゃったじゃん!!せっかく上手くいってたのに!!」


「いや、今のはレティが悪いような………」


「また言い訳!?謝ってよ!!早く!!!謝って!!!!私に!!!!!」


「………………………………ごめん、お父さんが悪かったよ」


「はぁー、もうやる気なくなった。せっかく頑張ってたのに、ぜんぶ邪魔されるんだもん!!もう知らないから!!!」


 ………


 ……………


 …………………


 沈黙。


 圧倒的な沈黙が広大な平原を覆う。


「王よ、見ての通りレティは少し反抗期で族長は困っているのだ」


 バイムトはどうしたものかと困惑するミナトに対しこっそり耳打ちをする。


「ええ、だいたい分かりました………大変ですね」


「んっ、少しの感覚がおかしい」


 バイムトは腕を組み、目の前で繰り広げられる親子喧嘩にため息をつく。


「レティは母を早くに亡くし、それ以来族長が男手ひとつで清く正しく美しい立派な跡取りとして育てたのだ。レティは慈悲深く、危険を顧みず、勇気もあり、仲間にも慕われている。少々危なっかしい所はあるが、あと何年かすれば族長として優れた資質を発揮し、我らを導いてくれるだろう。しかし、その代わりといってはなんだが、父である族長には少し当たりが強い」


「だから少しの概念がだいぶ怪しい」


「ちなみにこういった事は日常茶飯事で一族の者も見慣れているので、王が見なかった事にしてくれれば話は進むと思うぞ」


 気がつくと先ほどまで殺気立っていた戦士達は、このいたたまれない状況を早くなんとかして欲しいのか、部外者であるミナトに事態の打開を期待するようにジッと見つめている。


「えぇ………見なかった事はちょっと無理ですけど、なんとかしてみます」


「頼んだぞ、王よ」


 ミナトは意を決して一歩踏み出すと、前足でしきりに地面を掘り返すレティに声をかける。


「えっと、レティ………族長にボク達の国のことを話してくれるかな」


「この国のこと?」


「ほんの少しだけど、ボク達の国の有り様を見て感じたことを思いのまま伝えて欲しいんだ。族長とボクで話すのはそれからにしたい。ボク達がここにいると話しづらいと思うから、終わるまで城門の前で待ってるよ」


 ミナトは言い終えるとマームードに目礼し、踵を返す。


「待って、ここにいて。………族長、シンギフ王国について私の見解をお伝えします。シンギフ王国は王都を見ても分かる通り、まだ小さく、国としては我らよりも弱く、豊かであるとも言えません。武力についても、一人の魔法詠唱者を除けば未知数であり、この国と結んだとしても他の種族との争いで優位になるかは分かりません。しかし、この国には新興国らしい自由な空気があります。ナーガやエルフ、巨人や獣人、果てはスライムまでもが王と対等に会話し、国政に携わっています。これは亜人として人間に敵対視されている我らブレニムの民にとって、大きな利だと思われます。私はこの新しい王国とは敵対するのではなく、友好関係を結ぶことを提案します」


 水が流れるような淀みのない言葉がレティから発せられる。

 マームードは報告を聞きながら長い顎ひげを指の腹で撫でると、やがて何かを決意したように大きく息を吐いた。

面白かった、これからも読みたい、AI先生による絵が可愛いと思った方は是非、☆評価、ブックマーク、感想等をお願いいたします!!

基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。

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