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自害

正月ボケが酷いです………休み明けって辛いですね

「………あれ、そういう話だったっけ?」


 仲間になったというアルベラの言葉に違和感を覚えたミナトは、小声でリオに問いかける。


「んっ、だいたい、そう」


「角まで斬られちゃって、完敗ってやつね。そのせいで記憶も一部曖昧だし」


 アルベラは頭上にクエスチョンマークが浮かんでいそうな表情で、切断された角の断面をさする。


「………さっきからアルベラに妙に余裕があって変だと思ったんだけど、もしかして角を斬られた時のこと、覚えてないんじゃ」


 ミナトはリオに近づき、耳打ちする。


「死闘を繰り広げた結果、必殺技を喰らって角が斬られたっていう、少年漫画的な形に記憶を捏造してる模様」


「あっ、そんな感じなんだ………変に記憶が蘇ってフラッシュバックされても困るし、黙っとこう」


 ミナトの提案にリオは赤べこのように首を激しく上下に振る。


「もう、こそこそ何を相談してるの?わかった、ワタシを信用できないんでしょ。わかるわ、その気持ち。でも安心して、悪魔は契約を守るのよ。今日からミナトの忠実な下僕しもべ。なんでも命令してね」


 アルベラはそう言うと、ベッドから艶めかしく手を伸ばし、ミナトの足にまとわりつくように身体を預け、手の甲に口づけをする。


「ボクの命令なら何でも聞くの?…………もし死ねと言えば、それでも」


「もちろんよ、それがミナトの本当の願いなら、いつだって」


 重く押し殺すような声に、アルベラは不敵な笑みで返す。


「でも、すぐ復活することになるけど、それでも良いの?」


「復活?」


「悪魔って、異なる次元に輪郭を持たず、絶えず混ざり合い、反発し合いながら揺蕩う、大いなる魔力のような存在なの。互いの世界を繋ぐ扉は閉ざされているから、鍵を開けて手招きしてくれる誰かがいないとコッチの世界には来られないのよ。だから、この身体はあくまでこの世界用の仮宿ってわけ。存在のコアとなる部分を他者に破壊されるならともかく、自分でやる場合は本能的にコアの部分は避けちゃうから、自殺なんて人間で言うところの睡眠と変わらないわ。こっちの世界に呼ばれた契約が無くなるわけじゃないから、いつでも戻ってこれるもの」


「それなら………例えば、リオがキミを殺したとしたら、もう復活できないってこと?」


「そうなるわね」


 ミナトが躊躇いがちにリオに視線を送る。

 そして、リオは全てを察したかのように、一歩前に歩みでた。


「例え多くの人を虐殺した悪魔であっても、出来ることなら抵抗しない相手を斬りたくない。でも、多くの人を殺したキミを見逃すわけにはいかない」


 ミナトは奥歯を強く噛みしめる。


「………そう、ミナトがそう望むなら、仕方ないわね。痛いのは嫌いなの、なるべく楽に殺して頂戴」


 アルベラは目を瞑り、恭しく首を差し出す。


「リオ、知り合ってばかりでこんな事をお願いするのは、筋違いだって分かってる。でも、皆んなのために、この世界のために、キミに頼みたいんだ。アルベラを殺してほしい。報酬はボクのこれからの人生全てだ」


 沈黙。


 重く苦しい静穏が場を支配する。


 殺す者と殺される者。

 捧げる者と捧げられる者。

 選んだ者と選ぶ者。


 それぞれの想いが幾重にも絡み合い、心に絡まる糸が沈黙をより深くしていく………かに思えた。


「んっ、無理」


「ありがとう………………ふぇっ!?」


 予想外の返答にミナトが間抜けな声をあげる。


「私はミナトの夢を叶えるために来た。ミナトの本当の願い『全種族モリモリどすけべハーレム王国』を建国するために。アルベラは世界に一匹の超ウルトラレア。殺したらミナトの夢が叶わなくなる」


「リオ、今はふざけてる場合じゃ………」


「ふざけてない。ミナトの夢を叶える、それだけが私の存在理由。もしそれに背けば………多分ちょっと吐き気とかする」


「軽っ!!いや、それ位なら良くない!?」


「ひょっとしたら、どれだけ食べても常に小腹が空くペナルティとかもあるかも。辛い、絶えられない」


「い、嫌なのは分かるよ、無抵抗な相手を斬るのは。でも、もしここで見逃せば、取り返しのつかない被害が………」


 リオは説得の言葉から逃れるように、無表情で首を横に振り続けた。

面白かった、これからも読みたい、AI先生による絵が可愛いと思った方は是非、☆評価、ブックマーク、感想等をお願いいたします!!

基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。

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